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1-21(タツヤ).

今日2回目の投稿です。

 俺が目を開けると、青い髪に青白い肌の20代くらいの女が目に入った。美人といっていい顔立ちだが、なんと額には2本の角のようなものが生えている。肌の色といい、俺の知っている人間とは違うようだ。


「あなた名前は?」


 俺はどうやらベッドに寝かされているらしい。上体を起こすと、質問には答えず辺りを見回した。

 俺が寝かされている部屋は、全体的にあまり趣味がいいとはいえない奇妙な装飾が施された部屋だ。趣味は悪いが高級そうな部屋ではある。


 ここはどこなのだろう?

 俺は死んだはずだから、天国なのか?

 だとすると俺に話しかけてきたのは神様?

 それとも女神なのか?

 だが、そうは見えない。女神って角は生えてないよな。

 これは夢なのか・・・。

 

「お前こそ誰だ。お前は神なのか?」


 この女は、とても神には見えないが、一応俺はそう聞いてみた。


「私は神ではありません。あなたの主となったもの。名をメイヴィスと言います」


 俺の主?

 メイヴィス?


「もう一度聞きます。あなたの名は?」

「俺は・・・島津達弥・・・だ」

「シマズタツヤ?」

「シマズが性で名がタツヤだ」

「そうですか。ではタツヤ、今日から私があなたの主です」


 俺の主ってなんだ。

 外見からするとメイヴィスは神というより悪魔だ。

 もしメイヴィスが悪魔で俺が悪魔に仕えることになったとしても、こういう場合、小説とかでは契約の儀式とかがあるんじゃないのか?


「うーん、簡単に言うと、一度死んだあなたを私が蘇生したの。私が蘇生した者は私の眷属、私の配下となる。私の命令に逆らうことはできない。だからタツヤ、私があなたの主なのよ」


 俺が黙っているとメイヴィスはそう説明してくれた。

 それにしても蘇生?

 この女が、メイヴィスが俺を生き返らせてくれたのか? そういえばどこも痛くない。間違いなく俺は瀕死だったのに。いや、確かに俺は死んだ・・・はずだ。


「死人を蘇らせることができるのなら、やはりお前は神ではないのか?」

「違うっていってるでしょ。私は魔族で四天王のメイヴィス」


 魔族?

 四天王?


 メイヴィスと名乗る女は、なぜか俺を凝視している。俺の頭の中から何かを読み取ろうとしているかのようだ。


「おもしろい。これは思った以上の拾いものね。あの小娘に一泡吹かせるためのいい手駒を手に入れたわ」


 そしてもう一度「おもしろい」と言うと声を上げて笑った。


「ユキは、俺以外のやつらはどうなったんだ?」


 そうだ蘇生できるのならユキをユキを生き返らしてほしい。メイヴィスの笑い声を遮るように俺は尋ねた。


「一緒に捨てられてた死体のこと? あれらは蘇生するには時間が経ちすぎていた。蘇生できたのはタツヤ、あなただけよ」

「死体の中に、俺の大切な人がいたんだ。頼む。なんとかユキだけでも生き返らせてくれ。そうすればなんでも言うことを聞く。頼む」


 必死に頼む俺を見て、メイヴィスは、哀れなものを見るような顔をして首を横に振った。


「タツヤ、私は神ではないの。タツヤ以外は死んでから時間が経ち過ぎていて無理だったのよ」


 ダメなのか。

 やっぱりユキには二度と会えないのか。

 くそー。

 俺以外は全員死んだのか?


「死体はいくつあったんだ?」

「タツヤを含めて5つよ」


 死体は5体・・・。ユキと柊の死体の他にも2体か。

 あの光に包まれたとき、コウキのクラスの教室には、まだ10人以上の生徒が残っていた。ほかのやつらはどうなったのか?

 なにより、コウキはどうなったのか?

 あのとき俺は隣のコウキと話していた。コウキを挟んで反対側にはコウキの彼女のマツリがいた。俺の隣にはもちろんユキがいた。俺たちの後ろにもコウキの取り巻きのが女が何人かいたはずだ。それに俺たち以外にも教室に残っている生徒はいた。柊もその一人だったのだろう。


 他のやつらは、どうなったんだ?

 くそー!

 そもそもなんでこんなことに。


「一体、何が起こったのか、俺は知りたい。メイヴィスは知っているのか?」


 そうだ、なんで俺はこんな目に逢っているんだ。


「くそー、そもそも何で俺が死んだのか? ここはどこなのか? 何も分からない。ただ俺とユキを殺したやつには復讐する。メイヴィス、それが誰なのか分かるのか?」


「ええ、私は知っている」メイヴィスはそう答えると「タツヤ、あなたは、異世界からこの世界に召喚されたの。召喚したのは人族よ。私たち魔族を滅ぼすため、特殊な力を持つタツヤたち異世界人を召喚した。そして召喚魔法が不完全なためタツヤもあなたの大切な人も死んだ。要は失敗作ってことね。だから捨てられた」と説明してくれた。


 異世界から召喚? 良くラノベやアニメであるあれなのか? 


 だが・・・。


「失敗作だから・・・捨てた」


 俺は、怒りに体が震えた。

 俺もユキもそして柊も失敗作だったのだ。

 勝手に召喚して失敗作だからと勝手に捨てられた。

 こんなことが許されていいわけがない。

 腹の底から憎しみが湧いてきた。


「タツヤ、復讐したい?」

「ああ、この命にかえても、復讐・・・したい!」


 一度は失った命だ。この命をユキの復讐のために使うのになんの躊躇いもない。

 頬を何かが流れていく。

 これは、ただの涙じゃない、血の涙だ。


 気がつくと柔らかいものに包まれていた。

 メイヴィスが俺を抱きしめていた。

 おれはメイヴィスの胸に顔をうずめて泣いていた。


「タツヤ、さっきも言ったようにあなたのような異世界人は特別な力を持っている。人族はその力で私たち魔族を滅ぼすのが目的であなたを召喚した。ならば逆にその力を私のために使いなさい。そうすれば人族に対するタツヤの復讐もなされるでしょう」


 考える余地はない。


「メイヴィスが俺を蘇生し俺に復讐のチャンスを与えてくれた。どうせ一度は失った俺の命、メイヴィスの言う通りにしよう」

「フフッ、ありがとう。私の可愛いタツヤ」


 そう言うとメイヴィスは俺をもう一度抱きしめてくれた。

 勝手な理由で俺を召喚し失敗作だからとゴミのように捨てたこの世界の人族。


 俺は絶対に許さない!


 ユキを殺したこの世界の人族に必ずその報いを受けさせる。

 俺に特別な力があり、俺を召喚した目的がメイヴィスたち魔族を滅ぼすためというなら、その力を使って逆にこの世界の人族を滅ぼしてやる。

 

「メイヴィス、俺に起こったことやこの世界のことをもう少し詳しく教えてくれ」

「ええ、いいわ」


 メイヴィスの話によると、メイヴィスが俺の死体を見つけたのは、異世界召喚魔法を使える唯一の国といわれている人族の国ルヴェリウス王国のアドニア大森林の中だ。メイヴィスが見つけたとき、俺の周りには俺を含め5人の死体があったらしい。


「さっきも言った通りで、蘇生可能なのはタツヤだけだったわ。私の魔法は死んで一定の時間以内でないと効果がないのよ」


 メイヴィスの特殊な魔法により蘇生した者はメイヴィスの眷属となりメイヴィスに隷属するが、蘇生し眷属にできるのは3人・・・3体?・・・までだ。いくらでも制限なく蘇生できれば、それこそ神になってしまう。


「私は四天王の一人で魔族の名門の出だから私に仕える者は大勢いる。でも眷属は今のところタツヤだけよ。近いうちに主要な部下たちにも紹介するわ」


 今のところ眷属は俺一人だが前は3人いたこともあったらしい。その眷属たちがどうなったかは教えてもらえなかった。死んだのか、それとも眷属っていうのは解除できるのか。いずれにしてもまだ空きが二つあるってことだ。


「それと四天王ってのは・・・」

「四天王っていうのは魔族の幹部よ。一応・・・魔王の次の地位って感じかしら」


 やっぱり魔王がいるのか。だが、メイヴィスは魔王と言うとき少し言い淀んだような気がした。


「タツヤはただ一人の眷属だから伝えとくけど、私はあの小娘とはあまり仲が良くないのよ」


 小娘というのは魔王のことだろうか。


「だって、あいつ人族と和解したいなんて言うのよ」

「そ、それは・・・」


 人族との和解。メイヴィスの話によれば、魔族と人族はそれこそ1000年単位で争っているらしいから政策としてはありなのかもしれないが、それは俺も困る。俺の望みは、俺たちを勝手に召喚しユキや柊たちを殺した揚句、ゴミのように捨てたこの世界の人族に復讐することだ。

 メイヴィス以外にも魔王の融和策に反対している魔族はいる。四天王に限ると、反対2、賛成1、中立1らしい。賛成は魅惑の女王サリアナ、反対はメイヴィスと巨人の王デイダロス、そして四天王筆頭である破壊の王ジーヴァスは中立だ。メイヴィスの口振りではデイダロスは、たぶんメイヴィスに惚れているのだろう。

 いずれにしても、魔王に賛成より反対の方が多い辺り魔王の苦労が偲ばれる。メイヴィスが「あの小娘」と呼んでいたから、魔王はたぶん若い女魔族なのだろう。メイヴィスは、魔王は、まだ修行中だとも言っていたから、そのことからもまだ魔王になって間がない若い魔族だと予想できる。魔王とは、魔王しか使えない闇魔法を使える魔族であり、混沌の神バラスに選ばれた者らしい。年は関係ないのだ。

 

 「それに人族の方は争いを止める気はないみたいね。だってタツヤたちを召喚したんですもの」


 たしかにそうだ。メイヴィスの話では俺たちは魔族と戦うために召喚された。 

 だが、その異世界召喚魔法とやらは不完全なものだった。そのため俺は一度は死んだ。召喚に失敗して死体となったのは俺も含めて5人だ。残りの生徒はどうなったのか?

 召喚されていないのか?

 俺と違って召喚が成功しルヴェリウス王国とやらにいるのか? 

 だとすると、そいつらは人族のために魔族と戦うように仕向けられるのか? 

 その中にコウキもいるのか? 


「召喚に成功した同級生もいるってことだよな?」

「同級生? 召喚が成功した者たちなら当然ルヴェリウス王国にいるでしょうね。でもタツヤ、その異世界人たちが今後も無事にこの世界で生きていけるかどうかは分からないわ」


 どういう言う意味だ? 


「この世界が危険ってことか?」

「この世界が危険なのはその通りよ。この世界には私でも恐れるような魔物もいる。魔族と人族の間だけでなく同族間の争いも多い。でも私が言ったのはそういう意味ではないわ。タツヤのような異世界人の中には召喚に成功しても不思議な病に罹って死んでしまう者がいるのよ」


 病気になるのか! 召喚のときだけでなく召喚された後も危険なのか。そんな危険がある魔法を勝手に使って、そのために・・・ますますこの世界の人間は許せない!


「タツヤたちが元居た世界には魔法はないと聞くけど本当なの?」

「あー、そんなものはない。小説やアニメの世界の話だな」

「小説やアニメというのは分からないけど、とにかく魔法はないのね」メイヴィスはそう確認すると

「この世界ではすべてのものに魔力の素になる魔素が含まれている。異世界人の中には魔素に馴染めない体質のようなものがあって、それで病気になるのかもしれないわ」と説明してくれた。

「なるほど。それにしてもメイヴィスは魔族なのに人族が使う異世界召喚魔法にも詳しいな」

「異世界召喚魔法はもともと魔族と対抗するための魔法よ。それについて情報取集するのは当然でしょう? それに私は魔族の中でも特別長く生きているの。もともと人間より長命な魔族の中でも特にね。それでいろいろ知っているのよ」

「長く生きているっていったい・・・」

「あら、女性に年を訊いてはダメよ」


 メイヴィスをいたずらっぽく笑うと話しをそらしてしまった。


 とにかくコウキには生きていてほしい。コウキは親友であり、ライバルでもあった。

 俺は常にあいつに勝つことを目標にしていた。

 もし、コウキが生きていて人族のために魔族と戦うなら、それも面白い。この世界であいつと命をかけて戦えるのならそれも悪くない。復讐の他にも、そんな面白いイベントがあるなら大歓迎だ。


 コウキ生きていてくれ!


 復讐を成し遂げるためコウキと戦う。

 本当に楽しみだ、そして、この世界で勝つのは俺だ!


 この時点で、俺はすでに狂っていたのかもしれない・・・。  

 ここまで読んで頂きありがとうございます。

 本作は決して展開が早いとか、あっという間に主人公が最強になるとかいう物語ではありませんが、読み進めてもらえれば必ず面白くなると作者が保証(作者自身に保証されてもなーっていうあなた! その通りです!)します。まずはブックマークして頂き、少なくとも作者としても自信のある第4章(第4章の開始は3月、第4章の完結は4月中頃を予定。長い!)までは物語を追ってみて下さるとうれしいです。

 また、もし少しでも面白い、今後の展開が気になると思っていただけたら下記の「☆☆☆☆☆」から評価してもらえるとうれしいです。忌憚のないご意見、感想などもお待ちしています、読者の反応が一番の励みです。よろしくお願いします。

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