約束の星空
あの日も、こんな風に星が煌めいていた。
病室の窓から見える夜空に、満月が静かに浮かんでいた。窓辺に飾られた白い花が、そよ風に揺れている。高校二年の夏、親友の美咲は白血病と診断された。
「ねぇ、覚えてる?」
美咲が弱々しい声で言った。
「小学校の時の約束」
もちろん覚えていた。忘れるわけが無い。あの日、星空の下で交わした約束を。二人で宇宙飛行士になって、一緒に星を見に行くという子供らしい夢を。あの頃の僕らは、人生の残酷さなど何も知らずに、ただ純粋に未来を信じていた。
「もう行かなくちゃ」
そう言って微笑む美咲の手を握りしめた。涙を堪えながら笑顔を作る僕に、美咲は優しく微笑み返した。その手の温もりが、まるで夢のように儚く感じられた。
「大丈夫」
そう言った美咲の言葉が、優しい嘘のように響く。そして次の朝には、美咲は永遠の眠りについた。十七年という短い人生を閉じ、美咲は星になった。
あれから何年が過ぎただろう。季節は巡り、街並みは変わり、人々の暮らしは続いていく。でも、僕の中で美咲との思い出は、少しも色褪せることなく光り続けている。
今でも夜になると、星空を見上げながら美咲に語りかける。宇宙の研究者になった僕は、望遠鏡を覗きながら、美咲との約束を果たそうとしている。直接星まで行くことは叶わなかったけれど、この方法なら、少しでも美咲の傍に近づけるような気がする。
「また会えると信じているよ」
そう呟きながら、今日も僕は星空を見上げ続ける。美咲がいる場所まで、この想いが届きますように。研究を続ける度に、美咲との距離が少しずつ縮まっていくような気がする。
たとえ目覚めることのない永遠の眠りについていても、美咲の時間は僕の中で確かに生き続けている。星空の下で交わした約束は、今も僕の心の中で輝き続けている。
どこかで美咲も、同じように僕のことを見守っていてくれているような気がする。
この広大な宇宙の中で、私たちは必ずまた出会える。そう信じて、今日も僕は歩み続ける。美咲との約束を胸に、星々が織りなす天の川を道標に。
星空はただ静かに、永遠に続く僕らの物語を照らし続けている。
[完]
私の好きな曲を元に作った小説です。