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反逆者  作者: つゆさき
第三章 〜風花中学校3年生編〜
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第二十五話 仲間のためなら

◇2032年4月15日 静心堂◇


 春先シオンが死んだと聞いてから3日が経った。いまだにシオンの死体は見ることは叶っていない。それほどやばい状況だと言うのはみんながわかってる。


     △▼△▼△


 シオンが死んでから深雪野乃みゆきののは確実におかしくなった。俺が見る限り、精神が崩壊してやがる。


 一年半……。長いのか、短いのかは俺にはわかんない。でも一年半は確実に濃いものだった。それだけはこれからも言える。


 今日は、シオンの葬式だ。細井篤樹ほそいあつきは、参列することを拒んだ。まだ、精神が治ってないらしい。篤樹を解放するため、大海羅瞿だいかいりくも今日は来れないらしい。


 つまり、反逆者のメンバーで参列しているのは、俺と野乃と蒼井爽馬あおいそうまの3人だけ。元々、少人数だったけど半分なのか……悲しいな。


 爽馬は珍しく正装をしている。口調はいつも通りだが、顔はやつれている。爽馬を刑務所から解放すると提案したのは、シオンだった。多分、恩人として尊敬していたのだろう。


 かく言う俺、櫻田圭吾もシオンにはかなり救われた。あのまま1人のチームだったら、ここまで来ることはなかっただろう。シオンに負けて俺が仲間に加わって、そしてともに強くなれた。


 1番心配なのは、野乃だ。シオンが撃たれてからずっと様子がおかしい。今日も……正気がなく、ずっとぼーっとしている。一応、葬式場までは親が送ってくれたらしいが受付で立ち続けている。


 目の下のくまや頬が痩せこけている。まともに生活ができていないことが一目でわかる。……心配だ。


「風花中で葬式に来るのって僕たちだけなんですねぇ〜。もっとシオンくんは友達、多いと思っていたのになぁ〜」


「元々、学校に来る生徒自体が少ないだろ。小学校みたいに勉強するわけじゃないんだから。……選択制だから、サボっているんじゃないか?」


「それもそうですよねぇ〜。小学校であんなに難しい問題といたのに、それ以上難しくなるなんてきついですよぉ〜」


「確かにな。……算数の微積分とか俺、解けなかったし。あんなん、いつになっても解ける気しないわ」


「………」


 俺と爽馬が受付近くの椅子に座り、楽しく談笑してるが野乃は無言だ。……喋る気力もないんだろう。少しは今日の葬式で気持ちを、リセットしてもらいたいものだが……。


「あっ……そろそろ始まるみたいですねぇ〜。シオンくんって家族いないらしいですからぁ〜。僕たち3人だけの参列じゃないんですかぁ〜?」


「……だったら悲しいな。俺たちだけで弔ってやるか」


 係員の人が、シオンが置いてる部屋の扉を開ける。シオンの死体とやっと対面できる。そう思いながら部屋に足を踏み入れる。


「……なんでお前がここにいるんだよ!」


 俺は、思わず声をあげてしまった。そこには、ある1人の男が席に座っていた。……勝野智哉かつのともや。風花中の卒業生で俺を完膚なきまでボコした男。


「……葬式ぐらい来ていいだろ。少しは……関わりがあったのだから」


「圭吾さん〜?いくらかつての敵がいるからってぇ〜葬式で叫んじゃダメですよぉ〜。僕も脚、震えてますけどねぇ〜」


 シオンの葬式の参列者は、4人になった。俺はシオンの顔を見ようと前へ近づいた。爽馬は、野乃の腕を引っ張り、共に前へ進む。


 棺桶の小窓が閉まっていた。これでは、シオンを最後に見ることができない。野乃にも……見せてやれない。


「……ロックがかかってるから見れない。俺も……試した」


「なんだよそれ!ここは葬式じゃないのか!?最後くらい……合わせてくれよ」


 その後、お坊さんがきてお経を始めてくれた。人数が少ないから、スムーズに進んだ。誰もなく人はいなかった。前、泣いたいた野乃も目は全く動いていない。


 生前のシオンの希望で、火葬場には誰も行かなかった。「焼かれるところなんて見られたくないだろ」とのことらしい。それを係員から聞いた俺は、衝撃を受けた。


 葬式場には、4人だけが残れた。……誰もはなさい。空虚の空間が残り続ける。その時……智哉が口を開いた。


「……春先シオンの件、残念だったな。俺がもっと……止めていればこんなことにはならなかったのに」


「……はぁ!?おい!!!どういうことだよ!『止めていれば』って!?お前は、シオンが死ぬってわかっていながら止めるだけだったのかよ!!」


「…本当にすまない。すべて話したつもりだ。……しかし、これを望んだのは彼の意思だ」


「意味……わかんないこと言わないでくださいよぉ!あなたのせいで悲しむ人が多く出てるんですよぉ」


「……3月12日。俺はシオンと話した。……止めるために。だが無理だった」


「聞かせてくれよ。その話について」


◆2032年3月12日 CAFE IS GOOD◆


 どこにでもあるようなただのカフェ。智哉は、ただ人が少ないからというだけで選んだ。


 内装は、小洒落ていてどんな人でも落ち着けそうというのが感想に出るだろう。先に智哉が座り、その隣にシオンが座る。


 智哉は、ブラックコーヒーを頼む。それに続いてシオンもカフェオレとショートケーキを頼んだ。コーヒーの香りは今までに嗅いだことのない……完璧なものだった。


「どうして、俺を呼んだんだ。……大体の察しはつくけどな。死ぬんだろ……俺」


 最初に話を切り出しのは、シオンだった。その声は妙に落ち着いていた。智哉は肩を振るわせた。自分が今から切り出そうとしたことを、的確に見抜かれたからだ。


「……その通りだ。本題に入る前に少し……昔話をさせてくれないか?」


 シオンはケーキ食べる手を止めて、コクッと頷いた。


「ちょうど、一年前。とある人が死んだんだ。……そいつの名前は、坂本湊晴さかもとそうせいと言って、仲間思い優しい奴だった」


「そして、”アストレイド”のリーダーでもあった。アストレイドというのは、お前たちの”反逆者”と同じ…自分たちで作った組織だ」


「メンバーは……坂本湊晴、勝野智哉、木村神凱きむらしんがい朧永良おぼろげながら甘夏蜜柑あまなつみかん、アンジュ・アンダーソン、蒙古大胆もうこたいたんの7人。……全員聞いたことがあるだろう。お前たちが戦った組織のリーダーたちだ」


「ならどうしてアストレイドがないって思うだろ?………解散されられたんだ。校長、いやもっと上の名で」


「これは3年生になった時の決まり事だ。個人の実力を測るため、必要なことらしい。本来なら……七つの組織、七つの組織ができるはずだったんだ。……お前ならわかるだろ?お前たちが倒しのは六つの組織だけだ……」


「だったら一つは、どこに行ったんだ?と思うだろう。察していると思うが坂本湊晴の組織だけがない。…………死んだんだ。政府によって」


「……政府がリーダーを殺すことでみんなのやる気を出させようとしたらしい。だから新一年生の演説と銘打って、坂本湊晴を殺す機会を作ったんだ」


「そして、殺された。みんな拍子抜けだったよ。……即死だったから。その日からみんなはおかしくなった。性格も変わったやつもいれば、見た目も変わったやつもいる。俺も……変わった」


「お前は、最初に『死ぬんだろ……俺』と言っただろ。その通りだ。三年生になった際、リーダーだったやつは殺される」


「はぇ〜」


「だからお前には生きてほしい。お前は強い。これからも、政府を倒す糸口になるはずだ。お前を助けたいからここに呼んだ」


 シオンは3杯目のカフェオレを注文した後、悩みに悩みまくった末、尋ねることにした。


「それって、俺助かる方法あるの?……別に難しいならいいけど」


「あるにはある。それは……部下を代わりにリーダーにして身代わりを作ることだ。そうすればお前は絶対にしない。俺も坂本湊晴が死ぬくらいなら自分が死ぬべきだと後悔している」


「ん〜ならいっかな、助からなくて。仲間が死ぬくらいなら自分が死んだほうがよくない?」


「何言ってんだ。お前は生きるべき人間なんだよ。……俺とは違う。素直に話を受け入れてくよ……」


「あ〜めんどくさいなぁ。仲間のためなら自分を犠牲にする……それがリーダーってもんだろ?その坂本ってやつも、死ねて良かったって思ってるはずだ。自分の犠牲だけで済むならそれが一番だ」


 智哉は拍子抜けした。シオンのことを甘く見ていたのだろう。自分が助かるために行動する、それが人間だと思っていたからだ。


「……そこまでいうなら俺は止めない。でも、仲間との思い出、ちゃんと作ってくれ」


「何言ってんの?俺は死ぬ気はないが……最後まで色々模索してみるよ。今日は教えてくれてありがとう。また誘ってくれよ」


 シオンは席から立ち上がり、机の上に一万円札を置いて店を後にした。机に突っ伏した智哉の気持ちは、誰にも……わからない。


     ◇◆◇◆◇


 智哉が話し終えたとき、場の空気は止まっていた。葬式場の静寂の中、まるで空気が重く沈殿しているようだった。


 そのとき、唐突に、野乃が膝をついた。


「……っは……あ、あっ、ああ……っ!」


 肩を激しく上下させ、息が詰まるような音が漏れる。……過呼吸。見てすぐにわかった。酸素を求めるように口を開け、瞳孔はうつろに震えていた。


「野乃!?大丈夫か!?」


 俺は慌てて駆け寄るが、彼女はそれを振り払うように首を振った。


「……ちがう……ちがうちがうちがうちがうっ……!」


 自分の頭を何度も叩きながら、野乃は震える声でうめいた。


「なんで……なんでなの……!?なんでシオンが、殺されなきゃいけなかったの……!?ねぇ……答えてよっ!?」


 その視線は、智哉をまっすぐ突き刺す。


「あなた……知ってたんでしょ!?シオンが殺されるって……それを止める方法も、あったんでしょう!?なのに、なんで……なんで助けてくれなかったのよ!?」


「……深雪野乃……」


「黙ってて!!」


 智哉が言葉を発そうとした瞬間、野乃の叫びがそれをかき消した。涙が頬を伝い、嗚咽混じりに怒りと絶望を吐き出していく。


「”彼の意思だった”って?“仕方がなかった”って?ふざけないでよ……!あなたが説得してれば、シオンはまだ、生きてたかもしれないのに……!」


 拳を握りしめて振るわせる。その爪は手のひらに食い込み、血が滲みそうだった。


「リーダーだから死んだ?それがルール?そんなの、そんなの……勝手すぎる!!」


「深雪野乃……俺は、後悔している。過ちを繰り返ーー」


「後悔している!?それで終わり!?野乃たちは、シオンを失ったまま、前に進めって言うの!?笑って、戦って、忘れろって言うの!?」


「……」


「あなたがどうとか知らない!!ずっと前から知ってたくせに……自分は生きて、野乃たちだけが、何も知らされずに、ただ、大切な人を失って……どうしろって言うのよッ!!」


 その瞬間、野乃は膝から崩れ落ちた。地面に手をつき、涙を床にぽたぽたと落としながら、それでも視線は智哉から逸さなかった。


「ねぇ、教えて……あなたは、どうして生きてるの……!?どうして、お前じゃなくてシオンが死ななきゃいけなかったのよ……!!」


 その言葉には、怒りだけではない。置き去りにされた苦しみ、もう戻らない現実への抵抗、そして自分がリーダーとして選ばれたことへの罪悪感。……全てが滲んでいた。


「……すまない」


「すまない、じゃ済まないよ……!野乃は……野乃はね……シオンの副リーダーだったの……!やっとなれたのに……!何も守れなかった副リーダーなの……!」


「……深雪野乃……」


「野乃が代わりになればよかった……っ、野乃がっ……!あのとき、無理矢理にでも止めていれば……撃たれるの、野乃だったら、よかったのに……!」


 全身を震わせながら、野乃は地面に崩れ落ちた。爽馬が慌てて駆け寄る。


「……野乃さん、落ち着いてくださいよぉ……!すぐ、深呼吸してくださいねぇ……!」


 苦しそうに胸を押さえながら、野乃はなんとか呼吸を整えようとした。しかし、その顔は涙と絶望に濡れたまま、戻らない。


「……お前せいだ……っ!お前のせいだお前のせいだ!!……殺す!!絶対にッ!!野乃の手で殺してやるからなぁあぁぁぁッ!!」


 近くにあった花を支える棒を持ち、智哉に向ける。俺は急いで野乃を取り押さえた。野乃はものすごく抵抗したが涙を流しながら疲れ、眠った。


 気がつくと智哉はいなくなっていた。もう会う機会もないだろう。その方がどちらのためでもある。


 一つ言えることは、もう野乃の前には現れないでほしい。……どっちも壊れて欲しくないから。


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