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2-21(火龍その2).

今日は、2回目の投稿をしてみました。

 このままエリルを置いて逃げるなんて僕にはできない。でもクレアまで巻き込むのは・・・。


「ハル様」


 クレアの言いたいことはすぐに分かった。


「クレア! 炎爆発フレイムバーストを使うから・・・」 

「ハル様が、魔力を溜める間、私が火龍の注意を逸らせます」


 クレアは、僕が全部説明する前に、そう言うと火龍に向かっていった。

 同時に僕は、炎爆発フレイムバーストに魔力を溜め始める。

 クレアは、その身体強化能力に加えて、風属性魔法も使って空高くジャンプすると、空中の火龍に後ろから斬り掛かった。クレアの一撃は火龍の背中を捉えたが、やはり火龍の鱗は硬く大剣ですらかすり傷程度しか与えられない。

 クレアはすぐに火龍から離れて着地する。

 火龍の注意はエリルから離れ、クレアの方を向く。

 火龍が高度を下げ一瞬その動きが止まったところに、今度はエリルが黒いカッターで攻撃する。

 

「逃げろと言ったのに・・・」


 エリルは、そう言いながら僕とクレアを見た。言葉とは裏腹に少しうれしそうだ。


 エリル一人だったときに比べて、クレアが加わったので、戦況は安定してきた。

 安定というより膠着だ。だが、このままでは倒せない。火龍はエリルとクレアの攻撃にも大したダメージを受けていない。

 

 このままでは負ける。


 僕は、炎爆発フレイムバーストに魔力を溜め続けている。火龍にダメージを与えるには相当な威力が必要なのは間違いない。


 それこそ、ヒュドラのとき以上にだ。

 

 これ以上魔力が入らない限界を感じたが、そのまま魔法陣に魔力を押し込み限界を突破する。ここまでは慣れてきた。さらに魔法陣に魔力を流し込む。すると再び魔力を溜めようとしても押し返される感覚がやって来た。二度目の限界に達したのだ。


 もっと魔力を溜めたい。さらに魔力を押し込もうと試みる。

 押し返される。

 やっぱりダメか・・・。

 いや、まだだ!


 その間も、エリルとクレアが火龍の注意を引いてくれている。


 あ!


 そのとき、魔法陣にすーっと魔力が入り始めた。最初に限界突破したときと同じだ。頭の中にある炎爆発フレイムバーストの魔法陣がより一層強く輝きだす。


 で、できた! 


 遂に、これまでどうしてもできなかった二度目の限界突破に成功した。

 それからどのくらい時間がたっただろうか。またこれ以上は魔力は溜められないとばかりに押し返される感覚がやって来た。


 三度目の限界が来たのだ。


 その後も悪戦苦闘したが、さすがに三度目の限界突破は無理だった。それに一度目の限界突破から二度目の限界突破に達するまで一度目の倍以上の時間がかかった。


 エリルとクレアが火龍の注意を引くのもそろそろ限界だ。


炎爆発フレイムバースト!」僕は二度限界突破した炎爆発フレイムバーストを放った。


 火龍の頭上にヒュドラのとき以上の巨大で強い光を放つ炎の塊が出現した。

 それを見た、エリルとクレアが火龍から離れる。

 火龍を包み込めるくらいの大きさは確保できている。後は威力だが・・・。


 僕の中級魔法である炎爆発フレイムバーストは限界突破することによって最上級魔法に近い威力を得た。それなら二度限界突破した今回は最上級魔法を超える威力はあってもおかしくないはずだ。


 なら、火龍だって・・・。


 巨大な炎の塊は火龍に向かって降りてき火龍をドーム上に包む。危機を察したのか火龍は炎のドームから逃れようとするがエリルとクレアがそれを許さない。


 そして・・・炎の塊は完全に火龍を包み込み轟音を響かせ爆発した!


「グギャウゥゥーー!!!」


 火龍は、叫びながら、地面に墜落した。


 やったのか?


 火龍は地面に伏せている。


 ブスブスと体中から煙を上げながらも、火龍はゆっくりと立ち上がる。

 ほっとした気持ちは、一瞬で絶望に代わる。 


「逃げれば良かったのに戻ってくるとはな。やっぱり、なかなかいい男だなハル」


 エリルは、地面に降りてきて僕の隣に立つ。いつの間にか反対側の隣にはクレアもいる。


「ええ、エリルの言う通りで僕はいい男ですから、ヒュドラのときと同じで可愛い女の子を残して逃げるわけにはいきませんよ。でも僕の魔法では威力が足りなかったみたいです。ヒュドラのときよりも魔力を溜めることができたと思ったんですけど。やっぱり僕はあんまり格好良くはないみたいです」


 実際、ヒュドラのときは一度だった限界突破を二度することができた。それでもだめだとは・・・。


「いや相性の問題もある。見た目通り火龍は炎には強い。それなのに、この世で最も強い魔物の一体である火龍にここまでダメージを与えるとは自慢してもいいぞ」


 がっかりしている僕をエリルが慰めてくれた。魔王なのにエリルはやさしい。

 相性か・・・残念ながら僕は火属性魔法しか使えない。


「しかたないな・・・。これはあんまり使いたくなかったのだが・・・」


 エリルは何かと呟くと「ハル、今度は、お前とクレアとでちょっとの間、火龍の注意を引いてくれ!」と指示した。そして「あ、それと、私からは、離れていろ!」と付け加えた。


「分かった。注意を引いていればいいんだね。やってみるよ。エリル」

「分かりました」


 僕たちの返事を聞くとエリルは祈るように両手を合わせた。すると、エリルの周りを黒い霧のようなものが覆い始めた。僕とクレアは慌ててその黒い霧から距離を取った。


 僕は剣の抜いて、クレアと一緒に注意をエリルから逸らすため火龍に近づくと、火龍のブレスがエリルに当たらないよう注意しながら、クレアと二手に分かれて攻撃する。


 黒い霧はエリルを中心にゆっくりと大きくなっていく。


「ハル、クレア、私には絶対に近づくな!」


 見ていると、黒い霧に触れたものは、草も樹木も次々と色を失ってボロボロと朽ちている。

 エリルが祈るように合わせていた手をゆっくりと前に出す。すると黒い霧はエリルの前にその濃さを増しながら集まってきた。

 エリルの前でその濃さを増し大きく膨れ上がった黒い霧は火龍に向かって移動し始めた。


 そして・・・黒い霧の塊が火龍を捉えた。


 全身を黒い霧に包まれた火龍は苦しそうに暴れ回る。

 火龍は暴れながらも、黒い霧を纏ったまま歩いてエリルに近づく。

 火龍の鱗は朽ちるように色を失っている。大きな羽は、力を失い垂れ下がっている。


 黒い霧・・・闇魔法・・・闇魔法を使える者こそ魔王だ! ときどき忘れそうになるが、エリルは魔王なのだ。


 エリルの魔法は、魔王の闇魔法はすごい!


 そして、その魔法を、黒い霧を纏ながら歩いてエリルに近づいてくる火龍もすごい!


 火龍は、苦しそうに暴れながらエリルに近づく。

 エリルは黒い霧を維持したまま動かない。もしかすると、この魔法を維持している間は動けないのかもしれない。


 僕とクレアは黒い霧には迂闊に近づけない。


炎弾フレイムバレット!」


 僕は、離れたところから炎弾フレイムバレットを火龍に向かって放つ。


「!?」


 なんと、炎弾フレイムバレットは黒い霧にかき消されてしまった。同じように、火龍がエリルに向かって吐いたブレスも、口から出た瞬間に黒い霧によりかき消されている。


 すごい!

 やっぱりエリルは間違いなく魔王だ!


 そして、その魔王の魔法をここまで耐える火龍もさすがだ。

 火龍の鱗の防御力は高い。だが、その鱗も徐々に朽ちて剥がれ落ちている。

 火龍の足取りは覚束ないしエリルに近づく速度も遅い。


 もう少しだ。


 それでも火龍は・・・黒い霧に包まれながらも・・・エリルに近づく。

 すると、火龍は急に体を捻ねった。


 ドーーン!


 火龍の尻尾がエリルを捉え、エリルは大きく飛ばされて地面に叩きつけられた。


「エリルーー!」

「エリル様!」


 エリルは倒れたまま動かない。

 黒い霧が徐々に薄くなり消えていく。

 火龍の方も限界だったのか地面に伏せ苦しんでいる。


 倒すなら今しかない。

 黒い霧が消えたのを見て、僕とクレアは飛び掛かって火龍を何度も何度も斬りつける。

 さらに炎弾フレイムバレットでも攻撃する。


 エリルの黒い霧のおかげで鱗が一部剥がれ落ちている。それに残った鱗の防御力も弱まっているのか僕たちの攻撃は火龍にダメージを与えている。火龍も最後の力を振り絞って首を上げてブレスを吐く。


炎盾フレイムシールド!」


 火龍のブレスも今ではずいぶんと弱々しい。僕の炎盾フレイムシールドでも火龍のブレスを十分防げる。

 僕とクレアは火龍への攻撃を続ける。そのうち、魔力が尽きたのだろうか、火龍はブレスを吐かなくなった。


 僕とクレアは攻撃し続ける。


 いつまで攻撃していただろう。それでもなかなか火龍に止めを刺すことができない。限界突破した炎爆発フレイムバーストをもう一度使いたいけど、あれは時間がかかる上に限界突破できるほど魔力が回復しているかどうかもあやしい。


 いそがないと高位の魔物になるほどその再生力は高い。だが、火龍はそれほど回復はしてないように見える。エリルの魔法の効果かもしれない。


 僕とクレアは無我夢中で攻撃し続けた。永遠ともいえる時間が流れる。


 と、火龍が突然立ち上がり大きく羽を広げた。そして首を持ち上げこちらを睨む。ああー、もう回復したのか? もう火龍の攻撃を防げる気がしない。


 僕は死を覚悟した。 


 僕とクレアは火龍と睨み合う。


「ギャォォォーーーン!!!」


 火龍は大きく一声鳴くと、静かに首を垂れて再び地面に伏した。

  

 勝った・・・のか。


「エリル―!」


 僕は、倒れて動かないエリルに駆け寄って、エリルの体を抱き上げた。良かった。生きている。


「クレア、回復魔法を!」


 よく考えてみたら、火龍がエリルの魔法で苦しんでいるうちに、先にエリルの治療をすべきだった。火龍を倒すなら今だと気が動転して頭が回ってなかった。僕はアイテムボックスから拠点から持ってきた上級回復薬を取り出すとエリルに飲ませる。


 クレアの回復魔法と上級回復薬でもエリルは目を覚まさない。


 戻ろう。とにかく拠点に戻るんだ。クレアに護衛してもらいながら、僕はエリルを抱いて僕が魔王の別荘と呼んでいる拠点へと急いだ。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 少しでも本作が面白い、続きが気になると思っていただけたら、ブックマークへの追加と下記の「☆☆☆☆☆」から評価してもらえるとうれしいです。あと、ここがよくないなどの忌憚のない感想、ご意見、評価などをお待ちしています。今後の投稿に活かしたいと思います。 

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