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1-20(タツヤ).

短いですが、重要な場面です。

夕方続きを投稿する予定です。

 教室が眩い光に包まれ俺は気を失った。


 目が覚めると俺はなにか硬いものの上に寝かされていた。絶え間なく小刻みに揺れている。俺は振動で目を覚ましたみたいだ。

 ひんやりとした外気を感じる。あたりは暗い。どうやら俺は何かに載せられて運ばれている。舗装されていない道なのか酷く揺れる。ただ速度はあまり速くないようだ。


 俺はすぐに自分の体の異常に気が付いた。

 息をするのも苦しく体中が熱い。

 口から何かが流れているのが感じられる。血だ。

 声を上げようにも力が入らず、弱々しく息が漏れる音がするばかりである。

 そう、どう考えても俺は瀕死だ。

 まもなく死ぬ。


 気がついたときからずっと道が悪いのかかなり揺れるが、もはやあまり痛みも感じない。

 仰向けに寝かされている俺に見えるのは真っ暗な夜空だけ。屋根すらない荷台に乗せられているようだ。そのうち多い茂る木々の枝や葉によって夜空が切り取られるようになった。

 聞こえてくるのは、木々のざわめきなのか?

 俺は、医者のところにでも運ばれているのだろうか?

 だが、もう手遅れだ。

 それに運ばれているのは、医者のところではないだろう。

 俺が寝ているのは、ベッドの上ではない。屋根もない荷台に直に寝かされているだけだ。医者へ運ぶのにこれはないだろう。粗大ゴミでも捨てに行く扱いだ。


 ゴトンゴトンとさっきから揺れる度に俺に何かがぶつかってくる。

 俺は、何とか首だけ、そのぶつかってくるものの方へ向ける。


「ヒーッ!」


 どこからかぼんやりと漏れてくる光で、それがなんであるかをようやく確認した俺は、恐怖で悲鳴の代わりに息が漏れる音をたてる。

 俺が見たのは苦しみに歪みカッと目を見開いた人の顔。

 明らかに死んでいるそれは、生きているときは柊将太と呼ばれていたものに間違いない。コウキと同じクラスのやつだ。不良というか、ちょっとやんちゃなやつで、クラスの違う俺でも名前は知っていた。今はやんちゃには見えない。不気味なだけだ。


 次に俺はなんとか首を反対側に向けてみた。


 予想通りそこにも死体があった。

 そしてそれは予想していた中で、もっともそうあってほしくなかった人の死体だった。

 福田由紀。ユキ、サッカー部のマネージャーで俺の彼女だ。

 ユキは間違いなく死んでいた。そう何度確認しても、間違いなく・・・。

 うれしそうなそれでいてちょっと恥ずかしそうな顔をしたユキが俺に甘えてくることはもう二度と無い。こんなことなら、もっと一緒にいてやれば良かった。格好をつけてた俺は、ことさらクールを装っていた。


 ユキ・・・。


 声を上げて泣きたいのに、ヒューヒューと息の音がするばかりだ。

 涙だけが流れている。

 なんでこんなことに。

 この怒りと悲しみはどこにぶつければいいのか?


 俺は意識を保つのも難しくなってきた。

 俺もまもなく死ぬだろう。

 ユキのところへ行くのならそれも悪くないか。


 コウキのクラスにいるとき、あの光に包まれた。

 あれが原因なのか。

 俺は、自分がなぜ死ぬのかさえ分からず死んでいくらしい。

 首を動かすだけがやっとなので、ユキと柊の死体以外にも何か乗せられているのかどうかは分からない。

 ユキは死んでしまった。

 あとはコウキがどうなったのか気になる。

 あいつなら、あいつが生きているのならなんとかしてくれるのでは・・・。

 そんなことを考えているうちに俺は意識を失った。


 次に俺が気がついたとき、俺はもう運ばれておらず、地面に寝かされていた。木々に覆われて、僅かな隙間からしか夜空は見えなかった。 少しだけ甘やかな、それでいて冷えて湿ったシンとしたような香り。森の中なんだろうか?


 ドサッっと何かが投げ捨てられたような音がして「バラク様、これで終わりですね」と言う声が聞こえた。


 バラク?

 

 「あー、10年前よりはましだったな」


 10年前?


 動物の鳴き声と歩く音がして、俺を運んでいたのはトラックではなく、どうやら馬車ようなものであるらしいのが分かった。しばらくすると馬車らしきものは、会話の主たちを乗せて去っていった。馬車っていつの時代なんだよ。


 どうやら瀕死の俺とユキたちの死体は、森のような場所に捨てられたらしい。

 穴も掘らずに死体を捨てるとは・・・。

 さっきまでユキのことろへ行くならいいか、などと思っていたが、ゴミのように捨てられて酷く腹が立ってきた。


 どこの誰か知らないが、こんな目に合わせやがって。

 俺と何よりユキをゴミのように捨てやがって、くそが!

 絶対に、許さねぇ!

 心の中で悪態をついたが、俺にできることは何も無い。


 そうこうしているうちに意識が薄れてきた。


 最後に両親や生意気だった妹、そしてユキの笑顔を思い浮かべながら・・・俺は死んだ。

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