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ありふれたクラス転移  作者: たまふひ
第1章(クラス転移)
7/251

1-7.

説明的な回なので、少しでも読みやすくとちょっとだけ改稿しました。


 僕たちが召喚されてからおよそ1ヵ月が経過した。 

 

 この世界では武器を使って戦う場合、使われるのは主に剣だ。槍とか弓もあるがあまり使われない。

 まず弓だが、遠距離攻撃に関しては弓より属性魔法の方が強力だ。槍に関してはリーチが長く特に集団戦では有利で、戦国時代などでも戦場での主な武器は槍だったはずだが、身体能力強化のあるこの世界ではリーチより素早さや取り回しの良さの方が重要視されており剣を使う人が多い。


 僕たち異世界人は平均的な現地の人より属性魔法や身体能力強化に優れている。いや、かなり優れている。そんな僕たちの能力にも個人差がある。そして日々の訓練の結果、僕たち個人個人のおおよその戦闘スタイルが固まってきた。

 

 まず、勇者であるコウキには創世の神イリスの加護がある。この加護の効果で身体能力強化はみんなの中で一番だ。さらに勇者専用の光属性の魔法が使える。勇者は魔導書がなくても最初から光属性の魔法を覚えている。はっきり言ってチートだ。

 コウキは主に剣で戦っているが、専用の光魔法もあるので剣と魔法どっちの面でもスキがない。

 コウキには先代の勇者が使っていた光の聖剣が貸与された。光の聖剣は、片手でも両手でも使えるタイプの剣だ。これがまたアニメに出てくるまさに聖剣といった外見の剣だ。コウキは最初にその剣を見たとき、なぜかあまり喜んでなかった。

 むしろマツリさんが「すごく似合ってる」と少し頬を染めて感想を述べていた。


 正直、この世界でも主人公らしいコウキを羨ましくないと言ったら嘘になる。

 

 ともに賢者であるユイちゃんとマツリさんは、二人とも火、水、風、土の4属性に加えて回復系の聖属性魔法も使える。当然、主に魔法で戦う遠距離タイプだ。二人とも魔法防御力は高いが物理的な身体能力強化は低めだ。ちなみに賢者は勇者と同じで異世界人にしか現れない。

 ここでちょっと問題が起こった。この国には賢者が現れたときに貸与される光の聖杖というものが存在する。これは勇者の光の聖剣と対になるものなのだが一つしかない。賢者とは勇者がいる場合にセットのように一人だけ現れるもので、これまで二人いたことはないからだ。

 結局、「私はその杖でなくてもいいです」とユイちゃんが光の聖杖を辞退したためマツリさんが持つことになった。ユイちゃんと違ってマツリさんはコウキの持つ光の聖剣と対になる光の聖杖をどうしても欲しかったみたいでとても喜んでいた。

 魔法は別に杖が無くても使える。ただ、杖には魔石がセットされていて魔法を強化する能力があるし、いざというときには打撃系の武器としても使える。光の聖杖を辞退したユイちゃんにもかなり貴重な杖が貸与された。まあ、ユイちゃんも賢者なんだから当然だ。


 さて、勇者でも賢者でもなかった残りの6人だが、主に剣で戦う近接タイプがヤスヒコ、アカネちゃん、サヤさんの3人で、魔法タイプがカナさん、そして中途半端なのが僕とユウトだ。ユウトというのは中島くんの名前だけど、中島くんをユウトと呼ぶのは未だに違和感がある。

 

 近接タイプであるヤスヒコは敏捷性に優れている。片手剣に加えて短剣を武器に使っている。僕と同じくらいの背格好のコウキに対してヤスヒコは少し背が高くほっそりしているんだけど、そんなヤスヒコの動きはとても素早く柔軟性がある。魔法に関しては風属性の魔法が使えるがタイプとしては剣士だ。

 これは後から分かったことなんだけど、剣士と風属性魔法の組み合わせは黄金の組み合わせと呼ばれている。風属性魔法を利用して身体能力強化を補助し、より高くジャンプしたりできるからだ。動きの素早いヤスヒコにはぴったりだ。

 

 素早い動きで剣を練習しているヤスヒコがたびたび「ひょっとして俺っていけてるの」とか話しかけてくるのには閉口した。ヤスヒコには言わないけど実際かなり格好いいと思う。

 

 アカネちゃんも近接タイプだが、身体能力強化をしたときの力の上がり方が特に大きいため、大きな両手剣を使うことになった。魔法は火属性の魔法が使えるがタイプとしては近接の剣士だ。一見、スレンダーで華奢なアカネちゃんが、ポニーテールの髪を揺らして大きな剣を持って戦うのはこれまたなかなか格好いい。


「ヤスヒコがスピートタイプで私がパワータイプなのはなんか納得できない」と本人はちょっと不満そうだ。


 アカネちゃんは火属性魔法を中級まで覚えてはいるが、ほとんど使っていない。魔法は発動までに一定の時間がかかるので剣と同時に使うのは難しいからだ。


 ヤスヒコの風属性魔法のように身体能力強化を補助する程度に留めて使うのなら別だが・・・。


 結局、アカネちゃんは、主に両手剣で戦うことになりそうだ。


 アカネちゃんが使っているような両手剣はこの世界では大剣と呼ばれている。ヤスヒコが使っている片手剣はもちろんコウキに貸与された片手でも両手でも使える光の聖剣よりもさらに大きい。

 僕は、剣のことには詳しくないので、元の世界でこれと同じような剣があったのかどうかは分からない。そもそもこの世界には魔力による身体能力強化があるので剣の大きさや重さも元の世界とは比較できない。 


 如月沙耶、サヤさんも近接タイプだ。サヤさんは耐久力、防御力、力に優れている。要するにゲームでいうところの盾の役割に向いているらしい。使える属性魔法も土属性だ。どの属性の魔法にもシールドタイプと呼ばれる防御系の中級魔法があるのだが中でも土属性の防御魔法は防御力が高めなのだそうだ。

 盾役というのは一番前で敵と対峙する。サヤさんは小柄な女の子なので心配だ。でも本人は「私が皆を守るね」などと言って案外乗り気だ。


 浅黄加奈、カナさんは典型的な魔法使いタイプだ。カナさんは適正のある火と水の属性魔法を最上級まで覚えていて、単純な殲滅力ならみんなの中でNO.1だ。将来は大魔導士と呼ばれる存在になるだろうと言われている。

 強力な攻撃魔法の使い手はゲームなどでも勇者のパーティーには必ず一人はいる存在だ。ただし大魔導士という呼名は、勇者や賢者とは違い優れた魔導士に対する呼名であり、この世界の人にも大魔導士と呼ばれる人はいる。問題は浅黄さんの性格だ。浅黄さんはみんなの中で一番大人しく控えめなタイプだ。


「私がものすごい魔法を使えるなんてあり得ない。怖いよ」とか言って怯えている。


 強力な属性魔法に加えてカナさんは魔法探知能力にも優れている。この世界では人も含めてすべての生き物や物質が魔力を持っているのでこれを探知できると索敵に役立つ。ある程度の魔法探知能力は全員持っているのだか、中でもカナさんが優れている。魔法探知能力は無属性の特殊魔法とされている。僕たちは全員が程度の差はあれ使えるようだ。


 最後に僕とユウトは似たタイプだ。


 僕とユウトの身体能力強化は、ユイちゃんたち魔法タイプよりは上だが、コウキやヤスヒコ、そしてアカネちゃんやサヤさんのような近接タイプに比べるとやや弱い。一方で使える属性魔法は一種類だけだ。僕が火属性でユウトは水属性だ。二人とも中級までしか使えないのも同じだ。

 要するに、二人ともちょっと中途半端なのだ。僕は迷った末、主には剣で戦うことを選択した。使うのはこの世界では最も一般的な大きさの剣で光の聖剣と同じく片手でも両手でも使えるタイプだ。元の世界では大きめの部類なのかもしれないが、身体能力強化のあるこの世界ではこのくらいの大きさの剣がもっとも一般的だ。

 ユイちゃんが完璧な魔法タイプなので、やっぱり前衛でユイちゃんを守りたいっていう気持ちがあり剣を持つことに決めた。だが、それだけでは、やはりみんなには劣るだろうから、魔法とうまく組み合わせることを目標にしている。


 せめて使える魔法がヤスヒコのように黄金の組み合わせと呼ばれる風属性魔法だったら良かったのだが・・・。


 一方ユウトは主に水属性魔法を使うことにしたらしい。でも中級までだと剣も練習しないとみんなについていけない気がする。相変わらずユウトの考えていることは分からない。


 こうしてある程度、自分の目指す戦闘の方向が固まってきた僕たちは、今日も言われるままに訓練をしている。そして、みんなそのことにあまり疑問を持たなくなってきている。





★★★




「勇者たちの様子はどうだ?」

「はい。今のところ従順で扱いに困ることはほとんどありません」


 王の前に立つ二人の男のうち背の高い方が答えた


「そうか」王は男の答えに満足そうに頷いた。

「それで」

「はい。今のところ健康面でも問題ありません」

「まだ1ヶ月ですので油断はできません」


 ここでもう一人の背が低く太った方の男が口を挟む。

 前のときのようにならなければいいのだがと王は考える。


「能力面ではどうだ」

「書面での報告の通りです。多少のバラつきはありますが全体的に優秀です。もちろんまだ相当期間訓練する必要はあります。ですが素質面ではかなりのものです」


 とにかく帝国が力を付けてきている今、勇者たちには早くこの国のための戦力になってほしいものだ。そうすれば王の権力はますますゆるぎ無いものになるだろう。


「クラネスの様子はどうだ」

「はい。勇者たちとずいぶん親しくなっている様子です」

「それはいい」


 クラネスは第三王妃の子で政略結婚くらいしか使い道がない。クラネスは王女の中でもっとも容姿が優れている。その上、固有魔法である鑑定魔法に加えて聖属性魔法も使える。結婚相手には困らないはずだが、それが勇者になったとしても文句はない。そうならなかったとしても、王としてはクラネスが勇者たちと親しくなるのは歓迎だ。


「今回の勇者召喚は今のところ大成功といっていい結果です。ですので」

「分かっている」


 予算のことだと王はすぐに察した。こいつは魔導技術馬鹿といっていい。だが役に立つことは確かだ。


「今回の結果は、お前の研究の成果だ。予算についてはそれに報いたものになる。今後も王国のために励め」

「はい」


 太った方の男は恭しく頭を下げるがあまり様にはなっていない。


「今後も定期的に勇者たちの様子を報告してくれ。それとこのことは」

「分かっています」


 二人の男は声をそろえて返事をした。

 勇者召喚のそのものはこの世界の者なら誰でも知っている。しかしその裏側を知っている者は少ない。


「なら、いい」


 今のところ順調だ。順調すぎるぐらいだ。だが、これから何事もなく勇者たちが育っていき王国に貢献してくれるかどうか、それほど楽観視しているわけではない。王は、ものごとが常に思ったように行くわけではないことを知っている。その程度の経験は積んでいる。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 もし、ブックマークがまだでしたらブックマークをしていただいた上、物語を追っていただけるとうれしいです。

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