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ありふれたクラス転移  作者: たまふひ
第1章(クラス転移)
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1-5.

 僕たちはどんな魔法が使えるのか? コウキの質問に対してセイシェルさんは「クラネス王女殿下、よろしいですか」と言ってクラネス王女の方を見た。

 クラネス王女が頷くと、セシェルさんは「みなさん、クラネス王女殿下は鑑定魔法を使えます。これを使うと皆さんがどの属性の魔法に適正があるかを調べることができます」と続けた。


 鑑定魔法、これもラノベとかでも定番の魔法だ。確か昨日の話ではどの属性の魔法に適正があるかしか調べられず、ステータス、レベル、スキルなんて概念も無いらしかった。


「鑑定魔法というのは特殊魔法の1つです。特殊魔法というのはその人が生まれながらに固有に持っている魔法で固有魔法とも呼ばれたりします。鑑定魔法は無属性魔法だと考えられていますが、正直に言えば、特殊魔法については分かっていないことも多いです。鑑定魔法のほかにも自分の周りの魔素を持つモノを探知する探知魔法や魔物を使役する使役魔法とかが代表的な特殊魔法ですね」


 セイシェルさんの説明にクラネス王女は頷いている。


「実は、すでに皆さんがどの属性の魔法を使えるかについては鑑定させていただきました。本当は勝手に他人を鑑定するのは失礼なこととされているので普段はそんなことはしないのですが、今日は勝手に鑑定させてもらいました。申し訳ありません」


 そういえば、さっき何か不快な感じというか、鳥肌が立つような、そんな気配を感じた。あのとき鑑定されてたのだろうか。隣のユイちゃんを見ると少し俯いて何かを思い出すような考えるようなしぐさをしている。たぶん僕と同じことを考えているのだろう。


「まずコウキ様ですが、コウキ様は光属性魔法が使えるようです」


 クラネス王女の言葉に場がざわついた。それも当然だ。さっきのセイシェルさんの説明では光属性魔法が使えるのは勇者だけって話だった。


 御神くんが勇者か・・・。


 あまりにも似合っている感じで少し笑ってしまう。いや正直に言うと、今僕が感じているのは、やっぱり僕ってモブなのかっていうあきらめの気持ちとちょっとした嫉妬心が混じったたような少し苦い感情だ。それにしてもまさにテンプレな展開だ。


「コウキが勇者ってことですよね」


 なぜか御神くん本人ではなく三条さんが確認する。


「はい。間違いありません。コウキ様は光属性魔法の素質があり勇者です。そしてサンジョウ様。サンジョウ様は賢者です」


 クラネス王女の説明によると、三条さんは何と火、水、風、土の基本四属性に加えて聖属性の魔法も使える。基本四属性をすべて使えてさらに聖属性の魔法も使えるいわば魔法の達人のことを賢者と呼ぶのだと言う。賢者はすべての属性魔法が使えるが、特に聖属性魔法の優れた使い手であることが多いらしい。


「初代勇者であるアレク様の仲間であり恋人であったシズカイ様も賢者だったんですよ。シズカイ様は大賢者とも聖女とも呼ばれていて、今でもとても人気がある英雄の一人です。大陸の南の方の国ではシズカイ様のことを黒髪の聖女と呼んで神の使いとしている宗教もあると聞いています」

「わ、私が賢者・・・それに勇者の恋人・・・フフ・・・」


 三条さんはシズカイ様とやらが自分と同じ賢者であり勇者の恋人と聞いて嬉しそうな、少し誇らしげな顔をしている。少し顔が赤い。


「えっと、それから、コウサカ様も賢者です」


 え、ユイちゃんも賢者・・・。


「あのー、私も賢者っていうことは火、水、風、土の基本四属性に加えて聖属性の魔法も使えるってことなんですか?」

「はい。そうです」

「クラネス殿下。それは間違いないのですか」セイシェルさんが確認する。何か少し戸惑っているような感じだ。

「ええ、間違いありません」

「そうですか。すみません、ちょっと予想していなかったので。これまで賢者が同時に複数召喚された記録はないのです。勇者と同じで1人も召喚されないことはあっても複数の賢者が召喚されたことは一度もありません。殿下、まさか勇者も・・・」

「いえ、勇者はコウキ様1人です」

「そうですか。まあそうですよね」


 クラネス王女とセイシェルさんの会話からすると、これまでは勇者と同じで賢者も1人以上召喚されたことはなかったみたいで、それが今回三条さんとユイちゃんの2人が賢者認定されたので驚いているってことか。

 それにしてもやっぱり勇者は御神くんだけか・・・いや、別に僕もとか思ったわけじゃないけど・・・。まあ、ちょっとがっかりしたのは確かだけど、でも僕以上にがっかりというか苦々しい表情をしている人がいる。

 三条さんは、さっきまでの賢者認定されて嬉しそうな表情が一転、今は明らかに不機嫌そうだ。原因ははっきりしている。ユイちゃんも賢者だったからだ。たぶん異世界でもユイちゃんはライバル認定されているのだろう。でも心配しなくてもユイちゃんは御神くんを三条さんと取り合おうとは思ってないと思う。


 その後もクラネス王女から鑑定結果の発表が続き、ヤスヒコは風属性、アカネちゃんは火属性、浅黄さんは火、風の二属性、如月さんは土属性、中島くんは水属性、そして僕は火属性の魔法の適性があることが判った。

 浅黄さんは2種類で、あとの人は1つの属性にしか適性はないみたいだ。

 僕は、火属性1種類か・・・まあ予想の範囲内か。火属性ってなんとなく攻撃力は高そうなイメージだし・・・よしとするか。

 これで僕だけ何の適性もなく追放とかの展開とかはなくなったのかな? いやその方が実は最強だったみたいな大逆転につながったのか? 僕は横目で中島くんを見るが何を考えているのか分からない。


「クラネス王女殿下ありがとうございました。さて、これで皆さんがどの属性魔法に適正があるのかは判りました。これからは適正がある属性魔法の実践訓練を行うことになりますが、その前に魔法を覚える必要があります。これは魔導書と呼ばれる魔道具を使います。詳しいことはおいおい説明します。とにかく適正のある属性の魔法しか覚えることはできません。また覚えただけでは足りません。威力を高めたり効果的に使用したりするには訓練することが必要です。訓練はとても大事です。また使える属性魔法の種類が少ないからといって、がっかりする必要はありません。なぜなら戦闘の方法には属性魔法を使うもの以外に無属性魔法である身体能力強化を使って剣などの武器を用いて戦う方法があるからです。むしろ一般的にはこちらの方が通常の戦闘方法です。それについてはギルバート副団長から説明があります」


 なるほどまさに剣と魔法の世界だ。

 セイシェルさんからバトンを渡されたギルバートさんは、立ち上がって眼光するどくみんなを見回すと落ち着いた口調で話し始めた。


「私は属性魔法が使えない。だが、騎士団の副団長という地位を与えられている。それは私が属性魔法を使えなくても強いからだ。一般的に属性魔法に長けたものは身体能力強化には劣る傾向がある。そして逆もまた真だ。すなわち私は属性魔法には適性がなかったが、身体能力強化に関しては多少の才能があった。それを生かして剣聖の称号を賜る剣士となることができたのだ。ただし、剣の腕は鍛錬によって磨かれるものであり身体能力強化に優れていれば有利ではあるが、それだけで優秀な剣士になれるわけではない。皆の剣士としての適性については属性魔法と違い鑑定によっては判断できない。それは実践訓練の中で徐々に判明するだろう」


 ギルバートさんは一気にそれだけ言い切ると再び席についた。今日言うべきことは以上っといった風だ。

 

 その後、クラネス王女とセイシェルさんから、この世界で生きていくための戦闘以外の知識などについても説明があった。それに対して御神くんが僕たちを代表して質問するという流れでその日の会議というか授業のようなものは進行した。


 剣と魔法、勇者に魔王、冒険者、説明を聞けば聞くほどのこの世界はアニメやラノベで何度も描かれたファンタジーの世界そのものだ。そもそも僕たちに起こった異世界転移もそうだ。


 この世界はアニメやラノベでよくある、ありふれた異世界だ。それは不思議なくらいだ。


 僕は説明を聞きながらこれから僕たちの身に何が起こるのかを考えずにはいられなかった。これがアニメやラノベの世界に近いのなら元の世界に帰れるっていうパターンは少ない。そして主人公は御神くんだろう。なんといっても勇者なのだ。じゃあヒロインはユイちゃん? それとも三条さん? 賢者はこれまでは1人だったと言っていた。今回はなぜ2人なのか?


 バグ?


 分からない・・・。 


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― 新着の感想 ―
もしかして、マツリはこのときにこの場にいない誰かが勇者だったと気付いた??そしてあの場にいた人は同じように召喚されていると確信した?? マツリの表情の変化がそんな感じかなぁと。
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