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ありふれたクラス転移  作者: たまふひ
第1章(クラス転移)
12/207

1-12.

 地理や歴史の説明回でちょっと長いです。すみません。説明回多すぎますよね。

 でも、こういうの書くのが好きなんです。読者のことを考えないといけませんよね。


(追記)

 この回が、最も説明的と感じたので大幅に書き直してみました。少しは良くなったでしょうか?

 召喚されてからすでに4ヵ月が経過した。今日は訓練が休みの日だ。


 この世界にも曜日があり休日もある。一週間が7日であることは元の世界と同じで、それぞれの日が魔法の属性と同じ呼び名がついている。すなわち光、火、水、風、闇、土、聖である。

 今日は休日である聖の日だ。 一週間が7日で、1ヶ月が30日、1年が12か月で360日だ。かなり元の世界と近い。言葉だって日本語ではないがなぜか普通に読み書きができる。

 もちろん違いもある。初日にユイちゃんと一緒に2つの月を見たけど、実はこの世界の月は2つではなく3つある。ただ毎晩3つともが夜空を彩るわけではなく、様々な組み合わせで現れる。おそらくそれぞれの月の公転周期や軌道の傾きなどが異なっているのだろう。初日に見たのは一番大きな月と一番小さな月だ。一番大きな月は地球の月にそっくりだ。

 

 こんな風に地球とは違う部分もあるけど、やっぱり似ている部分の多さに疑問を感じる。ラノベやアニメの設定との共通点も多い。いや多すぎる。


 それと攻撃魔法などで出した氷や岩など物理的な存在は暫らくすると消えてしまうのに、生活魔法で出した水は飲料水になるし火を付ければ消えることはないなど、この世界は日本人である僕たちが転移するのにとても都合のいい世界であり、僕たちに起こったのはラノベなんかではとてもありふれたクラス転移というやつなのだ。


 それにしても、昨日の練習も全然ダメだった。魔法のコントロール技術を極める。目指す方向は見えた気がするのだがやはり簡単な道ではない。


 それに比べてユイちゃんはいろんな魔法を使いこなしつつある。


 昨日、ユイちゃんが練習しているのを見たけど、次々と氷の矢が降ってくる氷矢雨アイスアローレインや炎の柱が吹き上がる炎柱フレイムタワーはすごかった。どちらも僕の使えない上級魔法だ。


 ただ、魔法の威力といえばカナさんがNO.1だ。初めて風属性の上級より更に上の最上級魔法である天雷ミリアッドライトニングを見たときには天変地異でも起こったのかと思った。訓練によりもっと威力が上がるというから恐ろしい。

 

 こんな感じで僕はユイちゃんと差がついていく日々に落ち込み気味だ。僕の使える魔法は炎属性だけだ。生活魔法を除けば使える魔法は3つしかない。攻撃系の魔法である初級の炎弾フレイムバレットと中級の炎爆発フレイムバースト、そして防御系の中級魔法である炎盾フレイムシールドだ。適性がある魔法は生まれつき決まっていて、どうやら僕がこれ以上の魔法を覚えることはないらしい。

 

 だが落ち込んでばかりもいられない。


 剣で戦いながら、同時に魔法も使う。そのために魔法の発動速度を速め、魔法の効果範囲や威力を精密にコントロールする。簡単なことではないが、今はこの戦い方を極めることを目指している。


 何とかユイちゃんについて行きたい。


 今日は聖の日で訓練は休みなので王宮にある書庫に来ている。僕はこれまでも何度か書庫を訪れている。少しでもこの世界のことを知ろうと情報収集しているのだ。


 朝、食堂で、「今日はどうするの?」ってユイちゃんに聞かれたので、書庫に行くことを話したら、ユイちゃんも一緒について来た。


 書庫には、魔術関係の本、この世界の歴史書、地図、魔物図鑑みたいなものなど、様々な本がある。残念ながら異世界召喚魔法関連の本は無かった。やはり国家的な秘密なのだろう。


 これまでクラネス王女をはじめこの国の人たちから聞いたことがすべて真実とは限らない。クラネス王女は良い人に見える。でも見かけとは違う人かもしれないし、第三王女であるクラネスさんが必ずしも本当のことを知らされてない可能性だってある。そういえば、アルフレッド皇太子や第一王女とはお母さんが違うと言っていた。


 いずれにしても情報収集は大事だと思う。僕たちが自由に入れる書庫にルヴェリウス王国に都合の悪いことが書いてある本は無いかもしれない。それでも、この国のことや世界のことを少しでも知ることは無駄ではないだろう。


「今日はちょっとこの国の歴史っていうかそんな感じの本を読んでみようと思う」

「実用的なものばかりじゃ飽きちゃうもんね」


 僕とユイちゃんは歴史関係の本が置いてある棚のあたりでいろんな本を取り出して読んだり眺めたりしていた。


「ねえ、これって最初の異世界召喚のときの話じゃないかな?」


 ユイちゃんは読んでいる本を指さして僕を見ている。ユイちゃんが読んでいるのは、この世界の伝説っていうか英雄譚が集められている本だった。ユイちゃんが指さしている部分を覗き込んでみると、どうやら最初の人族対魔族との戦争と思われる話が書かれているようだ。僕はその部分をユイちゃんと一緒に読んでみた。


 最初に書いてある人族と魔族の戦いは約3000年前に始まった。 獣人、エルフ、精霊、悪魔、吸血鬼など多くの種族が人族側、魔族側に別れて1000年に亘って争ったと伝えられている。戦いの途中で魔族側に魔王ベラゴスが現れ、魔族側が優勢になった。もともと魔族は強大な魔力を有しており、個では人族より強力だ。これに魔王ベラゴスが加わり人族側を圧倒した。それに対して人族側は個々には弱いが協力して戦った。魔族は、もともと個では強いが魔王にこそ従うものの連携して戦うということは苦手であった。また魔族は人族に比べ数が少ない。


 魔族とは何か。魔物が何らかの方法で進化し知性を持ったものが魔族というのが一番有力な説だが、詳しいことは何も分かっていない。とにかく人間に比べると数は少ないのでそれが弱点と言えば弱点だ。だが魔族は魔物を操ることができる。


 魔王ベラゴスに率いられた魔族は、だんだんと人族を追い詰めていった。魔族側に付く種族も増えた。人族の滅亡も近いと思われたそのとき、神聖ルヴェリウス帝国に創生の女神イリスに祝福されたとされる勇者アレクが現れた。


 最初の異世界召喚だ!


 勇者アレクは、大賢者シズカイ、大魔導士ルグリと協力して魔族を押し返した。しかし、その戦いは熾烈を極め、魔王に辿り着く手前で大魔導士ルグリを失った。そして、最後の魔王べラゴスとの戦いで、大賢者シズカイも亡くなった。シズカイはありったけの魔法を使い魔力が尽きたあと、自らの身を囮にして勇者を勝利に導き亡くなったらしい。

 こうして魔王べラゴスを倒した勇者アレクだったが、彼の真の友人であり仲間であった大魔導士ルグリと恋人でもあった大賢者ジズカイの死を深く悲しみ、魔王を倒したあとの戦闘には参加しなかったと伝えられている。それどころか勇者アレクはヨルグルンド大陸の最も南に隠遁してしまったのだ。


 これが今に伝えられる伝説の第一次人魔大戦のあらましである。


「勇者アレクって恋人と親友を戦いで亡くしちゃってかわいそう」

「そうだね。僕たちは誰も死んだりしないようにしないとね」

「ハル、初代勇者アレクやその仲間たちもやっぱり日本人みたいだよ。ほら」


 ユイちゃんは挿絵みたいなのを見ている。魔王討伐の場面だろうか。勇者アレクも大賢者シズカイも黒髪だ。


「ほんとだ。なんで日本人みたいな人ばっかりなんだろう? 最初に異世界召喚魔法を使ったとき日本に繋がって、それでこの世界と日本とにパスみたいなのができたって感じなのかなー」


 もちろん、黒髪だからといって日本人とは限らない。ほかのアジア系の人かもしれない。でもやっぱり僕の目には日本人らしく見える。


「アレクって名前は洋風だけどね」


 そういえばそうだ。なんでだろ。


 よく見ると大賢者シズカイはちょっとユイちゃんに似てる。たしか、黒髪の聖女とも呼ばれて一部の国では神の使いともされているって説明された気がする。大賢者シズカイみたいにユイちゃんを死なせるわけにはいかない。場合によってはユイちゃんを魔王討伐に参加させない方法を考えるべきだろうか?


「ユイちゃん、ここにも挿絵があるよ。やっぱり黒髪だ。あ、獣人やエルフなんてのもいたのか・・・」


 ケモミミ美少女とか巨乳エルフとかもいたんだろうか。


「・・・ハル?」

「な、なんでもないよ」

「獣人やエルフとかの血を引いている人はいるらしいよ」


 ユイちゃんが僕の心の声を読んだように言った。


「ほんと?」

「うん。クラネス王女から聞いたよ。角がある人とかちょっと耳が長い人とかがいるんだって」

「そうなんだ」

「精霊とか吸血鬼とかもいたんだねー」

「いや、3000年も前の話で伝説みたいなもんだから、ここに書いてある種族全部が本当にいたかどうかは分からないよ」

「そっか、そうだよね」


 本にはその後の人族と魔族の争いについても書かれていた。


 ベラゴスのあとも何度か魔王は現れている。魔王顕現以外にも魔王ベラゴスの四天王の一人であった魔将軍ヴェスの復活事件など魔族にかかわる戦乱は頻繁に発生している。中には人族の国の王が魔族の傀儡だったなんていう事件もある。なんでも四天王の一人である女魔族が王を操ってたらしい。


 一番新しい魔王の話は200年くらい前のものだ。魔王ドラゴがシデイア大陸の大国ロタリア帝国の王を操りヨルグルンド大陸近くまで攻め込んだ30年戦争とよばれている戦乱の話だ。

 直接戦場になったのはシデイア大陸に領土を持つルヴェリウス王国、ロタリア帝国、トビアス王国の3国だ。ヨルグルンド大陸側にある国々も協力しこれを打ち破った。このとき直接魔王ドラコを倒したのは勇者ヨシネとベケイを始めとするその仲間だ。剣神ハディーンも彼らに協力したと伝えられている。


 このときの戦いが元でロタリア帝国とトビアス王国は滅びている。


「200年前に魔王ドラコを倒したのが僕たちの先代ってことかな」

「勇者ヨシネとかベケイね」

「ユイちゃん、この2つの地図を比べてみて」


 僕は書庫にあった2つの地図を広げる。


「一つが今ので、こっちはだいぶ昔の地図みたいなんだ。えっと年代からすると1000年くらい前かな。神聖ルヴェリウス帝国が今のルヴェリウス王国のことだとすると・・・」


 ルヴェリウス王国はシデイア大陸の南部とヨルグルンド大陸の北部に跨った国だ。シデイア大陸とヨルグルンド大陸は、別の大陸とされているが実際にはくびれた形の細い部分で繋がっていて陸続きだ。両大陸に跨るルヴェリウス王国は砂時計のような形をしている。


 昔の地図と今の地図を比べてみる。

 

 今のルヴェリウス王国は、ヨルグルンド大陸側である砂時計の下の部分はシデイア大陸側に比べて小さく上の部分の3分の1程度の広さしかない。

 それに対して、昔の神聖ルヴェリウス王国はヨルグルンド大陸側の方がはるかに大きく反対にシデイア大陸側は今より小さい。


「ユイちゃん、これ見て。ルヴェリウス王国の領土が今の形になったのは、魔族との戦いで滅びたシデイア大陸側のロタリア帝国とトビアス王国を吸収したからだよ。反対にヨルグルンド大陸側の領土はずいぶん減ってる。シデイア大陸で魔族の治めるゴアギール地域と接する唯一の国になったから、そっちが大変でヨルグルンド大陸側の領土を減らしちゃったのかな」

「うん、ヨルグルンド大陸側の領土が他の国に浸食されたって感じだよね。特にガルディア帝国に」

「あ、ユイちゃん、ここ見て!」


 僕は、現在のルヴェリウス王国が描かれた方の地図を指す。

 

「ルヴェリウス王国のゴアギール地域に近いとこに、ローダリアって都市がある。それに北部には他にもトビアって名前の都市もあるよ。これって200年前の魔王、ドラゴって名前だっけ、との戦いで滅びたっていうロタリア帝国やトビアス王国から来てる名前じゃないかな」

「ほんとだ! 良く気がついたね。さすがだよー」


 ユイちゃん、顔が近いよ。感心したような表情で僕を見るユイちゃんが可愛すぎる。僕はあわてて目を逸らす。


「あと、これは私でも分かるよ。えっと、私たちのいる王都ルヴェンはシデイア大陸側にあるでしょう。それで・・・ヨルグルンド大陸側にある都市アレク、これはもちろん初代勇者の名だよね」


 ヨルグルンド大陸側の都市アレク、人口では王都ルヴェンを凌ぐ大都市だと習った。


 今度は現在のルヴェリウス王国周辺を地図で確認する。


「ルヴェリウス王国がヨルグルンド大陸側で接しているのは、ガルディア帝国とエニマ王国。それとドロテア共和国ともちょっとだけ国境を接しているね」


 ちなみにガルディア帝国とドロテア共和国も北側の狭い部分で国境を接している。


 エニマ王国はヨルグルンド大陸北東の小国で、中央に広がるエラス山とその周りに広がる大森林が国土のほとんどを占めている。


「シデイア大陸側の人族国家はルヴェリウス王国だけなのにねー」

「うん」


 シデイア大陸側には今では人族の国はルヴェリウス王国しかない。ギディア山脈を挟んでルヴェリウス王国の北側にあるのが魔族の住むゴアギールと呼ばれる地域だ。


「人族国家で大国って呼べそうなのは、ヨルグルンド大陸の西部に広がるガルディア帝国と、東のドロテア共和国か、あとは僕たちのいるルヴェリウス王国ってとこだね」

 

 お互いに大国同士であるガルディア帝国とドロテア共和国の国境が、なぜガルディア帝国から見て北東の狭い部分だけかというとヨルグルンド大陸は中央山脈により東西に分断されているからである。地図で見たところヨルングルンド大陸で東西の行き来ができるのは中央山脈が途切れる南と北だけである。そして東西の大国であるガルディア帝国とドロテア共和国の南にもいくつかの国がある。

 

 あと特徴的なのは、ヨルグルンド大陸の南端にはアガイデラ山脈と呼ばれる大きな山脈とその麓に広がるイデラ大樹海があり、なんと大陸の4分の1以上を占めている。後から知ったのだがイデラ大樹海はこの世界で最も危険な場所と言われていて多くの伝説に彩られた場所だ。


 アガイデラ山脈や中央山脈それにエラス山なども含めると人間の住める場所は以外と少ない。座学でこの世界では人族や魔族よりも魔物のほうがはるかに数が多いと習ったがそれも頷ける。


 ちなみに地図には、ヨルグルンド大陸の東側に海を隔ててもう一つバイラル大陸があるが、大陸名以外は何も書かれていない。


 今日はいろいろ勉強になった。調べた限りでは、最初にクラネス王女が説明してくれた異世界召喚魔法によってなんとか魔族とのバランスがとれてルヴェリウス王国が存続しているっていうのも頷ける。でも、まだまだ情報収集は必要だ。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。


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