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3-9(ギルドマスターと会う).

 翌朝、冒険者ギルドに行くと、すぐナンネルさんに声をかけられた。


「ギルドマスターが、ハルさんたちに会いたいと言っています。今、時間は大丈夫でしょうか?」

「大丈夫です」


 ナンネルさんは、僕たちを2階へ案内し一番奥の部屋をノックした。


「マスター、ハルさんたちをお連れしました」

「あー、入ってくれ」


 案内されたのは、実用的でありながら決してが安物ではないと感じさせる調度品が配置された気持ちのいい部屋だった。部屋に入ると、机に向かって事務仕事をしていたらしいギルドマスターは、椅子をクルっと回してこっちを向くと、「どうぞ」と言ってソファーみたいものに座るように促して、自分も僕たちの向かいに座った。


「ハルくんとクレアさんだったかな。私は、ここトドスの冒険者ギルドのギルドマスターをしているグラッドです」


 ギルドマスターだというグラッドさんは、飄々とした感じの40代くらいの一見すると人の好さそうなおじさんだ。穏やかな表情で僕たちを見ているが、実際には値踏しているのだろう。


「ふーん、思った以上に若いね。でも強そうだ」


 グラッドさんは横に控えているナンネルさんを見る。 


「えっと、ハルくんたちが持ってきた素材だけど、ネンネル、いくらになったんだっけ?」

「ヨルムンガルドの牙2本と鱗5枚、それに魔石、全部で金貨415枚、大銀貨8枚です」


 4158万円相当、凄い。ブラックハウンドから一気に値段が上がった。さすがに伝説級の魔物の素材だ。


「あまり高くなくて、申し訳ないね。死体を丸々持って来てくれれば、この10倍、いや20倍になったかもしれないね。今回は牙と鱗それに魔石で、鱗も5枚だけだしね。冒険者ギルドとしては、これで精いっぱいなんだよ。個別に貴族とかと交渉すればもっと高く売れるかもしれないけどね」

「そうなんですか?」

「このクラスの魔物の素材なら、素材として優れているのはもちろんだけど、希少価値もあるからね。自分の屋敷に飾って自慢したい貴族だっているだろう。オークションにでもかければこの20倍になっても驚かないよ」


 20倍! 8億か・・・。貴重な美術品かなんかだと思えばおかしくないのだろうか。どの世界にも金はあるとこにはあるものだ。


「なるほど。希少価値ってことですか」

「伝説級の魔物の素材を持っていれば相当自慢できるだろうからね。金に糸目をつけない貴族とかもいると思うよ」


「クレアどうしようか?」


 魔物を倒したのは二人でだけど、クレアの貢献のほうが大きい。


「ハル様におまかせします」

「それじゃあ、この値段で売るね」


 オークションなんてめんどくさいし、まだまだ素材はある。


「はい」

「というわけで、買い取りをお願いします。その値段なら僕たちにとっては十分すぎるくらいです」

「そっか、じゃあこの値段で買い取らせてもらっていいんだね」

「はい。お願いします」

「いやー、ギルドとしては助かるよ。でもヨルムンガルドってほんとにいるんだねー。できれば死体を見たかったよ」

「死体を持ち出すような余裕はなかったので」


 だいたいあれをどうやって運ぶんだ。それこそ失われた文明の遺物であるオリジナルのアイテムボックスが必要だろう。


「まあ、それはそうだろうね。イデラ大樹海の相当奥まで迷い込んだのかな? 生きて帰れて良かったよね」

「はい。ほんとに幸運でした」


 たぶん、グラッドさんが思っているより遥かに奥からだと思うけど。


「で、ほんとのとこ、どうなの?」

「と、言いますと?」

「いやね。君たちからは、確かに見かけより強そうな気配を感じるんだけど、それにしても、ヨルムンガルドがいるような場所まで行って、そこから生きて帰れるとは思えなくてね。なんか隠していることがあるのかなーと思って聞いてみたんだけど」


 うーん。やっぱこの人、見かけより曲者みたいだ。行きは魔法陣で転移して、転移した場所では魔王に助けられ、僕は異世界人でクレアは帝国のスパイで、それでなんとかなりましたとか・・・絶対言えない。


「魔物の討伐中に迷って思ったより奥に行ってしまっただけですよ」

「そうですか。もし伝説級の魔物が現れたら、普通はSS級やS級を含む相当数の冒険者を集めて対応することになるでしょう。それをハルくんたち二人でっていうのは・・・。まあ、いいでしょう。そういうことにしときますか。冒険者に個人的なこと聞くのはあまり褒められたことではないですからね」


 これで、終わりなのかな。簡単には納得してもらえないだろうと思っていた僕は拍子抜けした。こっちから質問してもいいかと聞くと、グラッドさんは頷いたので、僕はユイのことを尋ねてみた。


「グラッドさん。もう聞かれてるかもしれませんけど、僕は、僕と同じ年の魔術師の少女を探しているんです。僕と同じ黒い髪をしています。魔術師として腕は相当なのもので・・・それにとても美人なので目立つと思います。名前はユイといいます。でも、もしかしたら違う名前を名乗っているかもしれません。たぶん冒険者をしていると思うんです。ここ1年以内くらいの間に、そんな少女の噂を聞いたことはないでしょうか?」

「トドスではありませんねー。トドスで冒険者をしている人に思い当たる人はいません」


 即答か。

 とすると。


「トドスから近いギネリア王国の、えっとラワドでしたっけ、ではどうでしょうか?」


 ラワドは隣のギネリア王国の街だ。エリルはユイの気配がキュロス王国とギネリア王国の国境近くへ向かったと言っていた。トドスの次に可能性が高いのはギネリア王国のラワドだ。


「うーん、さすがに国が違いますから、ちょっと分かりません。でもラワドにそんな美人の少女魔術師が現れたのなら噂くらい聞いてもいいような気もしますが、申し訳ありませんが聞いたことはないですね」


 ダメかー。


「実は3週間後に、ここトドスでギルドマスターの会議があるのでそこで聞いてみてあげましょうか? ギルドマスターの会議といってもキュロス王国南部のギルドマスター5人だけの集まりなんですけどね。持ち回りで情報交換のために開いていて今回はトドスに集まるんですよ。他国のことは分からないかもしれませんが、冒険者ギルドは国を跨ぐ組織ですし冒険者はあちこちの街を移動する人も多いですから、何か情報があるかもしれませんよ」


 グラッドさんはあからさまに落ち込んでいる僕を見て提案してくれた。


 僕たちがキュロス王国中を探し回るよりギルドマスターの集まりで聞いてもらうほうがいい。ユイは冒険者になっている可能性が極めて高い。他に生活の糧を稼ぐ手段はないと思う。キュロス王国南部ならユイが転移した可能性のある地域だ。ギネリア王国へ行くにしてもキュロス王国のギルドマスターたちからの情報を聞いてからにしたほうがいい。


「是非お願いします。僕にできるお礼なら何でもします。ユイを探すのは僕にとって何より大事なことなんです」

「いやいや、会議で聞くだけなら大したことではないですから。ただ、冒険者本人が秘密にしていることは、お伝えすることができません」

「それで結構です」


 この世界の冒険者ギルドは個人情報についての意識が意外と高い。


「さて、この件とは関係なく若くて伝説の魔物を討伐できるような凄腕の謎の冒険者二人に頼みたいことが、あるといえばあるんですが」


 もともと僕たちに頼みたいことがあったのだろうか。食いつき気味にグラッドさんが言った。どうやらグラッドさんの思った方向に話が進んでいるようだ。やっぱりこの人は食わせ者だ。

 実験的に書いてみた短編「乙女ゲームの断罪の場に転生した俺は悪役令嬢に一目ぼれしたので、シナリオをぶち壊してみました!」ですが思った以上に読まれていてびっくりしています。なんと日間ランキングにも引っかかっているようです。「ありふれたクラス転移」の惨状?! と比較すると少し複雑ですが、「ありふれたクラス転移」のPVも増えているので短編を書いた効果はあったようです。とはいえ、短編のほうがあっという間に「ありふれたクラス転移」の数倍のポイントを獲得しく様は、さすがに寂しいので、もっと面白くなるように頑張って投稿しますので、もし少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけたら、ブックマークへの追加と下記の「☆☆☆☆☆」から評価してもらえるとうれしいです。

 また、忌憚のないご意見、感想などをお待ちしています、読者の反応が一番の励みです。

 よろしくお願いします。

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