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ありふれたクラス転移  作者: たまふひ
第1章(クラス転移)
3/203

1-3(プロローグ3).

 ちょっとしたシーンを付け加えていますので、すでに読んだ人にも目を通してもらえるとありがたいです。

 ストーリに影響はありません。

 結局、魔王討伐に参加するかどうかはともかく、全員訓練には参加するということになった。

 僕はルヴェリウス王国のことを信用したわけではない。みんなだってそうだろう。でもこの世界でとりあえず僕たちが生きていくのにどうすればいいというのか? 

 僕たちはまだ高校生で、まだまだ親や教師の保護の元に生きてきたのだ。たまに偉そうに親たちに逆らってみたところで、自分たちだけでできることなんてたかが知れている。はっきりいってまだ子供なのだ。そんな僕たちが異世界に来て、とりあえずルヴェリウス王国の人たちの言う通りにする以外に生きる道は無い。


 ちなみに身につけていた電子機器類はこの世界では使えなかった。


 家族は今頃どうしているだろう?

 そもそも時間の経過はどうなっているのか? 日本? いや地球と同じ時間が過ぎているのか?

 本当に僕たちには何も分かっていない。


 その後、僕たちは王宮の中にある僕たち専用だという建物に案内された。建物についての説明を受けそれぞれ個室を与えられた。部屋には着替えなども用意されている。服は僕がファンタジーの世界でイメージする通りのものでアニメの主人公にでもなった気分だ。


 案内された専用の建物には食堂があった。なんとお風呂もついている。古代ローマにもお風呂があったらしいけど普通なのだろうか? 

 建物を案内されているときに説明を受けたんだけど、科学技術があまり発展しているように見えないこの世界だが、その代わりに魔法により光を放ったりお湯を沸かしたりする便利な魔道具がある。なので中世ヨーロッパ風の見た目以上に快適そうだ。もっとも僕は中世ヨーロッパに関する知識などほとんどない。それでも現代人の感覚からすれば、かなり過酷で不衛生な世界だと聞いたことがある。

 この世界は見た目は中世ヨーロッパ風だけど、実際には現代人にとって案外暮らしやすそうというか・・・なんだかずいぶん都合のいい世界のように感じる。


 最初に召喚された建物は魔導技術研究所っていう名前で僕たち専用の建物の隣にある。僕たちが召喚された部屋は魔導技術研究所の地下にある。僕たち専用の建物と魔導技術研究所のある一角は王国騎士団によって厳重に警備されているそうだ。おそらく国家機密にあたる施設なのだと思う。


 みんな考えることを放棄したように、建物を案内され、食堂で食事をし、与えられた個室へ戻る。食事もパンだのスープだの何かの肉だの特に変わった感じは無かった。味も普通だ。


 ラノベやアニメで何度も描かれた異世界召喚・・・現実に起こってみると、何より不思議なのは、あまりにもラノベなどの設定通りのありふれた異世界だということだ。魔王や勇者がいる剣と魔法の世界・・・あまりにもラノベやアニメの世界に似すぎている。これには何か意味があるのだろうか?


 やっぱり都合が良すぎる・・・。


 そもそもルヴェリウス王国の人たちは僕がイメージする通りの貴族のような恰好をしている。本当に何か超常的な力で異世界だかに飛ばされたのならそれは想像絶するようなまったく地球とは違う場所で、住んでいる生物も地球とはまったく違う・・・そう例えば宇宙人のような・・・そんな世界であるほうが自然なのではないだろうか?


 とにかく分からないことだらけだ。





★★★





 魔道具の灯りに照らされて、部屋の隅にキラリと光るものをみつけた。


(なんだ、あれは?)


 机をずらして態勢を低くして手を伸ばす。

 やっと手に触れたそれはひんやりとしていていて、どうやら小さな金属片のようだ。


 拾い上げたそれを観察する。


(これは・・・)


 さらによく観察する。


(なんてことだ! 間違いない。これはあの・・・。まだみんなには言わないほうがいい。そうでなくてもみんな動揺している。とにかくもう少し・・・)





★★★





 僕にあてがわれた部屋で、今日起こったことや家族のことを取りとめもなく考えていると、トントンとドアとノックする音がした。ドアを開けてみるとユイちゃんが一人で立っていた。


 ユイちゃんはとても心細そうな・・・雨の中の捨て猫が人間だったらこんな感じなんじゃと思うような・・・そんな表情をしていた。もしかしたら他人からみれば僕もそんなふうに見えるのかもしれない。


「ハル・・・私たちどうなっちゃうのかな?」

「ユイちゃん、とりあえず入って」


 女の子を部屋に入れてよかったんだろうか? もう外は暗かったし、こんな時間に・・・。いやそんなくだらないことを考えている場合じゃないか。そもそもここは日本じゃないし。見たところ椅子らしきものは一つしかないので、二人でベッドに並んで座る。


「お父さんやお母さん心配してるよね?」

「うん」

「帰れるのかな?」


 王様は帰れないと言っていた。でもそれを口には出せなかった。ラノベとかでも帰れない設定の方が多い。


「わからない」

「うん」


 ユイちゃんはいきなり立ちあがると、窓の方に歩いて行って外を見ている。夜空を見上げているようだ。そういえば、この世界にはガラスもあるのか。少し色がついているような感じだけど、やっぱり建物の中世風の見かけに比べ文明の水準は意外と高い。魔法やら魔道具やらのおかげなのだろうか。


 僕もユイちゃんの隣に行って外を見る。


 窓の外には建物に隣接している広場というか公園みたいな少し開けた場所が見えた。おそらく魔道具なのであろういくつかの街灯みたいなものがぼんやりとした光を放っている。隣のユイちゃんを見ると空を見上げている。


 僕もユイちゃんと一緒に夜空を見上げる。半月よりちょっとだけ膨らんだ月が見えた。それは地球で見ていた月と同じような大きさで同じような色をしていた。


「ここが異世界だなんて信じられないよね」と僕はユイちゃんに話しかけた。


 ユイちゃんからの返事は無い。ユイちゃんはじっと夜空の一点を見つめていた。そしていきなり僕の方を見た。


「ううん。ハル、ここは異世界だよ。だって・・・」そう言うとユイちゃんはまた視線を夜空に向けた。


 僕もつられてユイちゃんの見ている方を見上げる。


 そこには小さな赤い月が浮かんでいた。小さいけれど星ではない、まぎれもなく赤い月だ。赤い月はほぼ満月に見えた。


 地球の衛星は・・・月は一つだ。ユイちゃんの言う通りでここは紛れもなく異世界だ。地球ではないどこかだ。今日一日で信じられない出来事が次々起こった。もちろん僕は驚き戸惑っているけど、一方でどこか物語の中にいるだけで現実ではないようなそんな気分だった。そのせいか今の今まで、思ったより冷静だった。それはユイちゃんやクラスメイトたちと一緒だったせいもあるだろう。一人だったらもっと泣き叫んでいたかもしれない。


 でも、二つの月を見て・・・今になってとても怖くなってきた。ユイちゃんの方を見ると少し表情がこわばって肩が震えている。僕たちは今二つの月を見て異世界に来たことを実感したのだ。そして、これから先のことを考えてとても怖くそして不安になった。


 だけど、この時・・・ユイちゃんの震える肩を見て、僕は怖いと感じると同時にユイちゃんを守りたいという気持ちを強く持った。本当にここは異世界なんだ。怖い、とても怖い、この先のことを考えると不安だ。

 

 でも、ユイちゃんだけは絶対に守らないと・・・。


 明日からは剣術や魔術の訓練をするのだという・・・。


 僕たちにはどんな未来が待ち受けているのだろうか?

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