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226/327

6-26(6階層その3).

 『レティシアと愉快な仲間たち』の4人はイネスさんから貰った地図と攻略情報を見ながら頭を突き合わせて相談している。


「この大きな広間には神話級の龍が出るらしい」

「火龍、氷龍、雷龍、地龍だね」

「ええー。4体もの神話級と戦うの?」

「ユイ、違うよ。選べるんだ」

「選べる?」

「ハルくんの言う通りだ。ユイさん、こっちの攻略情報をよく見るんだ」

「えっと・・・」


 攻略情報には4種類の神話級である龍のうち一体を選んで戦えると書いてある。


「なるほど部屋に4種類の龍の像があって・・・それに魔力を流すことで戦う相手を選べる・・・か。なるほどね」


 さすがに4人で神話級4体は無理だ。それにしても4種類の龍の特徴まで書いてある。全部試してみたようだ。イネスさんたちはかなり試行錯誤を繰り返したんだろう。


「イネスさんはその部屋をクリアしていますね」とクレアが言った。

「うむ。次の部屋のことも書いてあるからな。攻略情報によると、どうやら地龍を討伐したらしい」


 だけど、その次の部屋のことは、あまり書いていない。ただ、無理だとか、ダメージが通らないとか、書いてあるだけだ。地龍より危険なわけではないが、との書き込みもある。


「次の部屋で諦めたってわけですね」

「そうみたいだな」


 その他にもいろいろな部屋がある。4階層と同じでかなり複雑な迷路のようになっている。ときどき宝箱が現れたりするらしい。


「レティシアさん、宝箱は魅力的ですけど、いつ現れるかも分かりません。せっかくイネスさんたちの3年間の成果である地図と攻略情報を貰ったんですから、これまで通り最短距離でその龍の部屋を目指したいと思うんですが」

「私はそれでいい。みんなもそれでいいか?」


 レティシアさんの言葉にユイとクレアも頷いた。





★★★





「ふうー、これで終わりか」

「みたいですね」


 僕はレティシアさんの言葉に同意した。


 この部屋ではゴブリンとオークが現れた。両方とも下級の魔物だ。でも問題はその数だった。500体以上現れた。100体づつ繰り返し5回出現したのだ。


「ハル様とユイ様の魔法があるので思ったより苦戦しませんでした」


 この部屋では範囲魔法が有効だ。僕は魔法の二重発動も使って多くの魔物を倒した。ユイの竜巻系の合成魔法はしばらくその場に留まり攻撃し続け次々とゴブリンやオークを巻き込んでいた。相手が下級なら魔法の効果範囲をかなり広く発動しても十分倒せる。むしろ自分たちがダメージを受けないように離して使ったり、威力を押さえたりするほうが大変だった。範囲魔法を使った後はクレアが素早く動いて魔法でダメージを受けた魔物に次々と止めを刺した。レティシアさんはユイを始めとしたみんなの守りに専念していた。レティシアさんの防御力は多くの魔物に対して頼りになる。


範囲回復エリアヒール!」


 そこまでダメージは負ってはいないが、さすがに数が数だけに僕たちも無傷ではないのでユイが回復魔法を使った。みんな「ありがとう」とユイに感謝の言葉を述べながら体を動かして問題のないことを確かめている。


「ただ、パーティーの構成によっては、このタイプの部屋を苦手とする場合もあるかもしれないな」


 レティシアさんの分析は正しいと思う。剣士タイプに偏ったパーティーだと苦戦するだろう。どんなに強い剣士でも何十体もの魔物に囲まれ一斉に攻撃されれば危険だ。相手が下級であってもだ。範囲魔法にクレアの突破力による高い攻撃力とレティシアさんの防御力、さらにはユイの回復力を備えている『レティシアと愉快な仲間たち』はとてもバランスがいい。


「さて、安全地帯で、また野営だな」


 僕たちは、こんな戦闘を繰り返しながら、すでに安全地帯で5回野営している。地図があるので確実に龍の部屋に近づいている。最近では野営するたびに例の夢を見る。どうやらユイも同じみたいだ。


「ハル、あの夢に出てくるのって・・・」

「うん」


 それは徐々にその姿を・・・。




★★★





「さて、次は上級と中級か」


攻略情報によると次は上級のバジリスクやサラマンダー、中級のブラッディベアやブッラクハウンドが100体出る部屋らしい。どれもおなじみの魔物だ。


「うーん、面倒くさそうだな」

「ハル様の魔法で一撃です」

「クレア一撃は無理だよ」

「どうしてですか? 一撃で神話級でも倒せるハル様の魔法なら。しかも魔法の二重発動で2発打てば相手は全滅します」

「いや、全部に直撃はしないと思うよ。それに一撃で神話級の魔物を倒したこともないよ、クレア」

「それなら、部屋いっぱいに範囲を広げて使えばどうでしょうか? 相手は伝説級や神話級ではないのですから、それでも相当なダメージを与えられるのでは、その後、残った魔物を全員で倒していけば」

「部屋いっぱいに発動させたら僕たちのほうがダメージを受けるかもしれないね」

「あ!」


 その後、ああでもないこうでもないと、みんなで相談した後、やっと攻略を始めることになった。


 先陣を切ってレティシアさんが部屋に飛び込んだ。


 攻略情報通り大量の魔物が僕たちに近づいてくる。僕たちは盾を構えたレティシアさんの後ろに固まっている。


黒炎爆発ヘルフレイムバースト!」


 僕は大量の魔物に向かって黒炎爆発ヘルフレイムバーストを放った。限界突破はしているが一段階に留めている。自分たちを巻き込まないような範囲で発動した。


 ドォォーーンと音を立てて黒い炎の塊が魔物たちが集まっている辺りで爆発した。


 魔物たちが「ギャー!」、「グオー!」、「ばうぅー!」などと悲鳴を上げている。今の一発で数十体の魔物を息の根を止めた。


炎竜巻フレイムトルネード!」


 ユイが得意の合成魔法を使う。数体のブラックハウンドが巻き込まれている。


「みんな、こっちだ」


 レティシアさんの指示で全員がレティシアさんの後を追って移動した。


「バジリスクらしき魔物がいる。目に気をつけろ!」


 バジリスクの目を見ると硬直してしまう。


黒炎爆発ヘルフレイムバースト!」


 僕はここで2発目の黒炎爆発ヘルフレイムバーストを放った。最初のと同じで一段階限界突破している。爆発音に魔物の鳴き声が混じって耳が痛い。最初から用意してあった2発目だ。一発目を使った後すぐに防御魔法の準備も始めている。忙しい。


「ハルくん、ナイスだ。今のはバジリスクに直撃したぞ!」


 まぐれだ。魔物が固まっている辺りに打っただけだ。


「さすがハル様です」

「まあね」


 そのとき数体のブッラクハウンドが飛びかかってきた。


 ズサッ!


 クレアがすかさず一体を斬り捨てた。


黒炎盾ヘルフレイムシールド!」


 僕は防御魔法を展開した。


「きゃん!」


 黒炎盾ヘルフレイムシールドの激突して悲鳴を上げたブッラクハウンドはたちまちクレアの剣の錆となった。


炎柱フレイムタワー!」


 ユイが上級の火属性魔法を使う。床から炎の柱が吹き上がりこちらに近づいてきた数体のブッラクハウンドやブラッディベアを巻き込んだ。気味の悪い鳴き声を上げ魔物たちが燃えている。獣系の魔物は火属性に弱い。


 炎の柱を乗り越えて飛び掛かってきたのは上級のサラマンダーだ。サラマンダーは炎系に強い。しかもこのトカゲは結構速いのだ。


 ガキッ!


 レティシアさんが盾でサラマンダーの飛び掛かり攻撃を受け止めた。レティシアさんがユイを守ってくれるので安心だ。

 レティシアさんの盾に跳ね返されたサラマンダーが弱点の腹を見せたことにより、サラマンダーもクレアの剣の錆となった。さすがに上級なので一撃とはいかなかったがクレアは目にも止まらぬ速さでサラマンダーを3度斬った。


黒炎爆発ヘルフレイムバースト!」


 僕は3度目の黒炎爆発ヘルフレイムバーストを使った。これまでと同じく一段階だけ限界突破している。二段階限界突破しようとすると一度目の倍以上時間がかかるのでこのペースでは無理だ。


 僕が3度目の黒炎爆発ヘルフレイムバーストを使った段階で、魔物の数は数えられる程度に減った。


 そこからは魔物をすべて倒すまで大した時間はかからなかった。やはりこのパーティーは強い。凄くバランスがいいのだ。


範囲回復エリアヒール!」


 そしてユイの回復魔法で全員体調もバッチリだ。


「よし! 次だ!」


 この後数日かけて上級魔物が複数体出現する部屋などを無事クリアした僕たちは、ついに神話級の龍が出る部屋に辿り着いた。

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― 新着の感想 ―
ハルとユイしか見ていないようで『夢』が気になります。異世界人だから?? 送信うまくいきますように……昨日は失敗したようです。
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