1-6.
書き進めていくうちに最初の頃の文章が気になってきたので改稿してみました。
少しは良くなったでしょうか?
召還されてから3日目、僕たち専用の建物に隣接している訓練場で、魔法や剣術の訓練が始まった。この世界の知識を得るための座学にも引き続き一定の時間は取られているが、大半の時間は実践的な訓練に費やされることになった。
訓練を始めてから、僕たちは、お互いを下の名前で呼び合うようにすることに決めた。この世界でたった9人の仲間なんだからとの御神くん、いやコウキの提案にみんな異存がなかったからだ。そこで僕は初めて中島くんの名前が優斗だと知った。
というわけで、コウキは全員を下の名前で呼び捨てにしてる。僕としては、コウキにユイちゃんをユイと呼び捨てにされるのはあんまりうれしくない。
僕はといえば、女の子を呼び捨てにするのは慣れなくて、ちゃんとかさんとかをつけている。他のクラスメイトもその辺は人によってバラバラだ。
さて、肝心の訓練なのだが、最初に説明された通り、この世界での戦闘スタイルは大きく二つに分かれる。一つは身体能力を強化して主に剣などの武器で戦う方法であり、もう一つは属性魔法を主体に戦う方法だ。
そう、剣と魔法の世界だ!
なんだかんだで、剣と魔法と聞くとワクワクしてしまう。そんな僕を見たユイちゃんに「ハル、ちょっとうれしそうだね。やっぱりハルも男の子ってことかー」ってからかわれてしまった。
訓練で剣術を教えてくれるのは最初に紹介された通り王国騎士団副団長のギルバートさんだ。魔術を教えてくれるのは、こちらも最初に紹介された宮廷騎士団の第三部隊の隊長であるセイシェルさんだ。第三部隊は魔導士の部隊で魔導士隊とも呼ばれている。セイシェルさんは隊長というわりには若く最初は20代前半くらいかと思ったのだが聞いてみるともうすぐ30才になるらしい。属性魔法を得意とする人は、魔法使い、魔術師、魔導士などと呼ばれるが特に違いは無い。ルヴェリウス王国の騎士団での正式な呼び方は魔導士とのことだ。
それからクラネス王女も引き続き訓練を手伝ってくれたり、訓練の合間に雑談したりと何かと気にかけてくれている。
三人以外にも、王国騎士団や宮廷騎士団の剣士や魔導士の人たちが訓練を手伝ってくれている。なぜかイケメンや美人ばかりだ。この世界の人たちはみんな容姿が優れているのだろうか?
僕としては、ときどきユイちゃんからの視線が怖いことを除けば、美人から教えてもらうのは大歓迎だ。
僕たちが最初に訓練を始めたのは剣と魔法のうち剣の方だった。剣と魔法に分ければ、騎士や冒険者の8割以上が剣タイプだそうだ。
さて、剣術を訓練する前に、まずはそのための身体能力の強化が必要だ。身体能力強化は無属性の魔法だ。
ちなみに、この世界では意識して身体能力強化の魔法を使っていなくても日本にいたときより明らかに体力が上がっている。すべてのものに含まれているという魔素やら魔力やらのおかげなのだろう。魔族や魔物がいてとても危険なこの世界で生きていくために必要な能力なのかもしれない。
「なんかちょっと力持ちになったよね」
「うん。持久力なんかも上がってると思う」
なんて会話を訓練前にユイちゃんとした覚えがある。ただし、魔族や魔物のとの戦闘となるとこの力を意識して使いこなす必要がある。結論から言うと、身体能力強化を意識して使うことは僕たちにはそれほど難しいことではなかった。
最初にギルバートさんから、よくラノベなどにあるように「体の中の魔力を意識するんだ」なんて指導を受けたんだけど、それは精神を集中するような感じで、あっさりとできてしまった。ユイちゃんや他のクラスメイトたちも同じですぐにできるようになった。
使えるようになってみると、強化される能力には個人差があることがすぐに判ってきた。力に優れる者、俊敏さに優れる者、耐久力に優れるものなどだ。さらに属性魔法に優れる者ほど身体能力強化の面では劣る傾向にある。
そして次がいよいよ属性魔法・・・僕が魔法といえばイメージするのがこれだ・・・の訓練だった。
まずは、なんといっても魔法を覚える必要がある。覚えないことには訓練も何も始まらない。どの属性に適正があるかはクラネス王女の鑑定で予め分かっている。僕は火属性のみだ。
「ハルくん、これに魔力を通してみてください。ただし、そのままではなく火属性の魔力をです」
セイシェルさんから渡されたのは分厚い辞書のような本だ。いや、本のように見えるがこれは魔導書という魔道具だと説明を受けた。
「火属性の魔力。それはどうやって?」
「魔力をそれぞれの属性に変えるのはイメージです。あまり具体的な説明ができず申し訳ないのですが、ハルくんに火属性の適正があるのは分かっていますからできるはずです」
魔力を通すというのは初日から部屋にある魔道具などの使い方として教わっており自然にできる。だが火属性の魔力というのはどうすればよいのだろう。とにかく言われるままに頭の中で炎をイメージする。そして魔導書に魔力を流す。しかし、最初は何も起こらなかった。
すぐにできた身体能力強化と違って最初の魔法を覚えたのは、訓練を初めて7日目のことだった。魔導書を抱えていろんな火や炎をイメージして魔力を流し込んでいると、突然頭の中に何かが流れ込んできた。
「セ、セイシェルさん」
「覚えたようですね」
僕は魔法を覚えたのか?
「魔導書を開いてみてください」
言われるままに魔導書を開く。そこには複雑な魔法陣が描かれていた。そしてページを捲ると絵が描かれている。どうやら人が手を前に伸ばしそこから炎の塊のようなものをは発射している様を描いているものらしい。
「その魔法陣と魔法を使っている絵をよくみて覚えてください」
魔法を使っている様子を描いた絵はともかく魔法陣は複雑でとても覚えられるようなものではない。
「それでは魔導書を置いて魔導書に描かれていた魔法陣を思い浮かべてください」
セイシェルさんに言われるままにさっき見た魔法陣を思い浮かべる。
「ああー」
するとどうだろう。あの複雑な魔法陣が頭の中に鮮明に思い浮かんできた。
「頭の中に魔法陣に火属性の魔力を流すのです」
すべてイメージの世界だ。頭の中の魔法陣に火属性の魔力を流し込む。暫く続けると魔法陣が薄く発光し始めた。どうやら魔法が発動可能な状態になったんだと直感的に分かった。
「さっきの絵を参考にして炎弾を使ってください。あの的に向かって」
僕は魔法訓練所の備え付けられている練習用の的に魔導書に描かれていた絵を真似して手を伸ばし「炎弾!」と叫んだ。
伸ばした右手の数センチ先に小さな炎を塊が現れ的めがけて飛んでいった。そして的の左端になんとか命中して消えた。
「で、できた!」
僕は初めての属性魔法を興奮していた。
「ハルくん、そんなに大声で魔法名を叫ばなくても魔法は使えますよ。でも初めての火属性魔法の成功おめでとうございます」
「ありがとうございます」
他のクラスメイトたちも同じような感じで属性魔法を覚えていった。
この世界で属性魔法や特殊魔法が使える人は100人に一人程度らしい。また、使えてもほとんどは、生活魔法と呼ばれる火をつけたり少量の水を出現させたりという魔法が使える程度で、実際に戦闘に使えるほど属性魔法に適性がある人になると1000人に一人くらいだとか。
だとすると、やっぱり僕たち異世界人の魔法適性は高い。
(2025.2.21追記)
短編が人気になったり。レビューをいただいたりで、本作のPVが一時的に増えることはあるのですが、それがブックマークや評価になかなかつながらず、結局PVも元に戻るという繰り返しになっています。
原因はもちろん作者の力量不足なのですが、特に本作の最初の方の話で、少し説明的すぎたりして、せっかく第1話を読んでくれた読者を掴み切れていないのではと思い、1話から10話辺りを見直してくどいとか、説明的すぎると思われた部分を少しだけ削ったりしました。ただ、世界観とか設定の描写を少なくし過ぎると自分の書きたいものと違ったり本作らしくなくなるのではといろいろ迷います。
今後も本作がより良くなるように頑張りますので、是非最新話まで物語を追ってみて下さい。