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2-28(タイラ村その2).

 連載の息抜きに短編「善人の星」を昨日投稿しました。

 SFなのですがちょっと気取って文芸ものっぽく仕上げたつもりなのですが・・・。

 「善人の星」には文芸部のハルが文化祭のために書いた短編という裏設定があります。

 とっても短い話なので良かったら読んでみて下さいね。

 すぐにユイを探しにキュロス王国に向かいたかったが、僕の怪我の状態がそれを許さなかった。続けざまに上級回復薬を使っていたことで回復魔法や回復薬が効き難くなっているのも影響している。

 回復魔法や回復薬というものは万能ではない。連続して使うと効果が現れるのに時間がかかるようになる。一定の時間を置くことが望ましいのだ。


 タイラ村に来て3日が経ち、ようやく歩き回れるようになった僕は、タイラ村の様子を見て回ることにした。クレアのほうは僕より先に動けるようになっている。

 案内してくれるのはサカグチさんだ。サカグチさんはなんと村長だという。サカグチさんは日本人の血が濃くこの村の中でもかなりの強者らしい。この村の立地からして強いものがリーダーになるのは当然だろう。


「どうだ、良い村だろう」

「はい」


 外に出てみると、タイラ村の建物は石造りが多く村というよりは町だ。三方を小規模ながら城壁で囲まれている。残りの一面は見上げるように高く険しい崖になっている。崖には洞窟のような横穴がいくつか掘られており非常時の避難場所や倉庫などの施設になっている。

 サカグチさんによれば、魔物の素材を売ってキュロス王国などから様々な物資や魔道具を仕入れいているらしい。中級魔物の素材が豊富なこの村はかなり裕福なようだ。 


 ただ、この城壁と崖だけで魔物から村を守れるとは思えない。ワイバーンのような空から来る魔物もいる。それでも1000年以上この村はイデラ大樹海の中で存続しているという。おそらくまだ秘密がある。それは失われた文明にも関係しているはずだ。


「ハル様、この場所はエリル様の拠点のようなものかもしれませんね」

「うん」


 なんらかの、おそらくはお馴染みの失われた文明の遺物の効果により魔物が近づいてこないとか、そんな感じではないだろうか。転移魔法陣のこともある。この村は失われた文明と深い関係があると思う。 


 狭いせいもあり以外と人口密度が高く活気がある。歩いている人を見ると確かに黒髪の割合が高い気がする。しかし、それでも3割程度だ。あとは・・・。 


「あいつはドワーフの血を、あっちは獣人の血を引いている」


 僕の視線に気がついたのかサカグチさんが説明してくれた。

 サカグチさんによると、ヨルグルンド大陸の東の国では、海を隔てて東にあるバイラル大陸と交易のある国も多い。バイラル大陸にはドワーフやエルフ、それに獣人の血を引いている者が多く住んでいる。そのためヨルグルンド大陸南東部の国であるキュロス王国でもバイラル大陸から来た獣人などの血を引いた人を偶に見かけることがあるそうだ。ただしエルフの血を引く者にはサカグチさんも会ったことはないそうだ。


「この村は長い歴史の中で御使様以外の者も受け入れてきた。かって、積極的にドワーフや獣人を受け入れてきた時代もあった」

「そうなんですね」


 案外、そのころの日本人がドワーフや獣人を好きだったのが、その理由ではないだろうか。


「おかげでいいこともある。この村では鍛冶など魔物素材の加工が得意な者が多い。魔物の素材で作った武器や防具はこの村の大きな収入源なんだ」

「やはりドワーフの血の引く人は鍛冶が得意なんですか」

「よく知っているな。その通りだ。それに御使様の中には職人に向いてる特殊魔法を持っていた者がいたらしく、今でも一定の割合でそう言った特殊魔法を持って生まれてくる者もいる」


 なるほど。もしかしたらこの世界に存在する特殊魔法の一部は異世界人がもたらしたものかもしれない。クラネス王女が持っていた鑑定魔法などもラノベやアニメでお馴染みの魔法だ。

 そうか! 考えてみれば、ルヴェリウス王国は唯一異世界召喚魔法を使える国なんだから、その王族に古の勇者たちの血が混じっていてもおかしくない。


「そうだ、お礼にこれを」


 僕はアイテムボックスから火龍の鱗を取り出した。僕が持っている素材の中では最も価値が高いものだ。


「あ、クレア、勝手なことをして良かったかな?」

「ハル様、前から言っているように素材はすべてハル様のものです」

「でも、倒したのは・・・」

「私はハル様の・・・」

「いや、それは」


 慌ててクレアの言葉を遮る。


「なんだ、これは」

「火龍の鱗です」


 サカグチさんは暫く固まっていた。


「まさか、お前たち火龍を倒したのか」

「まあ、いろいろありまして」


 僕は言葉を濁す。エリルのことは話せない。


「やっぱりお前たち住人にならないか。歓迎するぞ」

「いや、それは」

「火龍を倒す者なら村長の座を譲ってもいいのだがな」

「すみません」

「そうか、だがそれは受け取れない。そんなもの簡単に処分できん。中級魔物の素材でさえ売るときは、俺たちの素性がバレばいように注意しているんだ」

「そうですか。じゃあヒュドラの鱗と牙は」

「ヒュドラだって! いや、それもいらん」サカグチさんは呆れたように言った。


 僕たちとサカグチさんの会話を聞いていたのか、周りからも「やはり御使様とはそれほどの力を持っているのか」、「やはり言い伝えの通りだ」などの声が聞こえてきた。サカグチさんのお爺さん以来の御使様だということで、僕たちはそうでなくても注目を集めている。

 中には僕とクレアに跪いて祈る人さえいて、これには恥ずかしいを通り越して困惑した。普通でない力を持っているこの村の人たちにとっても、イデラ大樹海の深層から現れた僕たちは特別であり、イデラ大樹海の深層とはそれほどの場所なのだ。


 その後、サカグチさんと押し問答した末、僕はキングオーガの角など上級魔物の素材をいくつか押し付けることに成功した。ただ、逆にブッラクハウンドの素材を渡された。


「いや、これじゃあ、お礼の意味が」

「これはほとんどがお前たちが倒したものだ。特殊個体を討伐できて俺たちにも利はあった。それに全部じゃない。半分だ」

「でも命の価値はそれ以上ですよ」

「いや、その礼はさっき受け取った。とにかくブッラクハウンドの素材は持っていけ。中級魔物の素材を持っていないとキュロス王国で処分するのに困るぞ。いきなり火龍やヒュドラの素材を出したりするなよ」

「サイクロプスの角とかもダメですかね」

「まだそんなのものも持っているのか。お前たちどれだけ大樹海の深部にいたんだ。とにかく伝説級の素材なんて出したら素性を詮索されるのは間違いない。それはお前たちの望むとこじゃないんだろう?」


 神話級や伝説級の素材は処分には気を使わないといけないみたいだ。まあ、それはそうか。普通は書物の中でしか見たことがないような魔物ばかりなんだから


「そ、そうだ。サカグチさんお願いがあります。この村の人たちは魔物の素材の加工が得意なんですよね。さっきの火龍の鱗で大剣を作ってもらえませんか。クレア用の」

「ハル様、ダメです。そんな貴重なものを私のために」 

「いや、クレアの剣技はすごいのに剣は僕のほうが良いものを使っている。そのため魔物に十分なダメージを与えられないことがあった。これは僕のためでもあるんだ。サカグチさんお願いします。代金は余った素材ってことではどうでしょう」


 火龍の鱗はかなり大きい。クレアの剣を作ってもかなり余るだろう。この鱗はあのエリルの魔法でもほとんど損傷せずに残っていたものだ。火龍の鱗の中でも相当に丈夫なやつだと思う。きっとクレアにふさわしい剣ができる。


 肝心のクレアは、まだ「絶対にもらえません」とか呟いている・・・。


「代金は問題ない。むしろ貰いすぎだ」

「それなら是非」

「しかたがない。それがお前たちのためにもなるなら引き受けよう」

「図々しいのですが、もう一つお願いします」

「まだあるのか」

「すみません。白いフェンリルの毛皮で魔導士用の装備をお願いしたいです。ローブとかを。こちらも代金は余った素材でどうでしょう」


 これはユイのためだ。


「クレアいいかな?」

「ハル様、素材はすべてハル様のものだと」


 僕たちのやり取りを見ていたサカグチさんは、仕方ないと言った表情で「それも引き受けよう」と承諾してくれた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 さあ、いよいよイデラ大樹海を脱出できそうですが・・・。

 もし少しでも面白い、今後の展開が気になると思っていただけたら、ブックマークへの追加と下記の「☆☆☆☆☆」から評価してもらえるとうれしいです。

 また、忌憚のないご意見、感想などをお待ちしています、読者の反応が一番の励みです。

 よろしくお願いします。

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