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1-17(カナ).

 カナ視点の話を書いていたら、説明回っぽくなってしまいました。

 説明好きすぎですね。

 次話は主人公視点にもどります。


(追記)

 少しくどいと思った部分を削って書き直しました。それでも、まだ理屈っぽい回ですよね

「それで、魔道具を構成するものの最後は魔石かな」


 そう、魔導具を構成するのは素材と魔法陣と・・・あとは魔石だ。魔石は魔素の結晶だと習った気がする。魔道具に魔素を供給するのに必要だって話だった。


「最初に魔石について聞いたときから思っているんだけど、魔石は魔素を溜めておく電池のようなものだよね。僕たちを召喚した魔法陣のような超がつく大掛かりな魔道具は魔石から何年もかけて魔力を注ぎ込んで、やっと稼働可能になるらしい。だけど、そんな膨大な魔力が魔法陣のどこに蓄積されてるのかなって疑問に思ってたんだ。でも、カナさんの言ったように魔力が普通の物質じゃなくて霊的なナニカなら、それも不思議なことじゃないのかもしれないね」

「日本から人をこの世界に召喚するなんてすごいことでしょう? そんなことができるんだからサヤさんやハルの言う通りで、私たちが知っている物質とは違うナニカでもおかしくないよね」

「そういえば、異世界召喚魔法陣ような大掛かりな魔道具には魔力の充填が終わったあと実際に起動させるための魔法陣が本体とは別に設置されているらしいよ」


 へー、動かすための別の魔法陣なんてものがあるんだ。やっぱりハルくんはよく調べている。


「ねえ、ハル。魔石って魔素の結晶なんだよね。でもサヤさんの言うように魔素とか魔力が私たちがよく知っている物質とは別の霊的なナニカだとすると魔石が目に見えるっておかしくないの?」

「ユイちゃん。いい質問だね。僕もサヤさんの意見を聞いて同じことを考えていたよ」

「もーハルったら、よくできましたって言う先生みたいな顔してるよ」


 ユイさんがちょっと怒ったような顔でハルくんを睨む。睨んでも可愛い。やっぱりサヤちゃんのライバルは手ごわそうだ。


「ご、ごめん。それで、えっと、魔石は魔素が結晶化したモノというふうに習った。でも、サヤさんが言ったように魔素が霊的なナニカなら、目に見えるのはユイちゃんの言う通りでなんかしっくりこない。じゃあ、魔石は魔素の結晶じゃないのか? そうだとしたら魔石とはなんなのか?」

「そっか、魔石が魔素だけでできてるとしたら魔素を供給した後にはすべて消えてしまわないとおかしいのか・・・。少なくとも大きさが小さくなるとかくらいはあってもいいような・・・」


 サヤちゃんが何か呟いている。


 それを聞いたハルくんは「サヤさん、そうなんだよ。僕の言いたいのはそれなんだ」とまさに我が意を得たりといった様子だ。


「それで、ハル、何か考えがあるんでしょ」


 ユイさんがハルくんに続きを促した。


「魔石って魔力を供給していくとだんだん黒ずんでいくんだ。魔素を失い黒くなった魔石を僕も見せてもらったことがあるんだけどなんだか琥珀みたいというかセラミックのような質感を持ってた。ちょっと不気味な感じで何かの死骸のようにも見えた。魔石の中に高密度で魔素が含まれているのは間違いない。でも魔石は魔素だけでできてるわけじゃない。魔素を閉じ込めておける触媒のようなモノが存在するじゃないかな。黒ずんだ魔石って触媒だけになってしまった状態だと思う」


 サヤちゃんはハルくんの意見を聞いて考え込んでいる。しばらくして考えがまとまったのか、サヤちゃんは顔を上げて話し始めた。


「えっと魔石は魔鉱石の鉱山から少量産出する。でも最も一般的なのは迷宮産でしょう」

「うん」


 確かにそう習った。迷宮とは失われた文明の遺跡のような場所らしい。


「迷宮は話を聞いた限り、ぶっちゃけゲームでいうダンジョンだ。迷宮の中では魔物を倒すと魔物は消え魔石に変わる。ということは、迷宮の魔物は本物の魔物ではなく魔素か魔力で作られた魔物モドキってことだろうね。迷宮産の魔石が最も質がいいらしいよ」


 やっぱりハルくんはちょっと理屈っぽい。


「あとは、すっごく強い魔物が体の中に持っていることもあって、質としては鉱山のと迷宮産との中間くらいだっけ。ドラゴンなんかの魔石は実用性よりその希少性から価値がすごく高い。こんな感じだよね」


 サヤちゃんもよく覚えている。確かそう習った。

 体の中に魔石を持っている魔物かー。ドラゴンなんてブレスを吐いたりするらしいから、体の中に魔石があってもおかしくないのか。 


「やっぱりドラゴンとかいるんだよね。ドラゴンくらい倒せないと魔王も倒せないのかな。なんか怖いね」

「カナっちは私が守るから大丈夫だよ」


 ドラゴンと聞いて私が思わず本音を漏らすとサヤちゃんが安心させてくれた。


「で、私が言いたいのは魔石にもそんなふうに質の違いがあるんだから、ハルくんの魔石には魔素以外にも触媒みたいのが混じってってるっていう意見は納得できるかなーって思った。触媒以外にもなんか不純物がちょっとは混じっているかもね」

「そうだよねー」


 おー、ハルくんとサヤちゃんの息が合っている。横目でユイさんを見ると気のせいかいつもより目つきが鋭い。 


「それでさ。ちょうどいい機会だから・・・ちょっとハルくんの意見を聞きたいことがあるんだ」

「うん?」


 サヤちゃんいいぞ。その調子。きっかけを使ったのは私だけど、やっぱりサヤちゃんもハルくんと話したいことがあったんだ。


「魔法のことに戻るんだけど、無属性魔法って身体能力強化以外にもいろいろあるんだよね」

「うん。クラネス王女の固有魔法の鑑定なんかがそうだね。特殊魔法とも言うみたいだね」

「クラネス王女の鑑定はクラネス王女が生まれつきもっている固有魔法で、無属性の特殊魔法でもあるってことだよね」


 そこでサヤちゃんは、ちょっと間を置くと「無属性魔法って、もしかすると人がもともと人が持ってる能力を強化する魔法なんじゃないかな」と言った。


「なるほど、サヤさんはすごいね! それは僕も思いつかなかったよ。身体能力強化はもちろん、鑑定魔法や魔法探知は洞察力や第六感のようなものが強化されたもので・・・。ん? 使役魔法は・・・もともと動物と仲良くなるのが得意な人とかいると考えるのは・・・。うーん、ちょっと強引かなー」


 ハルくんはなんかブツブツ言いながら考えている。


「待てよ。だとすると、聖属性魔法も実は無属性なのかもしれないね。人や動物がもともと持っている自然治癒力を極端に強化する魔法とかね」


 サヤちゃんが、ハッとしたような顔して頷いた。うん、二人の息はぴったりだ!


「ハルの意見では聖属性なんて属性はないってこと?」

「ごめん。気に触った?」


 ユイさんとマツリさんは基本4属性魔法に加えて聖属性魔法が使える賢者と呼ばれる存在だ。


「ううん。そうじゃなくてちょっと納得できるかもって思ったの。聖属性魔法って他の魔法と同じように初級、中級、上級、最上級って別れてるんだけど、実は全部回復魔法で実質一種類しかないの。効果の程度の違いしかないんだよ。だから身体能力強化と同じで無属性って言われたほうがしっくりくるなって思ったの」


 賢者のユイさんがそう感じるなら説得力がある。


「でもハルくん、それだとクラネス王女の鑑定魔法で鑑定できたのと矛盾するね」とサヤちゃんが指摘した。

「あ、そうか。クラネス王女の鑑定魔法は使える属性しか分からない。そしてユイちゃんやマツリさんが聖属性魔法を使えることは鑑定できた。やっぱり聖属性魔法って無属性じゃないのかなー」

「そうと決まったわけでもないよ。そもそも固有魔法自体、名前の通りその人固有の魔法だからよく分からないことも多いらしいし」


 ハルくんはサヤちゃんの言葉に、そうだねと言うように頷いた。


「もう少しいろいろ考えてみるよ。とにかくサヤさんとカナさんのおかげで、今日はいろいろと考えることができて良かったよ」

「いえ、私は全然話についていけなかったし、でもサヤちゃんはハルくんと議論できて楽しそうだったね」


 サヤちゃんを見ると気のせいかちょっと顔が赤い。


「カナっち何言ってんのよ」


 そんなこんなで今日はいろいろと勉強になった。ハルくんやユイさんとはそんなに話をしたことなかったのでそれも良かった。この世界でたった9人の日本人なんだから・・・。私はひそかにユウトくんのことを思い出した。


 とにかく、サヤちゃんもハルくんといろいろ意見を交わしてまんざらでもなさそうだったし・・・ハルくんのほうだって。でもやっぱりユイさんはすごい美人だしその上ハルくんの幼馴染だ。サヤちゃんのライバルは強力だ。


「カナっち、また変なこと考えてるでしょ」

「なんでもないよ」


 私もこの世界で結婚したりするんだろうか?

 その前に魔王討伐に行くことになるのだろうか?


 いろいろ考えると怖い。でも考えることを止めることはできない。これからも今日のようにいろんなことを考えながら私たちの異世界生活は続くのだろう。

 ちょっと、説明回というか理屈っぽい回になってしまいました。にもかかわらず、ここまで読んでくれてありがとうございます。

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