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閑話1ー6.

寝坊していつもより投稿がちょっと遅くなりました。

 昼食後、僕たちは2階層の探索をスタートさせた。見学程度で引き返す予定だ。ここからはコルトたちも初めてだ。


「僕たちに戦わせてもらえないでしょうか?」


 コルトたちはそろそろ2階層の攻略を始めようか悩んでいる様子だった。S級である僕たちと一緒のときに経験を積みたいと考えたのだろう。


「いいよ」

「ありがとうございます」


 2階層で最初に現れたのは1階層と同じゴブリンだった。でも数が多い。5匹いる。

 盾役のナジルが前に出る。しかし5匹全部を引き付けるのは難しい。ナジルが相手にできなかった2匹をコルトが剣で相手にする。さすがにゴブリン程度では苦戦しない。一匹をコルトの剣で、そしてもう一匹はコルトをフォローしたイルティーカが魔法で止めを刺した。イルティーカが使ったのは水属性初級魔法の氷弾アイスバレットだ。ナジルが足止めをしていた残り3匹も同じような感じで危なげなく討伐した。


「いい連携だったね」

「ゴブリンとはいえ5匹一度に相手にしたのは初めてだったので緊張しました」


 迷宮では階層が下がるごとに段々魔物が強くなる。個体として強くなったり、さっきみたいに数が増えたりする。ある意味冒険者の訓練にはぴったりと言える。魔石も手に入るし国としてはありがたい存在だ。


 次に現れた魔物はオークだ。オークは下級魔物だがゴブリンよりかなり強い。その代わり単独で現れた。

 オークに対してもコルトたちは危なげなく討伐した。盾役、剣士、魔導士、とてもバランスがいいパーティーだ。一般には4人か5人のパーティーが多いが、なかなか気の合う仲間が見つからないと言っていた。だが今のままでも2階層なら問題なさそうである。


 オークを討伐した後、コルトとナジルの希望でクレアが剣の扱いについてアドヴァイスしている。クレアはガルディア帝国でこの世界3大剣術の一つである飛心流を正式に習っている。クレアは基本的なことからアドヴァイスしているようだ。 クレアのアドヴァイスにおかげなのか、素振りをしているのを見てもさっきより鋭くなった気がするから不思議だ。僕も剣はクレアにずいぶん教えて貰ったんだけど少しは上手になっているのだろうか。


「あのー」


 イルティーカが何か言いたそうにしている。そうか魔法についてのアドヴァイスを求めているのだろう。それならユイが・・・。


「ハルが教えてあげてよ」

「え、でも魔法ならユイのほうが」

「ううん、私のは力技だもの。ハルのほうが教えるのに向いてるよ」


 何か僕に教えられることがあるだろうか。そもそ魔力適性が高いとか魔力量が多いだとかは異世界人チートで人に教えられるようなものではない。魔王の加護はもちろん限界突破や二重発動もおそらく僕固有の能力だ。ユイでさえ限界突破や二重発動を習得することはできなかった。

 僕はセイシェル師匠の言葉を思い出す。この世界にも精密な魔法コントロールで剣と魔法を組み合わせて戦う者は少数だが存在する。確かそんなことを言っていた。正直、僕が魔法のコントロールに長けているのは、僕が異世界人で魔力適性が高いことが大きいんだと思う。だけど、この世界の人にだって魔法のコントロールは大切だ。それに、少数だけど僕と似たようなことができる人はいる。


「イルティーカはさっき氷弾アイスバレット使っていたよね。えっと、これは僕の固有魔法なんだけど、実は炎弾フレイムバレットと似た魔法なんだ」


 僕は指先に黒炎弾ヘルフレイムバレットを作り出す。そしてその大きさを自由に変えて見せる。次にどんどん大きくする。


「凄い!」


 イルティーカーが感嘆の声を上げた。黒炎弾ヘルフレイムバレット直径1メートルほどにもなっている。


「これは大きいけど大した威力はない。見かけは強そうだけどね。一応炎系の魔法なんで触れたら熱かったり火がついたりするくらいだ。でも」


 今度は黒炎弾ヘルフレイムバレットをどんどん小さくする。黒い鋼の弾にしか見えない状態になった。


「この状態になると最も硬くて威力がある。こんな風にね」

「え?!」


 僕は黒い鋼の弾のような状態になった黒炎弾ヘルフレイムバレットをイルティーカーのかなり後方からこちらに近づいていたオークに向かって発射した。


「グオッ!」


 黒炎弾ヘルフレイムバレットはオークの眉間を貫いて即死させた。限界突破はしていない。


「いつの間に・・・」

「あんなに離れているのに・・・」


 う、上手くいって良かった。思った以上に離れていたので心配だった。眉間に当たったのはまぐれだ。顔の付近に当たればいいと思って打った。一発で仕留められなくてもクレアやユイがいるので何の心配もなかったので落ち着いて打てたのが良かったのだろう。クレアとユイはだいぶ前からオークに気がついていた。


「こんな感じでバレット系の魔法は、無駄に大きく発動させるより小さく凝縮させて発動したほうがいい場合が多い。小さく発動させたほうが魔力が少なくて済むし威力も上げられる。魔力が少なく済めばその分速く発動することもできる。もちろん大きく発動して全体を牽制したほうがいい場合もある。とにかくその場に応じて適切な威力や大きさで必要最小限の魔力を使って速く発動させることが大切だ」

「魔法のコントロールが大切なことは知っていましたが、ここまで変化させられるなんて凄いです」


 正直、僕が異世界人のせいもあるけどね・・・。だけど、僕ほどでなくても魔法のコントロールを練習することは大切だ。


「それと、魔力を溜めている間に他のこと、例えば剣を使うとかもできるように訓練してみるといいかもしれない。これはとっても難しくて僕もまだまだなんだけどね」


 セイシェル師匠によれば、この世界の人にとっては身体能力強化をしながら属性魔法を使うのは極めて難しいはずだ。だけど、全く不可能とも言えない。そんな話だった。


「そんなことができるんですね」


 イルティーカはずいぶん感心してくれた。


 後にイルティーカは水属性初級魔法の氷弾アイスバレットと短剣を武器にスナイパーの二つ名で呼ばれるB級冒険者になり、イルティーカより上位の冒険者からもその精密な魔法コントロールで一目置かれる存在になるのだが、それはまた別の話だ。


 僕たちはその後、すぐに引き返した。それでもレドムの冒険者ギルドに着いた頃にはすでに7時を過ぎていた。


「さすがにちょっと疲れたよね」


 ユイの言う通りで日帰りはきつかった。


「でも、コルトたちのおかげで日帰りなのに2階層まで行けたし良かったよ」

「うん。迷宮って初めてだったし、いい経験になったよ。可愛らしいスライムをクレアがあっという間に倒しちゃったときのハルの顔も面白かったよ」


 ユイも楽しそうだ。


「入り口が大きな神殿みたいで凄かったです」


 今日の成果である魔石を換金したお金はコルトたちも含めて6等分した。


「いや、僕たちは無理に付いていっただけなのに」

「まあ、まあ、僕たちも案内してもらって助かったし」


 本当は全部あげてもいいんだけど、あまり特別扱いするのも良くないと考え直して均等割りにした。


「ハル」

「なに?」

「冒険者ギルドの職員さんが呼んでるよ」


 僕が見ると冒険者ギルドの職員さんが頭を下げた。


「ちょっと行ってくる」


 結論から言うと、朝頼んでいたアルデハイル監獄見学の話が許可されたとの話だった。冒険者ギルドがどうやって話をつけたのかは分からないが、S級冒険者の頼みを真剣に聞いてくれたようだ。


「ユイ、クレア、ちょっと慌ただしいけど明日はアルデハイル監獄に行こうと思う」

「分かったよ」

「分かりました」

「それにしてもハル、今日はイルティーカさんがハルのアドヴァイスにずいぶん感心してたね」

「いやー、僕なんか異世界人チートとエリルの加護のおかげで強くなったようなもんだから、なんか申し訳ないよ」

「ハル様!」


 あれ、なんかクレアの表情が険しい。


「ハル様が強くなったのは異世界人だからだけではありません。もちろんエリル様の加護のせいだけでもありません。もちろんそれらのおかげもあるでしょう。でも一番は、あのイデラ大樹海の中で死線を潜り抜けてきたからです。私が一番よく知っています」

「クレア・・・」

「クレアの言う通りね。また僕なんかっていうハルの悪い癖がでてるよ」

「そうか・・・」

「自信過剰も良くないけど、ハルはもっと自信を持っていいんだよ。前にも言ったでしょう」

「うん。ごめん」

「だからー、謝らなくてもいいんだよ。これからも頼りにしてるよ。ね、クレア」

「はい」


 うーん、なんかユイとクレアの連携がスムーズになってきている・・・。


 とにかく僕はまだまだ未熟なようだ。少しずつでも前を向いていこう。


 とにかく明日はアルデハイルだ。

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ハルらしくてほっこり。
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