1-2(プロローグ2).
テンプレ的な展開が続きます。作者は割と好きです。
僕は、突然ユイちゃんやクラスメイトたちと異世界に召喚された。そこで王様から魔王討伐の依頼を受けるというありふれた展開のあと、第三王女だというクラネスさんからこの国の事情を聞いた。それを纏めると、こんな感じだ。
ここルヴェリウス王国は、魔王の治めるゴアギール地域に隣接している。魔王というのは、人間に敵対している魔族の王である。つまりゴアギール地域は魔族の国だ。
ゴアギール地域に隣接しているルヴェリウス王国は、他国に比べて魔王対策にお金や人を割く必要があり、常にそれが悩みの種となっている。魔王がルヴェリウス王国を完全に滅ぼしてしまえば、他国も困るので、援助はしてくれるが、当然それは必要最低限のものでしかない。
しかし、ルヴェリウス王国には切り札がある。
それが、異世界から勇者を召喚する秘術、超級魔法ともいえる異世界召喚魔法だ。これはルヴェリウス王国だけに伝わる秘術だ。異世界から召喚された者は、通常の人間に比べて身体強化能力や魔法適性が高い。召喚された勇者たち異世界人はルヴェリウス王国の大きな戦力となった。そのおかげでルヴェリウス王国は人族国家の中で大国であり続け、魔族とのバランスも保たれてきた。
異世界召喚魔法で一度に召還できるのは通常3人から5人程度である。それが今回は9人だ。これは大成功だ。異世界召喚魔法は、召喚に必要な魔力を魔法陣に注入するのに、最低100年くらいはかかるので常に使えるわけではない。それに異世界から勝手に召喚するのだから、どうしてものときに使うのだと説明された。
魔王が現れた今が、そのどうしてものときだと判断されたのだ。
前回勇者たちが召喚されたのは、200年くらい前の話で、先代たちはすでに死んでいる。先代勇者たちは、魔王討伐には成功したようだが魔族が完全に滅びたわけではない。魔族との戦いはもう3000年近く続いている。
魔王は討伐されても、また新たな魔王が出現する。ただ、魔王死んですぐに新しい魔王が出現するわけではなく、ルヴェリス王国は安定した状況が続いていた。しかし最近になって魔物の活動が活発化し、新たな魔王が出現したと判断される状況になったので、異世界召喚魔法を発動させたのだという。
「クラネス王女。特にお話におかしなとこはないようですし、俺・・・私は魔王討伐に協力したいと思います」
御神くんはクラネス王女の話を聞いて即答した。
いや、おかしなとこだらけだと思うぞ!
御神くんはなんだかんだで、頭がいい。もっと冷静で思慮深いはずだ。なのに・・・この流れは不自然すぎる・・・。
「ありがとうございます。あのー、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「御神光輝と申します。コウキと呼んでください」
「それではコウキ様、今後ともよろしくお願いします」
クラネス王女の顔が少し赤い。この世界の基準でも御神くんはイケメンなんだろう。
「ねえ、ハルはどう思う? 今の王女様の話」
ユイちゃんが、小声で聞いてくる。
「僕はちょっと保留かな。もう少しいろいろ情報収集したい。でもとりあえず帰る方法も分からないし、当面は話を合わせて様子見かな」
「じゃあ私もそうする。ハルが一緒で良かった。ハルが一緒じゃなかったら泣いちゃってたよ」
ほかのクラスメイトたちを見ると、帰る方法がないと聞いたときから目を真っ赤にしている。当然の反応だ。御神くんや僕のほうがおかしいのだ。
僕は、自分でも思うんだけど、ちょっと覚めたところがある。小さいころは、もっと活発だったような気がする。子供の頃、同年代の子に比べて体が小さかった僕はよくいじめられていた。いや、原因はそれだけじゃなかったかもしれない。
そもそもいじめに理由なんてないのだ!
いじめといっても、ちょっとものを隠されたり、格闘技の技をかけられたり、仲間はずれにされたりとかで、不登校とかになるほどではない。先生たちは遊びの範疇くらいに考えてたと思う。でも、子供の僕にとっては結構辛かった。そんなとき、いつも僕を守ってくれたのがユイちゃんだ。
当時から可愛かったユイちゃんが僕のことを庇うから、よけい揶揄われていたのかもしれない。でも、ユイちゃんが味方してくれるのは凄くうれしかった。ユイちゃんは当時から人気者だったから、ユイちゃんが庇えば、まあその場はたいてい治まった。
でも、子供のことだから、上手くいかないときもあった。確か、僕を庇ったユイちゃんにまで殴りかかってきたやつがいた。あのときは、逆に僕がユイちゃんを庇ってちょっと怪我をした。誰だったか忘れちゃったけど、あいつユイちゃんのことが好きだったんだろうな。今なら分かる。
まあ、そんなこともあってユイちゃんに迷惑をかけないように、なるべく平凡で目立たないようにするっていうのが、僕のポリシーになった。今では、元からこういう性格だった気がするくらいだ。
「クラネス王女。さっき仰っていた、身体能力が高いとか魔法が使えるとかですが、どうやってそれを調べるのかお伺いしてもいいでしょうか?」
質問したのはやっぱり御神くんだ。これはいい質問だ。ここは当然そういう流れになる場面だ。僕は知っている。なんか水晶玉みたいので、ステータスやスキルが判るとかに違いない。
「分かりました。これから説明します。あと、できたら敬語ではなくてもっと普通にお話してください。皆様はこれから国の英雄になられる方ですし、あまり同年代のお友達もいないので、そうしていただけるとうれしいです」
「それでは、クラネス王女、お互いにもう少し、気を使わないで普通に話しましょう。王女と友達なら、俺たちもうれしいですよ」
御神くんはニコっと擬音がするような笑みを浮かべた。アニメなら歯が光っているだろう。
クラネス王女はうれしそうだ。御神くんの必殺の笑顔で、クラネス王女の御神くんに対する好感度がまた上がったみたいだ。クラネス王女、案外ちょろい。
ん?
なんか背中に寒気が・・・。
振り返ると三条さんがクラネス王女に冷たい視線を向けていた。
かなり、怖い。
「これから皆さんには、剣術や魔術の訓練をしてもらうことになります。訓練の中で皆さんの能力が判ってくると思います。それによって戦闘スタイルも決まってきます」
「戦闘スタイルっていうと、剣か魔法かってことですか?」
「はい。それに例えば、同じ剣術でも大剣、片手剣、短剣、それぞれ特徴がありますので、皆さんの持っている能力に合わせて武器を選ぶことになります」
「なるほど。魔法も同じですか?」
「その通りです。魔法にも火、水、風、土、などの属性の魔法があります。それ以外にも回復系の魔法が使える場合もあります。回復系の魔法は聖属性と呼ばれています」
やっぱり剣と魔法の世界みたいだ。
「まあ。詳しいことは、実際に訓練して理解してくほうがよさそうですね」
「ええ、あせることはありません。皆さんの能力がいくら高いといっても、まず訓練をして、その能力の使い方を身につける必要があります」
「あのー、数字で出てくるステータスとかスキルとかないんですか? それを水晶玉かなんかで調べるとか?」
僕の質問にクラネス王女はキョトンとした顔をしている。
「ステータス、スキル? 数字で出てくる? 皆さんのいた世界には、そんな便利なものがあったのですか?」
いや、日本にもそんなものない。それにしても数字で出て来るステータスとかないのかー。ってことは、極端にステータスが低いやつが、その後、最強になってとかもなしだ。もしそんな感じの展開なら主人公は僕か中島くんだろう。王道的展開ならコウキか。女の子を次々に奴隷にするようなスキルもないんだろうな。
「ハル? どうかしたの?」
「ううん、ユイちゃん、な、なんでもないよ」
「あ、もしかして使える魔法の属性が分かる魔道具のことでしょうか? それなら私が鑑定魔法を使えるので、魔道具がなくても皆さんが使える魔法の属性とかは分かりますよ」
クラネス王女がそう付け加える。
鑑定魔法はあるんだ。でも使える魔法の属性しか判らないらしい。
「俺は、クラネス王女の話は納得できると思う。俺にその力があるのなら、魔王討伐に協力したいと思う。みんなは、どうかな?」
御神くんがみんなを見回す。
「私は、コウキに従うわ」
御神くんの隣で、三条さんは当然といった顔で頷いている。
「私たちも御神くんに従うことにします」
如月さんや浅黄さんも同じみたいだ。
「俺とアカネは、もうちょっと考えたい。訓練とやらには参加するよ」
ヤスヒコとアカネちゃんも二人で相談してたみたいだ。
「僕もまだ判断するのには情報不足だと思うから保留かな。ヤスヒコたちと同じで訓練には参加する」
「私もハルと同じです」
中島くんは何も言わないが、みんなに従うってことでいいのだろう。
(2025.2.15追記)
この作品の投稿の息抜きにと書いてみた短編「乙女ゲームの断罪の場に転生した俺は悪役令嬢に一目ぼれしたので、シナリオをぶち壊してみました!」が思った以上に読まれて驚いています。その影響か本作のPVも増加しています。しかし、それがなかなかポイントに結びつかないのが悩みです。本作は決して展開が早いとか、あっという間に主人公が最強になるとかいう物語ではありませんが、読み進めてもらえれば必ず面白くなると作者が保証(作者自身に保証されてもなーっていうあなた! その通りです!)します。まずはブックマークして頂き、少なくとも作者としても自信のある第4章(第4章の開始は3月、第4章の完結は4月中頃を予定。長い!)までは物語を追ってみていただけるとうれしいです。あと、ここがよくないなどの忌憚のない感想、ご意見、などもお待ちしています。今後の投稿に活かしたいと思います。