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史上最強の初恋  作者: えみお


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15/34

3-5

 そうして、議場にはガウスだけが残された。


「糞っ!糞っ!あんな女モドキに、よりによって王の御前で恥をかかされることになろうとは・・・!」


 そもそも、事の発端は禿頭の議長ジェーンが貧民街の出身であったことの筈なのだが、最早ガウスにとって、そんな事はどうでもよくなっていた。

 

「そもそも気に食わなかったんだ!幾ら腕が立つからといって、冒険者が、この神聖な王城に足を踏み入れることが許可されるなど、あってはならんのだ!」


 そう言った彼は、どうにかして、彼女をここから追い出せないかと考え始めた。

 先ほどの一件からも分かるように、ガウスという男は、貧民街の住人達なら殺しても問題無しだと、あっけらかんと言ってしまうような苛烈な思考の持ち主である。

 当然、その方針は女モドキと蔑むデュランに対しても同様であり、むしろ彼女に対しては、この場だけでは無く、この世からの退場の方を、より強く望んでいた。


「どうやら、あの女はスキルで常時身体能力を飛躍的に向上させることが出来るらしい・・・。なら、呪術スキル持ちを集め、一斉に死の呪いでも掛けさせるか・・・。もしくは、隣国・・・カースドで生産されているという、『弱体化の枷』を取り寄せるか・・・」


 ガウスの妄想はいよいよ具体性を帯びだす。

 その思考は最早、自らの行いが違法であることを二の次にしたものだった。

 ・・・しかし、そういった類いのモノは、決して口にしてはならないし、ましてや、こんな場所で言うべきものでもなかった。




「へぇ。随分面白いことを考えてるんだね。ガイア卿」




「・・・っ!!!」


 突然の声だった。

 驚いたガウスは即座に振り向くと、声の正体を捉える。

 それは、金髪の青年貴族・・・シャルル=シルバ=ルルーシュその人であった。


「ル、ルルーシュ卿・・・!」


「まさか、デュランを会議から追い出すだけに飽き足らず、呪殺や密輸禁止の呪具の使用まで考えていたとは・・・まったく驚きですよ、ガイア卿」


 その時のシャルルには、会議前にデュランを口説いていた時の、陽気な面影は一切無い。 まなじり、そして口角がつり上がったその表情は、獲物を見つけたときの捕食者のモノだった。

 ガウスは、どうにかして自分の劣勢を脱するべく、抵抗を試みる。


「ルルーシュ卿、これは異な事を・・・。私がそんなことをしようとなど思うはずないではありませんか?」


 会議中とは打って変わった口調で、しらを切ろうとするガウス。

 しかし、シャルルはその程度の口上で、彼を逃がす気はさらさら無かった。


「とぼけられるおつもりなら、それでも結構。しかしガイア卿・・・私が後日、この場におられた方達に、今私が見聞きしたことをお伝えすればどうなるでしょう?仮にあなたがとぼけたとしても、多くの方は私を支持してくださる筈です。何故なら、あなたが先ほどデュランに対して剣を振り上げた様子を、その場にいる方々はご覧になっていたはず・・・。もし、あなたの剣がそのまま振り下ろされ、デュランが何らかの理由で防御や回避が出来なかった場合、彼女は今頃、骸と化していることでしょう!そう!あなたは既に彼女に対し殺意を持った場面を、ここにいた大勢の人間に見られているのです!この状況でどうやって私の発言に対抗するおつもりか・・・?是非お聞かせ願いたいものですな」


 シャルルの理路整然とした返答には、正にぐうの音も出ないガウスであった。

 かくなる上は・・・とガウスは背中の剣に手を伸ばそうとするが、その仕草を見たシャルルは言う。


「ああ、私を切り飛ばしてしまうおつもりなら、止めておいた方が賢明ですよ。私があなたと会っていることは、前もって下僕に言ってあります。もし、私が死ぬようなことがあれば、その容疑は真っ先にあなたに掛かることをお忘れ無く・・・」


 そして、その発言を聞いたガウスの手から、遂に剣が離れたのだった。

 

「・・・何が望みだ?」


 デュランが内心で酷く虚仮にしていた脳筋のガウスとて、最低限の知性はある。

 シャルルはここまで周到な用意をし、こうして私の前に姿を見せた。

 ・・・もし彼が正義の下に、私からの位の剥奪などを目的としていたのであれば、シャルルは、自らの妄言を聞いた時点でこの場を後にし、後日、今日と同様の場が設けられた際に、満を持して発表すれば良かったのだ。

 それをしなかったということは・・・即ち取引したいということ!

 そう考えたとき、ガウスにはふと、思い当たることがあった。


「もしや・・・お前があの女に懸想しているというのは事実で、それに関することか?」


「なんだ、少しは頭が回るようだな」


 最早、お互い敬語など使わぬ会話・・・。

 それは、到底、どちらも名のある家の者とは思えないものだった。


「なに、少し協力して欲しいことがあるだけだ。ソレさえ済めば、今回の一件は綺麗さっぱり忘れよう」


 シャルルの言を何処まで信用して良いものか分かりかねるガウスではあったが、一方的に弱みを握られている立場なので、信じるほか無い・・・。


「で、協力の内容は?」


「それは・・・・・・・・・」


 シャルルは自らの計画を話す。

 彼の牙は静かに・・・しかし確実に真の獲物であるデュランに迫っているのだった。 

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