第十七話 キラキラ
◇2031年11月27日 風花中学校校庭◇
チーム名の情報しかなく、そのまま時は過ぎた。今日が“機械者”との戦いだというのに。しかも、爽馬は風邪をひいて休み。
戦況としては確実に”反逆者”の方が不利!相手の情報がわからないのなら戦略を立てることも不可能。私は詰みましたという顔をしながら体操座りをして敵が来るのを待った。
校舎の方から地面が揺れ始めた。まるで、地震が迫ってきているような感じがした。そしてよくわからない影が見え、プシューと空気の音がした。
どう見たってロボットだ。今まで見たことない高性能なロボット。全長は4m、人が太っているよう見た目をしていて銀と金の配色だ。私は恐怖が勝ったが男子メンバーは違ったらしい。
「なんだあれは!すげぇ〜かっこいい」
圭吾が目をキラキラさせながらロボットを見つめていると羅瞿も同じく目をキラキラさせていた。
「ヤッッッバ!あれは男のロマンじゃないか!!!乗っている人と分かり合えそうだぜ」
シオンと篤樹は多少は興味を持っていたが馬鹿2人とは違って叫ぶことはなかった。
ロボットは見た感じ一体。そしてロボットの周りには誰もいない。つまり、対戦相手はあの中にいる1人だけ。思ったよりも楽勝なのかもしれない。
校長の声が流れるAIスピーカーで試合が開始された。いつもより声が不自然だった。きっと、このロボットの磁場がここら辺の電波をおかしくしているのだろう。
ロボットは動かない。変な機械音を出しながら校庭を佇んでいるだけだ。最初に動いたのは圭吾だった。
圭吾はロボットに近づいて重擊拳を喰らわすが全く効いていない。
圭吾は右手を押押さえながらこちらに戻ってきた。私には医療の知識はないが打撲よりも酷いことになっていることは目に見えてわかる。
「あのロボット硬いですね。ここは時間をかけずに一撃で終わらす方が勝率は高いです」
篤樹が見事に分析してくれた。しかし、シオンの次に威力があるはずの圭吾がこんなになるなんて、シオンをしか壊せないのではなかろうか?
「シオン……ここは任せてもいいかな」
「待ってくれよ、野乃姉貴!!機械を壊すことは俺たちの見せ所よぉ!そうだよなぁ篤樹ィ!」
「そうですね。僕が持っているこのハンマーを使えば可能です。このハンマーの素材は軍用にも使われてる超硬合金です」
「理論上、関節部に命中すればダメージを与えられます。ただ……その前に、動きが止まってくれればの話ですが」
「その作戦で行こう。壊すということなら中の操縦士が危ないはずだ。壊したら俺が助ける。そして、降参させて終わりだ」
圭吾には悪いが羅瞿、篤樹、シオンの3人で計画がまとまってしまったようだ。私は相手が反撃してきたように2人を掴んで逃げれる位置に待機をする。
爽馬がいれば、もしかしたら銃で装甲を打ち抜けたかもしれない……。もしかしたらの話を考えている暇があるなら目の前のことに集中しなきゃ。
「羅瞿、いつもの調子で行きますよ。いつもよりも難しいですが楽勝ですよね?」
「当たり前だぁ!かつて、破壊神と言われた俺たちの強さをみせてやろぜ!!」
篤樹と羅瞿は片手にハンマーを持ってロボットの方へ近づく。私と比べたら遅いが普通の人よりは絶対早い。
ロボットとの距離が10mになった時、ロボットが動き出してしまった。太い腕を背中に回し、よくわからない棒を取る。
ただの棒に見えるがかなり重いらしい。地面に軽く触れただけで地面が割れ、えぐれた。羅瞿と篤樹はさすがに離れた。
「……わ、わたしの友達……に、近づいて、こないで」
まるで機械のような声がロボットから聞こえていた。やっぱり誰かがこのロボットを操縦している。つまり、弱点は必ずあるはずだ!
「……野乃があの棒を抑えるから、その隙に壊して」
私自身もあの棒を抑えられるとは思っていない。けど、誰かがやらないと勝つことはできない。
「やめといた方がいい。あれを喰らえば圭吾みたいになってしまう。あいつみたいに危険な目に遭って欲しくないんだ」
「……はい♡」
やっぱりシオンの言葉に逆らえない。せっかく私が活躍できる機会だというのに。こんなただの心配性のことなんてどうも思っていないはずなのに……。
「羅瞿と篤樹はさっきの通りにやってくれ。野乃と圭吾で気を引いてもらう。それでいいか?」
「怪我人に雑な扱いをしないでくれよ……。また、千歳屋のところに何て行きたくないんだがなぁ」
シオンの言葉に圭吾は嫌々引き受けた。私ももちろんうなづいた。
シオンの合図のもと、私と圭吾はロボットの左右に回る。ある程度の距離を保ちながら近づくふりをする。
ロボットなのに左右に穴を穴を開けていないのか、私と圭吾の方を首を回しながら見てくる。相手の気を引くことは成功した。
そのままの勢いで篤樹と羅瞿は近づく。今度は棒を振る時間もなく、2人は近距離まで近づけた。
「「楽破壊ッッ」」
ロボットの装甲は割れて、中から人が出てきた。シオンはすかさず、操縦士を抱えてロボット付近に降ろす。
「あっ、あ……わたしの、わたしの……」
操縦士は泣きながら壊れたロボットを見つめていた。見た目は、小柄な身体が目立つ女の子だった。私たちよりも年上なはずなのに小学生に見える。髪色はアイスブルーに近い色で目が見ないほどの長髪だった。
彼女は膝をついて、項垂れていた。シオンは流石に可哀想だと思い彼女に声をかけた。
「……さっきは、ごめんね。悪かったとは思っているよ」
「……わ、わたしの優雅な翼、返してよ……唯一の友達、なのに……」
グレイスウィングとはロボットの名前だろうか?唯一の友達と言っているし、私も可哀想に思えてきた。
シオンは彼女の地面に触れて汚れている手を両手で掴んでシオンの胸元まで運んだ。
「……なら、俺が友達になってやるよ」
その言葉に、彼女はピクリと反応した。顔をゆっくりとあげる。
「……な、ん……で……?」
「仲間がいるというのに良いことだ。それをお前にも知って欲しいだけだ……」
「……友達……なれるの……わたしでも……?」
「選択肢はないな。なれ」
「わ、わたし……アンジュ・アンダーソンって、言います……」
名前を聞いたシオンは、アンジュと目線を合わせるようにしゃがむ。そして、顔と顔が近づく程度にシオンは顔を近づけた。
「……綺麗だ。ここまで瞳がキラキラしているのを見たことがない。まるで氷のように見える」
アンジュの目にかかっている前髪をかきあげたシオンはそう呟いた。私は、「……は?」と思った。確実に嫉妬だ。
アンジュの頬は赤くなり、いつの前にか涙が止まっていた。そして、シオンを見つめる顔はまるで恋する乙女のようだった。
△▼△▼△
この人は何を言っているんだろうか……?わたしと友達になろうと思う人なんて今までいなかった。そして、褒めてくれる人も……。
わたしの胸が、音を立てて高鳴る。
ロボットにも、誰にも言われたことなかった……わたしなんかに「友達になってやる」って……
その瞬間、わたしの中にあった「孤独」という長年積もった氷が、ぱき…ぱき…と音を立てて割れていく。
この男が手を差し伸べてきた。わたしは顔に残っている涙を拭いて、その手を取った。
手が暖かい。
これが……好きって気持ち……?
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シオンとアンジュが手を繋いでいる。私は許させないと思った。2人とも……。




