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222/327

6-22(タツヤ).

 投稿した後、特に会議の部分が不満だったので書き直しました。

 今日は魔族の幹部会議が開かれている。四天王が4人とも揃うのは久しぶりだ。俺はメイヴィスの側近としてメイヴィスの隣に控えている。

 いつも通り、担当者から事務的な事項が報告される。まずは人族との戦争の状況だが、これはルヴェリウス王国との国境での争いが主で、魔王様の方針もあり小康状態だ。その後、街の整備状況、魔道具の開発状況が報告される。ゴアギール地域はこの世界でも北にある寒い地域なので食料の備蓄状態なども重要な議題だ。


 いつも思うのだが人間の会議とあまり変わらない。だが、いつもと変わらないのはここまでだった。


 定例の議題が滞りなく報告され、それに四天王が意見を述べたり魔王様が承認したりした後、おもむろに魔王様がジーヴァスを方を見た。


「ジーヴァス、ガルディア帝国で面白いことをしているようだな」

「面白いこと?」

「とぼけるな。ガルディア帝国の皇帝ネロアとはお前の息のかかった者、おそらくはアグオスであろう?」


 今なんて? ガルディア帝国といえば今やルヴェリウス王国を凌ぐ人族最強の国家と言われている。なんでも昔の皇帝が設立した騎士養成学校とやらが次々に強者を生み出しているのだとか。


「さすがエリル様。バレてしまいましたか」


 魔王様の指摘は正しかったらしくジーヴァスは悪びれることもなくあっさりと認めた。隣に座るメイヴィスを見る。表情からするとメイヴィスも知らなかったようだ。


「ジーヴァス、どういうつもりだ?」

「人族を倒し魔族の世界を作るためですよ。私はこれまでそのために努力してきましたから」

「お前も私の方針は知っているはずだが」


 魔王様はジーヴァスを睨むがジーヴァスも目を逸らさない。両者とも肝が座っている。


「エリル様が人族と和解する方針を示される前から、そもそも魔王なんてものがいない時代から、帝国の支配を進めていましたので」

「魔王なんてとはなんだ! ジーヴァス不敬だぞ!」


 サリアナがジーヴァスを咎める。サリアナの顔は怒りで赤く染まっている。


「これは、すみません。言葉が足りませんでした。ただ、私はエリル様のいない時代から魔族のために色々と動いていたのです」

「それで、どうするつもりなんだ、ジーヴァス?」


 今度は驚きから立ち直ったメイヴィスがジーヴァスに詰問する。だが、メイヴィスも魔王様に報告することなく同じようなことを神聖シズカイ教国でしようとしていたのだから人のことは言えない。


「いや、よく考えてみたらエリル様が言うところの人族との融和策にもお役に立てるかもしれません。ですからこのままにしておこうかと」

「魔王様の言ったことが本当でガルディア帝国皇帝がアグオスなら、ガルディア帝国は実質お前の支配下にあるということか?」

「まあ、そう言うことだ」


 メイヴィスが神聖シズカイ教国で失敗したことを神聖シズカイ教国より遥かに有力な人族国家でジーヴァスは成功させていたのだ。 


「貴様、なぜエリル様が魔王になってすぐに報告しなかったのだ」


 メイヴィスと仲のいいというか勝手にメイヴィスに懸想しているデイダロスが言った。


「ちょっと報告するタイミングが遅くなっただけだ」


 いや、報告してないだろう。魔王様に指摘されて認めただけだ。それでもジーヴァスは余裕だ。四天王筆頭であるジーヴァスはそれだけの力を持っている。


「それではジーヴァスよ。ガルディア帝国は魔族と和解してくれるのか?」と魔王様が問うた。

「もちろんです、エリル様。ただし」

「ただし、なんだ?」

「ただし、ルヴェリウス王国と和解するのが先です。なんせ勇者を召喚しているのですから。そうでないと帝国だけ和解しても他の人族国家と戦争になりかねません」


 一理ある・・・のか。


「ジーヴァス、さすがに口が達者だな」

「お褒めに預かり光栄です」


 魔王様はさすがだが、ジーヴァスも負けていない。


「そういえば、ジーヴァス、帝国躍進の原動力となった騎士養成所だが、どんな訓練をしているんだ?」

「いえ、特別には、ただ、貧しい平民を厳しく鍛えてはおります」

「それだけか?」

「はい、それだけです」


 結局その後の魔王様やメイヴィスからの追求をジーヴァスはのらりくらりと躱した。最終的にジーヴァスからの説明をまとめるとこんな感じだ。


 魔王様の推測通り皇帝ネロアとはジーヴァスの側近の炎の化身アグオスだ。そして黒騎士団の団長は同じく側近の剣魔インガスティだ。獣騎士団と呼ばれている黒騎士団の第三大隊を率いているのはジーヴァスの一族で幹部の一人キケロアらしい。どうやらサリアナがガルディア帝国でキケロアを見かけたことでガルディア帝国がジーヴァスの支配下にあることがバレたらしい。なぜ、サリアナがガルディア帝国にいたのかは分からない。ただキケロアはサリアナと同じく使役魔法を得意にしており四天王に選ばれているサリアナを以前からライバル視しているらしい。

 そして、ルヴェリウス王国が勇者を召喚しており、その出方が分からない以上帝国の件も現状維持というジーヴァスの説明を受け入れざる得なかった。





★★★





「ガルディア帝国の件はさすがに驚きましたね」

「そうね」


 メイヴィスはまだ何かを考えている。


「何か思い当たることでも?」

「考えてみれば200年前にバルトラウト家が皇位を簒奪してから帝国の躍進が始まった。バルトラウト家の初代皇帝ガニス・バルトラウトはジーヴァスなんでしょうね」

「初代皇帝がジーヴァス。そんな昔から」

「たいしたことじゃないわ。ガニス・バルトラウトは龍殺しと呼ばれたSS級の冒険者だった。ジーヴァスだったのなら頷ける」


 メイヴィスは当時のことにも詳しいようだ。メイヴィスのほうがジーヴァスよりもっと年上なんだろう。年を尋ねるのはタブーだが。


「たぶん、戦争になるわ」

「魔族とですか?」

「いえ、人族同士のよ」

「それはどういう?」


 メイヴィスは俺を見つめると「タツヤだってジーヴァスの言い分を信じたわけじゃないでしょう」と尋ねてきた。

「言い分というと、魔王様の人族との融和策にも役に立つとかいう、あれですか?」

「ええ、そうよ。あんなものは嘘っぱちよ。ジーヴァスの狙いは人族全体の支配。いいえ、魔族と人族の支配、この世界の支配者になることでしょうね」


 魔族も人族も合わせたこの世界の支配者。なるほど、頷ける。ジーヴァスの考えそうなことだ。初めて会ったときからジーヴァスは何を考えているか分からない不気味な奴だと感じていた。


「だから、まず人族を支配するために戦争を仕掛けるってことですか?」

「ええ、そうよ」

「だとしたら、一番の強敵はルヴェリウス王国ということになりますね」


 ルヴェリウス王国には勇者が、コウキがいる。マツリ、サヤ、カナもだ。コウキはなんと4年に一度ガルディア帝国で開かれる武闘祭で優勝したらしい。そのことにより勇者コウキの名声は高まっている。さすがコウキだと言っておこう。


「そうね」

「ですが、ルヴェリウス王国には勇者がコウキがいます。それに魔王様も賛成しないのでは?」


 まあ、俺も勇者なんだが・・・。


「ゴアギールのことならともかく、人族同士の争いにあの小娘もそこまで口を出せないでしょう。例え何か言われたとしてもジーヴァスが従うとは思えないわ。それにジーヴァスにはあまり時間がないはず」

「それはどいういう意味ですか?」

「そのままの意味よ。ジーヴァスはずいぶん長く生きている。でもね。もうそんなに時間がないのよ」


 ジーヴァスがガニス・バルトラウトだとすると少なくとも200年は生きている。普通の魔族はせいぜい人族の1.5倍程度の寿命しかないから、これは相当な長寿だ。だが、おそらくメイヴィスはもっと長く生きている。


「私には分かる。ジーヴァスが四天王になった頃から知っている私にはね。あいつの性格なら、死ぬまでこの世界の支配者になることを諦めない」

「だから戦争になると」

「ええ、それも近いうちにね。ゴアギールでも何か起こるかもしれない」

「魔王様がいるのに」

「ええ、あいつはもともと誰かの下につくような性格じゃないのよ。あの小娘やサリアナもジーヴァスの野望には当然気がついたはず。そしてジーヴァスが無理を押してでも野望を達成しようとするだろうこともね。まあ、ガルディア帝国のことはもう少し調べさせてみるわ。サリアナがなぜあそこにいたのか。ガルディア帝国で何があったのかもね」


 メイヴィスは四天王の中でも最古参だ。それなりの情報網を持っている。だか、今回のことはなぜかサリアナに先を越された。サリアナ自身がガルディア帝国へ行っていたようなのだ。

 

 俺はどう動くべきだろうか? 

 俺の目的は人族に復讐することだ。アカネのことは絶対に忘れない! 


 だが、もし人族同士の戦争になったら、そして勝手にルヴェリウス王国が滅ぶようなことになったら・・・。それはそれで、面白くない。人族の中でも特にルヴェリウス王国の奴らへは自分の手で復讐したい。


「こうなったからには、そろそろタツヤには私の目的を、なぜ私がこんなにも人族を恨んでいるかを教えてあげるわ」


 メイヴィスの目を見る。燃えるような、そう何か執念のようなものが感じられる。


「これを見て」


 メイヴィスは右手を広げる。指にはいくつかの指輪が嵌められている。すべて魔道具だ。魔法の威力上げるもの、アイテムボックス、一定のダメージを肩代わりするなんてものもある。どれも貴重なものだ。


 その後メイヴィスが俺の耳もとで囁いた言葉に俺は驚愕した。


 まさか・・・そんなことが・・・。 


「タツヤが勇者だってことにも関係がある気がするの。だからもう少しだと思うのよ」


 そうか、それで・・・。 


「ジーヴァスの野望が成功するかどうかは分からない。でも私のはね。もう少しなの。ジーヴァスがどう動くかによっては、私にとってもチャンスかもしれないわ。タツヤも協力してくれるでしょう?」

「分かりました」


 人族への復讐に繋がるのなら俺に依存はない。

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魔王も2人…とか??
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