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3-33(ユウト).

 僕は、僕の従魔となった特殊個体のホーンウルフをクーシーと名付けた。

 クーシーと一緒に狩りをするのもだいぶ慣れてきた。連携もスムーズになり今日の狩りも順調だった。


 僕はどうやら使役魔法が使えるらしい。使役魔法は属性魔法ではない。無属性の魔法で特殊魔法とか固有魔法などと呼ばれ生まれつき使える魔法だ。

 

「固有魔法が使えるかどうかって、どうやって調べるんだろう?」


 隣を歩くルルは、可愛らしく首を傾げて「私が知っている限りでは調べる方法はないと思います」と答えてくれた。


「それじゃあ、どうやって使えるって分かるの?」

「固有魔法は自然に使えるようになるって聞きますね」


 クラネス王女が僕やクラスメイトたちに使った鑑定魔法、あれも固有魔法だ。あるとき自分が鑑定を使えることに気がつく、そんな感じなんだろうか。王国は僕やクラスメイトたちが固有魔法を使えるかどうかを調べることはしなかった。方法がないのだから当然ともいえる。いや、全員が使えた魔力探知、あれも固有魔法か・・・。まあ、深く考えてもしかたない。


「ユウ様が使役魔法を使えるのは間違いないんですから、いいじゃないですか」

「まあね」


 使役魔法は主に魔族が得意としている。でも人族でも使える者はいる。使役魔法とは別に調教というのもあって調教師なんて職業もある。調教の場合は使役とは違って、魔物に人や荷物を運ぶことを教え込む程度のことしかできない。クーシーと同じ狼型の魔物であるジャイアントウルフはよく騎獣として使われている。それもあって、僕たちがクーシーを連れていても街に入ることに問題はなかった。それにクーシーの首には冒険者ギルドでもらった従魔を示す魔道具『従魔の証』が嵌められている。


 僕とルルは隣を歩くクーシーを見る。


「がうー」


 僕と目があったクーシーが唸り声を上げる。甘えているのだが、その声は低く知らない人が聞いたらちょっと怖いかもしれない。 

 ホーンウルフは本来は下級上位くらいの魔物だけど、クーシーは特殊個体なので、冒険者ギルドで『従魔の証』を受け取る際には中級と判定された。

 ちなみにジャイアントウルフよりも大きいクーシーは僕たち二人を乗せることもできる。ただ、よく騎獣として使われている馬の魔物スレイプニルなんかと比べると小さいし、あまり無理させる必要もないと思って、いつも二人と一匹で歩いている。


 僕はクーシーの頭を撫でる。


「ぐるぅー」


 クーシーは大きくて可愛い。 


「でもユウ様は水属性魔法が中級まで使えますし使役魔法まで使えるなんてすごいです」

「いやー、そうかな」


 ルルはこうやって僕をよく褒めてくれる。そしてまんざらでもない僕が笑顔を浮かべる。うーん、調子に乗りすぎだろうか。まあ、いいか。


「そうですよ。使役魔法を使えるだけでもすごいのに。クーシーは特殊個体で中級ですよ。そんな魔物を使役している人なんてユウ様くらいですよ」


 ルルは僕を持ち上げるのが上手い。だが、実際には帝都ガディスには、なんと上級上位のワイバーンを使役している魔術師がいるらしい。

 それはともかく、使役魔法が使える人が稀なことも事実だ。僕もクーシーを使役してから、使役魔法について少し調べてみたけど、人が使役できる魔物は帝都の魔術師など特殊な例を除いて下級までという場合がほとんどだ。

 魔族には超強力な魔物を使役したり、ものすごい数の魔物を使役したりする者もいるみたいだ。そもそも魔物を使役するのが得意っていうのは魔族の特徴の一つだと認識されている。僕がどの程度の魔物まで、またどのくらいの数使役できるのかは分からない。こないだ使役魔法が使えるって知ったばかりだし、そもそも使い方すら分からない。


 エーデルシュタッドの北門の前まで辿り着いた僕たち、二人と一匹はすでに顔なじみになっている門衛に挨拶して街の中に入った。クーシーを連れている僕たちは結構知られている。あまり知られるとルヴェリウス王国にバレないか心配だが、逆に僕だとは思われない気もする。 


 冒険者ギルドに入ると相変わらずクーシーをチラチラ見ている人が多い。クーシーは『従魔の証』をしているので冒険者ギルドに連れて入るのは問題ないが、珍しいことには変わりない。


 買い取り窓口でクーシーが運んでくれた魔物の毛皮を買い取ってくれるように頼む。


「ブラッディーベアの毛皮ですね」


 買い取り係の確認に僕は頷いて幾つかの爪と牙も見せる。


 複数の視線を感じる。ブラッディーベアは中級の魔物であり中級の魔物を狩れるのは少なくともC級以上のパーティーだ。僕とルルもこないだC級に昇級した。年齢からすれば相当優秀だ。僕とルルは優秀だ。大事なことなので2度言った。クーシーを仲間にしたし案外早くB級にも成れる気がする。調子に乗りすぎだろうか?


 ルヴェリウス王国を出てエニマ王国でエラス大迷宮に挑んだ。そこでルルと出会い、今度は帝国に来た。エニマ王国に近い帝国北東の街から数えて、エーデルシュタッドは帝国に入って僕たちが訪れた3つ目の街だ。その間に僕たちの冒険者ランクはC級まで上がり、クーシーを従魔にすることもできた。


 僕は日本ではぼっちだったのに、今では一人と一匹の仲間がいる。パーティーとしてはもう一人二人増えてもいいだろう。アニメやラノベでは勇者、魔法使い、僧侶、剣士とかの組み合わせをよく見る。


 僕は勇者ではないんだけど・・・。


 僕は本物の勇者であるコウキのことを思い出した。コウキは真のリーダーシップを持った勇者にふさわしい男だ。今頃は冒険者でいえばC級どころかA級とか、いやコウキならすでにS級くらいの実力を身に着けていてもおかしくない。あれから、もう1年半は経っている。まあ、僕は僕のペースで頑張ろう。他人と比べる必要はない。


 とりあえず僕たちのパーティーとしては、今のバランスからするとやはり盾役が欲しい。ルルもクーシーも前衛タイプだけど、ちらかというと素早い動きが特徴だ。もちろんクーシーは力もあるけど盾を持つことはできない。


 僕はサヤさんのことを思い出す。


 小柄なのに誰よりも力持ちで可愛らしかったサヤさん。今はどうしているだろうか。うん。やっぱり、仲間にするのなから可愛い女の子のほうがいい。それに僕も完全な後衛じゃないから、カナさんみたいな強力な魔導士もいればもっといい。あれ、そうなったら僕っていらないな・・・。


 それにしても、この僕が・・・新しい仲間が欲しいだなんて・・・。


 僕は日本にいるときと性格が変わったのだろうか。なんか不思議で新鮮だ。ルルやクーシー、それにみんなのおかげなのか。僕はクラスメイトたちの顔を思い出す。


「ユウ様どうかされましたか?」


 今日の魔物討伐の報酬を大事そうに受け取ったルルが、それを僕に差し出しながら訊いてきた。


「そろそろ新しい仲間、特に盾役が欲しいかな、なんて思ってさ」

「・・・」

「どうしたの?」

「ユウ様は私とクーシーでは不満なのですか?」


 ルルは可愛らしく頬を膨らませた。


「ぜんぜん、そんなことないよ」

「では、どうして?」

「いや、せっかく異世界にきたからにはハーレ・・・。いやなんでもない。ルルの安全のためにも盾役とかいたらいいかなって思っただけ」

「そうですか」

「ユウ様の考えはときどき分からないことがあります。この服だって」


 ルルが着ているのはいわゆるメイド服だ。いや、メイド服に似たデザインの冒険者用の装備だ。ルルは僕の仲間になった経緯もあり僕のことを様付けで呼んでくれる。最初はユウジロウ様と呼んでいたが、今はユウ様になっている。

 僕の本名がユウトでありルヴェリウス王国には知られたくない事情があると説明すると「本名がユウト様ならユウ様で問題ありませんね」とルルは僕のことをユウ様と呼び始めた。もともとユウジロウ様と呼んでいたときはよく噛んで、ユウチロウ様とかユウビロウ様とか言っていたのでルルとしても渡りに船だったのだろう。

 そこで様付けで呼んでくれるのならこれしかないと、僕がエニマ王国で作らせたのがこのメイド服に似せた防具だ。もともとルルが着ていた冒険者装備は安物だった。なので防具を作ろうと思っていたのでそれをメイド服に似せたってわけだ。

 冒険者の服装は基本自由だ。突飛な恰好をした冒険者は珍しくない。ルルの格好だって目立ちすぎるってほどではない。ただ王国からもらった支度金のかなりの部分を使ってしまった。それでも僕は満足だ。それに順調にランクを上げている僕たちはお金には困っていない。


「その服にはロマンがあるんだ。それにルルにとても似合っている」


 僕に似合っていると言われて、スカートの裾を握って恥ずかしがるルル。僕の判断が正しかったことが証明された瞬間だ。


 みんな、僕は頑張っているよ!

 次から、いよいよ第4章です。

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