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反逆者  作者: つゆさき
第三章 〜風花中学校3年生編〜
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第二十九話 おかしな人たち

◇2032年12月18日 風花中学校校庭◇


 吉満校長の合図によって試合が開始された。もしかしたら……春先シオンの死の真相について校長が知ってるかもしれない。まぁ、後でいいや。


 真緒治郎まおじろう大海羅瞿だいかいりく、そして細井篤樹ほそいあつきは、2年生チームである“蒼淵そうえん”の幹部クラスである波留美汐はるみしおに戦力を回さないといけない。貝沼真珠かいぬままじゅには、芝ななみをぶつけないといけない。……あれ?終わった。


 もし私が“蒼淵”のリーダーである海神凪士わだつみなぎしと戦うのであれば、もう1人幹部クラスである鮫島鋭牙さめじまえいがが放置され、無双される。


 作戦を考え直そう。……今更無理だ。みんなにはこれで行くと伝えてしまっている。


 ……やるしかない。


 私はぎゅっと拳を握った。今更引き返せないし、誰かを見捨てることなんてもっとできない。たとえこの作戦が穴だらけだったとしても、シオンなら成功させる。守るべきものは守る。支えてばかりじゃいられない。


「行こう……っ!」


 掛け声とともに、“反逆者”のメンバーが一斉に動き出す。敵のリーダーがいるのは、いちばん奥。私は駆け出していた。


 そのころ、ななみが一直線に真珠へ向かう。その姿には迷いがなかった。


「はじめましてだねぇ、ごみちゃん♪ドSとか、きもいからやめたほうがいいよぉ〜?あっ、ごっめ〜ん♪すでにきもかったねぇ〜」


 ななみは挑発するように言う。真珠は目を細めて応じた。


「初対面の人に失礼じゃないのかしら?……人を貶すのが何が悪いか私にはわからないわ。だって楽しいんですもの!」


 ななみは笑っていた。嘲笑とも、余裕とも、虚勢とも取れる表情。だけど、目だけは鋭く、真珠の一挙手一投足を逃していなかった。


 真珠は一歩、ななみに近づく。


「楽しいことをして、何が悪いんですの?あなたは、誰かをいじめたことも、見下したこともないって言えるんですの?」


 その声音は静かだったが、芯に棘がある。


「あるけどぉ〜?楽しいとかぁ、思ったことなぁい〜。楽しいとか思うやつ、きっも〜い♡」


 ななみは、わざとらしく肩をすくめ、腰を落とした。


「……っ!」


 その瞬間、真珠の手が、一閃。手に仕込まれていた針が、空気を裂いた。


「ふふ、反射神経はよろしいようですね。じゃあ、もう1発…」


「は〜い残念っ!」


 ななみの脚が真珠の懐に飛び込む。改造されたヒールのような靴が、華麗に見える真珠の身体に容赦なく振り下ろされた。


 ゴッ!


 真珠は腕で防御し、後ろに跳ね飛ばされた。威力は申し分なかったはずだ。


「ふぅーん、強いですわね。意識保たないと腕、折れちゃいそうです」


「はいざまぁ♪そのまま折れちゃえ!……弱いやつに生きる価値な〜し〜♪」


 ななみは舌を出して、にたりと笑う。口ではふざけているが、動きは抜かりない。常に体重のかけ方、距離の取り方を計算しながら動いている。格闘技の基礎が叩き込まれている動きだ。


 真珠の武器は言葉と武器、そして『痛みを愉しむ快楽』。その嗜虐性に裏打ちされた残酷さは、侮れば即座に命取りになる。


「あなたさえいなければ、私はあの子を壊せたのに……」


 ぽつりと真珠が呟く。


「ん?あの子って誰のことぉ?」


「さあ……大切な人を奪われた人かしら?あれ、もう壊れてるんだっけ、私にはわかりませんね」


 その瞬間、ななみの顔が変わった。


「……野乃ちゃんのこと、言ってる?」


「ふふ、さあ、どうですかね?」


 ななみの口から、笑いが消えた。


「わたしもねぇ……野乃ちゃんのこと、大っ嫌い♡でもぉ、同時にいちばん尊敬しているの。だからぁ、他の誰かがぁ野乃ちゃんを侮辱するの、ぜ〜ったい許せないのよねっ♪」


 声の口調は変わっていない。しかし、トーンは低くなった。ななみの怒りは、声色を変えるほど強かった。その脚が、地面を蹴る。


 シュッ!バンッ!


 高速で繰り出された蹴りを、真珠がギリギリで避ける。しかし、風圧で顔の横にかすり傷ができた。


「へ、へぇ……ほ本気になったんですね?た、たたのしみだわ。あなたの泣き顔、綺麗でしょうね」


「自分じゃ〜見えないかもだけどぉ〜泣くのは、あ・な・た♡」


 真珠はもう一度、腕から光を見せる。ななみは臆することなく突っ込む。


「……野乃ちゃんの技、もらっちゃうねぇ♪」


「……何を!?」


瞬撃蹴インパクトキックっ♡」


 ななみから放たれた右蹴りは、野乃の劣化版だ。それなのに威力は本人の努力次第で変わってしまう。恐ろしいことだ。


 懐を守るように置いた腕も意味なく蹴られ、吹っ飛ばされる。吐血して顔が見えない。ななみは顔を確認した。……泣いてない。


「……ざ〜ねん、泣いてないんだぁ?つまんないのぉ」


 ななみは軽く真珠を蹴って、野乃のところへ向かうように走り出した。







 篤樹、羅瞿、治郎は美汐を囲むように立つ。3人の男たちは囲い込んだと思っているがそれは大きな間違いだ。


 だって上がガラ空きなのだから……。


「えっ!?えええっ!?囲まれてる!?これ、囲まれているパターン!?もしかしてあたし、終わった!?終末!?しの秒読みですか!?」


「その通りだぜ!!」


「羅瞿、油断は禁物です」


「篤樹くんも羅瞿くん油断しているよ。だってほら」


 美汐は、めちゃくちゃな勢いで叫びながらも、ぴょーんと空中に飛び上がる。単純な跳躍力でだ。


「でも残念でしたぁ〜っ!囲まれても上が空いてるってワケよ!!ハァーーーッハッハッハ!あたし、頭いい!!!物理学、勝った!!!」


 空中で身体を回転させながら、地面へ落下。


 ズドォンッ!!


「うおぉぉ!?今の着地、ちょっと膝に来たんだけど!?え、痛い!?歳!?いやいやまだまだ中学生〜〜〜〜〜っ!!」


 冷静な篤樹がぽつりと呟く。


「……油断のしようもありません。全部想定外ですから」


「ここは集中しよう。オレは弱っている脚を叩く。羅瞿くんは頭、篤樹くんは腹をお願い」


「指図するんじゃない!!俺は初めからこの作戦を考えていたぜ!!頭を潰してやるぞ!!」


「羅瞿、落ち着くんです。わざわざ野乃さんが3人、この方に配置するのは理由があるはずです。それを見つけるまで戦うべきではないでしょう?」


 その言葉を無視するかのように羅瞿は大声を上げながら突っ込んで行った。美汐のせいで知能指数が下がっているのかもしれない。


「とりゃああああっ!!!お前の頭、ぶち抜いてやるからなぁぁぁぁっ!!」


「え!?頭!?頭のどこ!?頭って頭!?マジで!?やばいやばいやばい!!!」


 美汐は意味不明な叫び声とともに、腕をパタパタと振り回しながら後ろに回転して避けた。まるで風に舞うビニール袋のように、予測不能な動き。


「こっちはぁ〜!?マジでこっち来る!?あっち行ってぇぇぇえっっ!!!」


 回転している時に現れたのは、今度は篤樹。


「流しません」


「ヒィイッ!?逃げる権利くらいあってもよくなぁ〜い!?人権!人権が消えたあああぁっ!!!!」


 まともに戦えば、普通に勝てるだろう。けれど、美汐はまともではないから勝てない。まともから1番遠い場所にいるだろう。


「どっこいしょおおおおおおぉぉ!!!」


 拳は風を切る。そして次の瞬間。


孤破壊クラウズッ!!!」


 腰につけているポケットから、ハンマーを取り出してブーメランの要領で投げる。


「あっっっぶなぁぁぁぁいぃぃぃ!!!!殺す気!?殺す気だよね!?殺さないでぇぇぇぇぇ!!!!!」


 頭めがけて投げたハンマーは、軽く避けられて地面に落ちる。


「リターンッ!!!」


 転がりながらハンマーを拾い、篤樹の足首へ向かって投げる。


 ゴンッ!


「……っぐ!」


 さすがの篤樹もたまらず、一歩下がる。


「足首を……狙ってくるとは……!」


「バーカバーカっ!!頭良くて眼鏡キャラとかズルいズルいぃ!!バランスぴったりぃぃぃいぃ!!」


「落ち着いてください……僕たちは3人います。囲い込めば必ず勝てます!!!」


「……って言ってるそばから来ないでよぉぉぉぉぉぉ!!?!?!」


 羅瞿の拳が再び振るわれた。だが、そのタイミングを狙っていたのは治郎だった。


「今だっ!!2人とも!時間を稼げ!


「どわあああああああ!?なんで急にリーダーみたいな口調になるのぉぉぉっ!?あんた脇役感スゴイのにぃぃぃぃぃ!!!」


「脇役じゃない!名脇役だ!」


 治郎が、美汐の背後へと回り込んでいた。目には見えないほどの早業で、地面から石を拾う。そして、30発連続で美汐の背中を狙う。


「せめてダメージを!!」


 そのとき。


「……人の後ろに立つなって習わなかったァ!?わああああああああ!!!」


 美汐は、なんとその場でくるりと逆立ちをした。しかし、それは悪手だ。だって、まだ石が投げられているのだから。


 噂では治郎は投石のプロらしい。治郎が投げた石は全て、美汐の胸、腹に直撃する。絶対に痛いはずなのに逆立ちをやめない。しかも、反撃に出た。腕を振り上げて真上に伸ばし、そのまま回転蹴り。


 バチィィィ!!


「ぶぇっ……!?」


 治郎の顔面にかかとがめり込む。バランスを崩し、その場で倒れ込む。


「いたいいたいいたいよぉぉぉぉ!!!!けどけど、やった!?やった!?ねぇ!?今のって勝ち!?勝ちだよね!?1人脱落!?1人ダウン!?で、で、で、でも内蔵潰れちゃったかもぉぉぉぉぉ;;!!!!」


 治郎は頭を強くあったようで、ピクリともしない。鼻血を地面に垂らしながら惨めに倒れている。


「……治郎さんが、倒されました……!?羅瞿、ここは楽破壊イージーディストラクションを2人で……!」


「うおおああおお!!!もう知らねえぇぇぇ!!!篤樹、ごめん!俺がぶちかましてやるぜぇぇぇぇ!!!」


 興奮状態の羅瞿が全力で美汐に突っ込む。正面から突撃だが、それは美汐にとっていちばん得意な相手だ。


「バカが来たあああああ!!!ぶつかるぅぅぅぅぅ!!!!ならばあああああああ!!」


 信じられないほどの跳躍力で飛んだ。再び、空へ。


「跳躍は自由を得るためにあるんだよっ!!!ハッハッハッハ!!!」


 空中でぐるぐると回りながら、真下にいる羅瞿へ両足キック。頭を狙うと見せかけて、タイミングをずらして胸元を叩き落とす!!


 ガッ!!


「ぐっ……がはっ……!」


 たまらず、羅瞿が後方に吹っ飛ぶ。立っていることがやっとの状態だ。ぎりぎりの状態で踏ん張っている。


「負けたんだから倒れてよぉぉぉ!!!パンーチぃぃぃ!!」


 美汐が放ったパンチは、羅瞿の顔面に直撃した。そして、羅瞿も鼻血を流しながら惨めに倒れる。


「……くっ、みんなのために、勝たなくては……」


 さっきの脚へのダメージで立つのもやっとの篤樹は、負けた2人を見渡した。どちらも惨めに負けている。でも、篤樹は負けたくないという一つの目標ができた。


「最後を……渡し……ます!」


 冷静に構え、腰を低く、確実な一撃を狙う。だが、美汐の様子がおかしい。さっきまでピンピンだったのに。


「え、待って待って、いたいいたい!?何で!?死ぬの!?あたし、しぬ!?口から血が出てるよぉぉぉぉ!!!しにたくないよぉぉぉぉ!!!うわああああああああ!!!!!!!」


 篤樹は即座に理解した。治郎が投げた石が、美汐の内蔵を傷つけたことを。可哀想に思えたが、倒すチャンスは今しかない。


 篤樹は砂を左手で掴んだ。そして、右手に力を入れる。足に力は入れらない。入れたらしばらくは歩けなくなることは経験上わかっていた。けど、やらないといけない。


砂破壊デザートレイクッッッッ!!!」


 美汐の顔の周りに砂を投げて、目を見えなくする。そして、渾身の一撃を喰らわす!威力は櫻田圭吾が開発した重撃拳ジャイアントブローの何倍も強い。


 美汐は静かに倒れた。さっきまでうるささはどこに行ったと思うほど。そして、篤樹も体力の限界が来て倒れた。


 私はまだ走っている。“蒼淵”のリーダーかわ全く見つからないからだ。仲間がどんな状況であろうと私がリーダーなんだ。責任を持つ!














 




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