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2-24(脱出その1).

 エリルは魔王城に去った。


 僕とクレアは、1年近く・・・おそらく正確には11ヶ月くらいだと思う・・・に亘ってイデラ大樹海で過ごしてきた。

 僕とクレアの戦闘力は格段に上昇した。こんな死と隣り合わせの場所で1年間近くも生き抜いてきたのだから強くなるのは当然だ。さらにエリルのおかげで魔王の加護と剣を得た。

 時間が経つほどユイを探すのは困難になる。エリルの話では、大樹海のもっと浅い場所、人間の住んでいる場所に近いところにユイが転移した気配を感じたと言う。


 大樹海から脱出を図るべき時が来た。

 ユイ、必ず会いに行くよ!


 着替えや回復薬、それに採取した魔物の素材はアイテムボックスに収納している。アイテムボックスの容量から角、牙、鱗など限られた部分の素材だが神話級や伝説級の魔物の素材ばかりだ。 

 

 こうして僕たちは大樹海に隣接する人族の国の一つであるキュロス王国に向けて出発した。

 エリルから聞いたユイの気配が向かった場所は、大樹海に隣接しているキュロス王国とギネリア王国の国境辺りだ。東がキュロス王国、西がギネリア王国だ。

 僕とクレアは大樹海を抜けるルートの関係で、まずはキュロス王国を目指すことにした。


「クレア行こう!」

「はい!」


 エリルの拠点を出た僕たちは火龍を倒した辺りを通りかかった。予定のルートから少しだけ迂回したが、火龍の素材を無視できなかった。


「ありませんね」

「ないね」


 そこに火龍の死体はなかった。


「死んでなかったのかな?」


 魔物に食べられたにしても骨さえ残ってないのはおかしい。あれからまだ一日だ。


「分かりません。確かに死んだように見えましたが・・・。あ、ハル様、あそこに鱗がいくつか落ちています」 


 クレアの示した辺りには、剥がれ落ちた数枚の鱗があった。エリルの魔法でほとんどの鱗がボロボロになっていたが、1枚だけ比較的痛みの少ない鱗があったのでそれを回収した。特に大きく立派な奴だ。最も硬い鱗だったのだろう。

 ここを脱出した後、ユイを探すのにも、この世界で生きていくにもお金はあったほうがいい。この世界最強の魔物の一体である火龍の鱗は役に立ってくれるだろう。


「それじゃあ、急ごう。まさか、火龍がリベンジにくることはないだろうけど」

   

 最初の1週間はとにかく気を抜くなとエリルからアドヴァイスを貰った。

 一番危険な地域は睡眠時間を削ってでも一気に抜ける。ただ魔物との遭遇を避けたり戦闘したりしながらなので平地を移動するようにはいかない。大樹海の奥ほど魔物も強いのでどうしても時間がかかってしまう。僕たちはその一番危険な地域を抜けるのに1週間はかかると見込んでいた。 


「えっと方角はこっちでよかったよね?」

「はい。間違いないです。左手に小川が流れる音もします」

「よし、じゃあこのまま一気に下ろう」


 エリルとも相談し、伝説級以上の魔物と遭遇する可能性が最も低いと判断したルートを進む。同時に川の流れを見失わないようする。注意しないと昼でも薄暗いこの森の中ではすぐに迷ってしまう。


 その後も僕とクレアは予定のルートを比較的順調に進んだ。相変わらず出会う魔物たちは強い。だがこれまでのところは伝説級以上の魔物には出会っていない。単体での遭遇なので、今の僕とクレアの実力なら何とかなる。エリルに貰った剣の切れ味もすばらしい。


 それにしても・・・。


「黒いですね」


 僕の魔法は黒くなっていた。


「これが魔王の加護の効果なのかな」

「威力も上がってますね」


 僕の火属性魔法の炎の色は少し黒っぽくなった。なんだが地獄の業火みたいで魔王の加護にはふさわしいが正直少し不気味だ。

 僕もクレアも黒っぽい服装だ。僕に至っては髪も瞳も黒で剣まで黒っぽい。そこに黒い炎の魔法だ。確かに魔王の配偶者といわれてもおかしくない。いや、今それを考えるのは止めよう。


「よし、これを黒炎属性と呼ぶことにしよう。これで僕の使える魔法は黒炎弾へフレイムバレット黒炎爆発ヘルフレイムバースト黒炎盾ヘルフレイムシールドの3つだ」


 うん、なんかカッコいい。


「クレア、どうかしたの?」

「ハル様がよければ、それでいいと思います」


 炎属性魔法に比べると黒炎属性魔法は威力が上がっている。限界突破や二重発動も加えると僕の魔導士としても能力はかなり向上したと思う。 

  

「ハル様、オーガです」


 オーガの群れだ。10匹以上いる。


「キングオーガが率いているようです」


 キングオーガ率いるオーガはこの辺りの魔物としては群れることを多い魔物で何度も戦ったことがある。後方にひときわ大きな個体が見える。キングオーガは上級、オーガは中級だが群れを相手にするのは危険だ。 


「逃げるのは?」

「すでに数匹が回り込もうとしています」

「そうか、それじゃ・・・」僕が言い終わる前にクレアはオーガの群れの中央に突っ込んでいた。


 クレアがオーガの群れの、真ん中で大剣を振り回す。何匹かはいきなり斬られてその場に倒れる。その勢いにオーガたちも戸惑っている。しかし徐々に慣れてきたのか、オーガたちはクレアを囲むように集まってきて、その太い腕を振る。クレアはそれを掻い潜るように動きながら対応している。しかし徐々に包囲網は狭まり、さすがのクレアもすべてを躱すことができず何度か攻撃を受けた。クレアの額が赤く染まっている。やっぱり数は力だ。


「クレア!」


 僕が叫ぶと同時に、クレアは一匹のオーガの腕をしゃがむようにして避けたあと包囲網から脱出した。


黒炎爆発ヘルフレイムバースト!」


 オーガの群れの真上から黒い炎の塊が降りてきてオーガたちを包むと爆発した。


「グギャー!」

「オォォォォー!」


 オーガたちの悲鳴が響き、爆風が周りの木々を揺らす。一段階限界突破をした黒炎爆発ヘルフレイムバーストだ。クレアが時間を稼いでいる間に黒炎爆発ヘルフレイムバーストに魔力を溜め限界突破させていた。

 限界突破した黒炎爆発ヘルフレイムバーストは強力だが、どうしても発動までに時間がかかる。僕の魔法に限らず強力な魔法ほど発動に時間がかかる。だから魔導士には優秀な前衛が必要だ。そして僕にとってクレアほど優秀な前衛はいない。


「クレア、大丈夫」

「まだ、キングオーガがいます」


 限界突破していたとはいえ、オーガの群れ全体を包むように範囲を広めに発動させたため、キングオーガをはじめまだ戦闘可能なオーガが数匹残っている。


 でもこの数なら・・・今の僕たちの相手ではない。


 クレアは、キングオーガと対峙する。キングオーガは太いこん棒のようなものを持っている。道具を使う知恵はあるようだ。


 ゴーン、ゴーンと鈍い音を立ててクレアの剣とキングオーガのこん棒が交差する。押し負けているのはクレアの何倍もの巨体を誇るキングオーガの方だ。イデラ大樹海に転移してきたときに比べてクレアは確実に強くなっている。


黒炎盾ヘルフレイムシールド!」


 僕は、黒炎盾ヘルフレイムシールドを発動させ、クレアへのキングオーガの攻撃を防ぎクレアを援護する。その一方で、剣と黒炎弾ヘルフレイムバレットで残ったオーガの相手をする。僕は発動の速さを重視して黒炎弾ヘルフレイムバレットを使っている。とはいえ、小さく凝縮して発動しているのである程度の威力もある。


 グワォーーー!!


 その後、しばらくして、クレアの剣で首の辺りを斬られたキングオーガがその場に倒れた。

 残ったオーガを僕とクレアで討伐して戦闘は終了した。


「クレア、いきなり群れの中に突っ込んだら危ないよ。あんな混戦じゃあ防御魔法で補助するのも難しいし」

「すみません。でも数の多い敵にはハル様の魔法が一番ですから。とにかく集めるように誘導しなければと思ったので」


 クレアは何でもないように言ったけど、左腕にはかなり深い傷を負っているし、左目を塞ぐように頭からも血を流している。


「取りえず回復薬を使おう」


 クレアは中級でいいと言ったけど僕は上級回復薬を使った。エリルの拠点から回復薬を持ち出してきたんだけど、さすがに上級は数が少ないので貴重だ。

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