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Re:Creator――造物主な俺と勇者な彼女――  作者: 金斬 児狐
第一部 旅立ちと出会い編
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第二十一話 勇名轟かす湖の騎士

 頭上より雷鳴の様な速度で、俺がこの世界で造った作品の中でも最高ランクの幻想と概念が封じ込められた宝具の一つ――<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の刀身が、何の躊躇も無く造物主オレを斬り伏せようと唸り声を上げた。


 その一撃は余りにも圧倒的で、黄金の斬撃は邪魔な大気を容赦なく消し飛ばし、まるで俺との距離というものが無いかのように空間を消化しながら接近する。


 その超超高速の斬撃軌道は普通なら見る所か認識する事さえ叶わないだろうが、しかし、レアスキル<超速思考者>を獲得し完璧に使いこなせる俺には、その姿はギリギリであるが、それでもしっかりと見る事ができている。


 だがここで、とある問題が浮上する事となった。


 確かに俺は斬撃を見えているのだが、残念ながら、それだけなのだ。

 例え<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>の能力によって狂戦士の如き肉体性能を獲得している今の状態だろうとも、それを悠々と上回るほどにこの一撃は速すぎた。

 肉体が強化されていると言ってもその根幹となっているのは凡人な俺の肉体であり、自分で言うのも悲しい事ではあるが、能力で数倍になった所で高が知れているのだ。


 つまり俺の身体が加速している思考速度にまったくついてこれないというのは、どんなに頑張っても覆しようのない現実であり、その現実が俺に対して容赦なく「ま、諦めて斬られなさい」と言っているように感じられるのはなぜだろうか。

 しかしやはり、このような状況に身を置かねばならない時ほどこのレアスキル<超速思考者>の能力は微妙だと思う。レアスキル<超速思考者>はその効果が俺の内面――つまりは俺の精神にしか作用しないために、こういった近接戦闘には不向きと言わざるを得ないのだから。


 最も、このスキルは事務に最適なスキルなのは確かな事である。


 ああ、でもしかし、これで体も強化できるスキルだったら文句は無かったという事もまた、確かな事実なんだけどな……。


 と、こうやってグダグダと文句を言い続ければ幾らでも時間が潰せる自信があるのだけれど、流石に今はそのような些事に貴重な時間を費やすつもりはない。

 何しろまずは目の前の問題エクスカリバーをどうにかしなければならないからだ。


 しかし、やれやれ、加速した意識によって全てがスローモーションで映っている視界の中でも関係ないと言わんばかりに普通に動けている、桁違いの速度で猛威を振りまいている斬撃を一体どうしたらいいものなのか。

 冷や汗をダラダラと流し澄ました顔で内心かなり焦りつつも、しかし俺は今まで培ってきた経験の御蔭か不恰好に取り乱すなんて事はせずに、素早く動揺を抑え付けて冷静に今の状況を分析した。


 迫る<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の一撃を適切な防御もせずに直撃を喰らえば、例え<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>の能力によって最大限にまで強化され、この世に存在する防具の中でも最硬度となっている<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>の黒い甲冑越しにであっても、ほぼ間違いなく致死傷――まあ、俺はそれでも死なないだろうけど――になるだろう。


 使われている武器が普通の剣ならば強化された黒い甲冑で流石に防げただろうが、しかし今回は使われている武器が武器だ。

 宝具を防ぐには同じく宝具でしか対抗できず、しかも今回は宝具の中でも最高ランクの幻想と概念が封じ込められた<確約されし栄光の剣エクスカリバー>である。

 同じ宝具である<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>によって造られている黒い甲冑であっても、向こうの方が強いので威力を減少させるのが精一杯だ。


 つまり普通の奴じゃ、まず対抗できない宝具による防御不可能攻撃――というか速すぎて斬られたという事さえ認識する間もなく命を狩り取る事ができる、何とも理不尽な攻撃という事だ。

 しかもこれが<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の能力を一切使っていない、純粋なまでの物理攻撃だというのだから恐ろしい。

 能力を使った時の光景を幻視して、俺は軽く戦慄した。


 それに対して、防御する宝具を無制限、とは流石に無理だが、元々これを造った存在である俺なら<確約されし栄光の剣エクスカリバー>に対抗できる宝具は幾らでも用意できる。

 それに俺はレアスキル<超速思考者>で、普通は見えないこの斬撃を見る事ができている。

 とまあ、そこまでは対抗できる条件が揃っているのだけれど、しかし肝心の、斬撃を防御する為の肉体反射速度が全く足りていない俺の肉体では、この一撃を防ぐ事ができないという結論が簡単に導き出された。


 繰り返し情けない事を語るのだが、肉体が意思に追随できないというのは変わる事のない現実であり、俺はこのまま何もできずにセツナちゃんに斬られて終了という呆気ない決着を展開し、「ギャア、斬られたー!」と激痛の中で血飛沫と悲鳴を上げる情けない姿を晒してしまう――







 ――なんて事には、当然ならない。というか、そんな展開は俺の安っぽいながらも今まで持ち続けてきたプライドが許すはずが無い。

 それに一度自分を『本当の化物』と言っている手前、目の前のセツナちゃんの為にも、このまま呆気なく終わらせる気は毛頭ない。


 所で、俺が保険大好きな事は、何となく分かっていると思う。帆馬車に備え付けられていたのだが、結局使い所のなかった防犯装置の事を思い出してもらいたい。


 つまり何が言いたいかというと、他ならない自分の為に必ず取って置きの奥の手を残す事を心がけているという事だ。

 そして今回も奥の手は用意しているし、その能力はまさに起死回生の一手に繋がるものである。

 ただしそれには、クリアしなければならない条件が幾つか存在した。

 ちなみに条件は、俺のこだわりのせいである。


 まあ、もっとも、小心者な俺はすぐさまその能力を発動できるようにするために、発動する条件の全てを、セツナちゃんとの戦いが始まる前からクリアしている。


 手始めに腕輪状態から黒い甲冑状態に移行すると自動で発動するようになっている<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>の能力が一つ、“宝具概念能力増幅機能”を使用し、次いで<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>により精製されている黒い甲冑の能力――これも宝具には違いないので、能力効果の範囲内である――を可能な限り能力強化を施す。

 普通ならコレだけで十分なのだろうが、今回の相手は普通ではない。

 だから、出し惜しみはしなかった。


 俺は腕輪型宝具<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>に組み込まれている五番目の能力である<聖なる湖水の剣アロンダイト>を発動させる。

 すると何処からともなく一本の剣が出現した。

 どんなに使っても絶対に刃が毀れることのない、<確約されし栄光の剣エクスカリバー>と同ランクの宝剣を顕現させたのだ。


 こうして段階を経て条件をクリアした事により、奥の手は何時でも使う事が可能となった。

 しかし正直な所、この能力を使う事になるとは思っていなかった。

 そしてこの能力を使わなければならないという事はつまり、それだけセツナちゃんの能力は凄まじいという事を示している。


 力を望まない少女に無用な力を齎す“神”に、俺は何とも言いがたい怒りを覚える。だが、その感情を自ら封印した。今は前だけを見なければならないからだ。


 そして俺は、条件をクリアしているので何時でも発動できる六番目の能力を、斬られる前に発動させた。

 六番目の能力は今回造った宝具が秘める最高にして至高の宝具能力であり、それと同時にこの宝具にはこの“概念”を組み込むしかないだろうと思っている俺の“理想”の一欠片でもある。



 その能力名は、<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>。



 この能力は紹介した全ての能力を同時に発動させているという条件を満たし、なお且つ発動してから十分間だけしか持たないという俺が造る宝具には珍しい制限付きの能力だが、その特性は語った能力を全て内包しつつ、更に自らを近接戦闘に特化させる、擬似未来検出と理想動作機動と呼ばれる二つの能力の獲得である。


 詳しい説明は時間も無いので省かせてもらうが、ただ一つだけ言えるのは、この能力の御蔭で俺でもセツナちゃんと対等の速さと膂力を得たという事だ。


 そう、本当の勝負はここから始まりを告げる。

 ……はずである。

 





 ■ Σ ■






 手にしている<聖なる湖水の剣アロンダイト>が、<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>の能力によって俺の意思の速度――つまりは“理想”通りに動く黒い甲冑によって頭上に振り上げられ、迫る<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の一撃を受け止めようと超超高速で動く。


 そしてその刹那の後、


 音を置き去りにした速さで振り落とされた<確約されし栄光剣エクスカリバー>と、自分が最も力が込めやすい場所でその一撃を受け止めようとした<聖なる湖水の剣アロンダイト>との空間が遂には消失し、二つの宝剣が触れあった瞬間、過剰表現ではなく、本当に世界が揺さぶられた。


 <確約されし栄光の剣エクスカリバー>を受け止めた瞬間、俺の視線は一気に地面に向けて落ち下がった。

 俺が受け止めた衝撃に耐えきれなくて倒れたからではなく、体を斬られたからでもない。

 上からの凄まじい衝撃によって俺が踏ん張っていた足元の地面がベゴンッ! とまるで薄い鉄板をへこませた様に小さなクレーターとなってしまい、その為、足場が低くなったので自然と俺の視線は下がってしまったのである。


 地面がへこむ程の衝撃によって、ドブァアアアアッ! とここ、錬鉄場の地面の土が盛大に舞い上がり、それによって大量の土ぼこりが周囲に発生する。


 そんな中で、軋む金属と金属の悲鳴が上がり、目が眩むような火花が数瞬だけ両者の視界を真っ白に染め、そして衝突によって生じた凄まじい摩擦熱が両者の宝剣を一瞬だけボウッと燃え上げる。


 そして一瞬の無音。


 やがてようやく音が現状に追いつくと共に、先ほどの衝突に伴って発生した衝撃波と呼ぶべき暴虐の波が、周囲の全てを問答無用で蹂躙した。

 衝撃波によって周囲に立ちこめていた大量の土ぼこりは一瞬で跡形もなく霧散し、度重なる重圧な振動に揺さぶられて地面は大きく捲り上げ、それによってそこかしこに大きな穴が形成されていく。

 大人の頭ほどもある大きな岩が掘り起こされ、吹き荒れる衝撃波に乗って、全てを破壊する暴岩風となって出鱈目に飛び散っていく。

 その様子はさながら、大きな爆発が起きた瞬間のようだった。

 


 ちなみに結果的に言えば、俺は<確約されし栄光剣エクスカリバー>の一撃を受け止る事に成功した。

 全力で振り落とされた<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の一撃を<聖なる湖水の剣アロンダイト>で自分が最も力が込められる箇所で受け止めたからこそ、俺はこの場に立っていられている。

 <勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>の能力で宝剣の使い方や体の使い方、そして起こる可能性の高い未来が見えたからこそ、俺は完璧な“理想”を思う事ができたし、俺の“理想”通りだからこそこうして受け止められたのだ。

 このやり取りは俺が今持っている手札で成し得る最高のパフォーマンスだったし、これ以上の成果を望むのは幾らなんでも欲張り過ぎだと思う。


 だがそれでも俺は無傷じゃなかった。それはつまり、単にそれだけセツナちゃんの能力が凄かった――いや、凄過ぎたという事の証明に他ならない。 


 俺は衝突した時に伝わってきた衝撃によって、黒い甲冑には何の不具合が発生していないものの、しかしその中身である生身の部分――俺の両腕の筋繊維は数本ブチブチと音を立てて引き千切れ、骨には小さく罅が走った。

 そしてそれは、最終的に衝撃の全てを受け止めた両脚も同様である。


 一応、身を包み込んでいる黒い甲冑が威力を多少は殺してくれたようだし、俺の生身を狂戦士の如き肉体性能にする<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>の能力のバックアップもあったのでこの程度で済んでいるようだったが、もし、この二つの補助が無かったらと思うと、なんとも言えない寒気が背筋を走る。

 というか手足が冗談抜きで痛い、というよりも熱いのですが。


 だが、それでも今俺はこうして立っていなければならない。

 セツナちゃんの前では、少しも弱っている姿を晒すわけにはいかないし、晒すつもりもないからだ。


 セツナちゃんの全力の一撃を受け止めた黒き甲冑の姿は今尚健在であり、微動だにしていないその姿は見る者に畏怖と威圧感を感じさせる事だろう。

 そう、俺の“理想”が――意思がある限り動き続ける黒き甲冑は、今代の勇者たるセツナちゃんの全力の一撃を受けても決してその身に土を付ける事なく、そしてその身に一刀も受けてはならない。


 ――本物の化物とは化物染みただけのただの人間に悠々と、余裕綽々で勝つ存在なのだから。


 刻一刻と積み重なっていく不可視の重圧プレッシャーに耐えつつ、俺はこのまま演技し続ける。

 それが俺がすべき最善の事だから。


 兜から見える微妙な狭さのある視界の中、直ぐ近くにまで迫っているセツナちゃんの顔が驚愕に染まる瞬間を俺は見た。

 だがそれも一瞬だけで、セツナちゃんはすぐさま力を<確約されし栄光の剣エクスカリバー>に込めて、純粋な膂力で俺をこのまま封殺せんと行動に移す。

 お互いがすぐ傍で斬り合う接近戦で常に強いられる一瞬の判断は、当然ながら少しでも選び誤れば自分の命を落としてしまうものだ。圧倒的に経験が少ないセツナちゃんならば、間違った選択をする事だって多々あるだろう。


 だが、セツナちゃんのこの行動は、間違いなく正解だった。


 俺の再生力がその時のテンションに左右されるという不思議な特性があるものの、流石に一瞬で完治するわけではない。

 いまも俺の両腕両脚の筋繊維は数十本は斬れているし、骨には小さな罅がある。これが万全な状態と言えるはずも無く、剣に込められる力も本来の七割といった具合しか出せていない。

 この程度の怪我なら俺が剣を受け止めた時に驚いて距離を取ってくれていれば、すぐに治っているはずだった。


 しかし現実はそうではない。


 この選択が直感なのかセンスによるモノなのか分からないが、どちらにしろ厄介な事には変わりなく、だから俺はセツナちゃんの精確な状況判断力に小さく舌打ちした。



 グギギギギと歯を砕かんばかりに食いしばり、全身の筋肉という筋肉を総動員して俺は<聖なる湖水の剣アロンダイト>を支え上げる。

 だが無情にもギリギリと軋む音を鳴らしながら、凄まじい力が込められた<確約されし栄光の剣エクスカリバー>は徐々に、しかし確実に俺との距離を無くしていく。


 正直な所、このままではあっさり潰されると、俺が一瞬の刹那で直感するには十分な重圧がある。例え俺が万全の状態でも、今と同じ事を思ったに違いない。


 このままでは俺は車に潰された蛙のようになるのも時間の問題だろうし、というか、もう腕がプルプルしてきた。それに怪我がまだ治っていないので、ちょっと洒落にならないくらいの痛みと熱が両腕両脚を起点に、俺の全身に広がっている。

 常に力を込めなければならない今の状況のせいで、治る速度が更にガクンと落ちているようだ。


 痛みで自然と涙が出てきた。いや、本当に痛いです。


 だが、まあ、最も、俺はこのままこんな状況を甘んじて受け入れるような殊勝な心意気をしていないというか、痛いのは嫌だというか、痛みで口から気合いの言葉ではなく情けない悲鳴が出ない内に、俺は素早くこの場から脱出する事にした。


 俺はさっと剣尖を右下斜めに傾ける事で<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の力の向きを意図的に変化させ、突然の変化に身体が流れて体勢を微かに崩したセツナちゃんの一瞬の隙を見逃す事無く、陥没している地を力強く蹴り、この場から後ろに下がってセツナちゃんと大きく距離を取った。

 本来の自分では感じられない跳躍感に多少心躍るものの、その感情はすぐさま鎮火させる。


 そんな事に気を取られている余裕は、ないからだ。


「ふむ、膂力と速さはなかなかのようだな。それにセンスもいい。だが、まだまだ俺には届かないな」


 大胆不敵というか、あたかも自分にはまだまだ余裕がありますと言外に言っているのと同義なセリフを吐きだした。澄ましたような声音が、俺が吐き出したセリフの現実味をアップさせる。

 しかし無論、御存じの通り、この行動はぶっちゃけ演技、ブラフ、フェイクでしかない。少しでも怪我を回復させる時間稼ぎであり、少しでも攻撃を躊躇させる事が目的の、一種の心理攻撃である。



 ちなみに、恐るべき事にこのやり取りに使った時間――正確に言えば俺が後方に退避するまでの攻防――は、加速した体感時間ではなく本来の時間で表現すれば、僅か一秒未満というのはどういう事だろうか。



(さてと、勢いで色々言ってはみたものの、正直セツナちゃんとのガチンコバトルは能力を底上げしてても、きついんだけどな~)


 黒い甲冑に覆われながら、ふう、と俺はため息を漏らした。

 先ほどの刹那的な攻防で、既に俺の背中は冷や汗でグチャグチャだ。心臓は今にも爆発しそうなほど大量の血液を全身に供給し、大き過ぎる鼓動を耳障りに感じてしまう。

 ハッキリ言って現実的な話、<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>によって底上げされ肉体性能に加え、<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>の効果によって俺の意思――思い描く“理想”と同じ速さで動いてくれる黒き甲冑を持ってしても、俺ではセツナちゃんを殺さないように手加減しながら至近距離の物理攻撃戦を展開して勝てる気がしない。


 怪我をしてもそれを治癒させる再生能力では誰にも負けるつもりはないが、しかし腕力とか脚力とかは神酒ソーマを飲んだ五百年前から今日まで全く変化していない常人でしかない訳だし、結局のところ生身の肉体性能が装着前の数倍に引き上げられなお且つ黒い甲冑の補助があるとしても、目の前のセツナちゃんのユニークスキル<旗持ち先駆けるジャンヌ・救国の聖女ダルク>によって強化されている速さや膂力には残念ながら若干及ばないのだ。


 それに幾ら<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>の隠蔽効果によってセツナちゃんのユニークスキル<唯一なる神の声ラ・ピュセル>の能力を妨害する事により俺の考えが読まれる事は無いとは言え、残念ながら、元々の近距離戦に置いてのセンスとか決死の心構えとか、俺とセツナちゃんの接近戦に置いての地力が違い過ぎるのは否めない。


 認めよう、幾ら膨大な経験があるとはいえ、その経験を一部だけとはいえ越える天才ってのは存在するモノであり、その天才が目の前の少女なのだと。


 それに“理想”は所詮“理想”でしかなくて、俺の意識が思い描く“理想”以上の動きを黒い甲冑がしてくれる事など決してありえず、俺がセツナちゃんに近接戦闘のセンスで負けている以上、接近戦を続ければ何時か負ける可能性が高い。


 しかも発動させてから十分を過ぎれば奥の手である<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>が使えなくなるので、そうなると結果は日を見るよりも明らかだ。

 新しい作品を造る隙は、きっとない。


 そして一太刀も受けてはならないと自分が決めた条件も含めて考えると、このままでは厳しい事この上ない。


 というか、難しいというかグダグダとした考察とか抜きにして、遠距離支援特化型の俺が近距離戦闘特化型のセツナちゃんにガチンコバトルで勝てるはず無いじゃん? と正直思う。

 あれだ、ゲーム風に言えば魔術師マジシャン騎士ナイトと接近戦をするような感じ。勿論魔術師が俺で、騎士がセツナちゃんである。

 ハッキリ言おう。多少のレベル差があったとしても、近距離戦しかできないこの状況では基本的な性能の差で魔術師オレが負けるのって当然じゃね? と。


 俺はどちらかというと熱き血潮を燃え滾らせる接近戦ではなく、遠距離から強力な宝具をぶっ放したり狙撃したりとかして自分は安全に、そして敵を一方的に駆逐するのが好きだし、現に今までそうやって来た。だってその方が性に合っているから。

 そりゃ、一応近距離戦の為に“敵を見続けその行動の先を読む”技術を独学で磨き極めているし、それによって些細な動作で相手の行動を先読みする事だってできる。現に生前のラーさんの猛攻をそれによって回避できていた訳なのだし。

 しかしあくまでもそれは非常手段にすぎないし、そもそも今回の相手は規格外。俺からすれば、そんな存在と近距離戦を繰り広げなければならないという事自体が想定外の出来事なのだ。


 回避する事ができない近距離戦が在った場合には、此処に居ない、ポイズンリリーが担当する仕事なのであるからにして。


(ああ~まずった。一応、連れて来るべきだったかな~、これは)


 まさに、後悔先に立たずとはこの事か。

 自分の軽率な行動を後悔しつつ、しかし反省するつもりはない。




 ご存じの通りポイズンリリーは人間ではなく、人形だ。

 ポイズンリリーは俺の作品の中でも最高傑作の一つである機玩具人形シリーズの<最初の存在ファースト・オリジン>であり、その成り立ちは特殊ではあるが、彼女達を正確に分類すれば<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>などと同じ宝具の一つである。


 なのだから、一応武器扱い――この世界には<人形師>と呼ばれる、人形を武器に戦う輩も居る訳だし――になるので、ポイズンリリーにセツナちゃんとの近接戦闘を任せ、俺は後方から攻撃するという手段も此処に居れば採る事ができただろう。

 しかしながら、今更ポイズンリリーの手を借りるつもりは微塵も無いし、現状此処に呼ぶ事自体今は無理なので、この意味のない考えはすぐさま頭の外に押しやった。


 と、ここでふと疑問に思った事だろう。

 何故呼ぶ事が無理なのか、と。


 その答えは簡単で、今この空間が閉ざされているからだ。


(しかし、はてさて、殺さずになお且つ無傷で勝つってのはなかなかどうして、面倒な事か)


 不思議には思わなかっただろうか。

 先ほど地形が変わる程のやり取りが行われたというのに、ここに人一人来る気配が無いという事に。

 それも音が響く深夜で、ここは王族が住まう王城だ。来ない方が異常であり、異質な事なのに、誰も来ない。

 しかし俺はその原因を知っている。

 その原因は、俺にあるのだから。


(だけど、まあ、攻略方法は数え切れないほどあるんだから、まずは化物らしく受けきって見せますかね)


 腕輪型宝具<隠者の腕輪リング・オブ・ハーミット>が内包する能力は全部で七つあり、今まで説明してきたのは六つだけである。

 一つ目は自分の姿を完璧に見えなくする闇の精製。

 二つ目は黒い甲冑に変換できること。

 三つ目は甲冑状態になると発動する<侵蝕する黒き泉イロウション・スプリング>。

 四つ目は知っている人物に変装する事。

 五つ目は<確約されし栄光の剣エクスカリバー>と同格の宝剣<聖なる湖水の剣アロンダイト>を生み出す事。

 六つ目は三つの能力を発動させるという条件をクリアし、なお且つ十分間という条件が付いているモノの、自分の近距離戦戦闘能力を飛躍的に高める<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>。


 そして最後の七つ目の能力が、<不逞働く白き妖精グィネヴィア>と呼ばれる能力だ。

 この能力は自分を起点にした半径五十メートル内の空間を通常空間と隔離――つまりは閉鎖空間の精製が最大の特徴である。

 この能力グィネヴィアを使って俺はまず、戦う前にセツナちゃんと共にこの閉鎖空間に閉じこもった。

 真剣勝負を無粋な連中に邪魔されたくないという思いと、流石に勇者同士の――俺は元勇者だが――ガチンコバトルをこんな所で始めれば、聖都ギガンダルにも甚大な被害が生じると考えたからだ。


 俺は敵には容赦しないが、敵でも無いこの国オルブライトの国民をむやみやたらに殺すつもりはない。それにこんなやり取りで誰かが死んだりすれば、セツナちゃんの精神にはそれなりに大きいダメージが入るだろうと思ったからでもある。


 何と細かい所まで気が付くんだろうか、俺。と内心で自分を称賛している所で、俺は先ほどから感じていた違和感にふと気が付いた。


 即ち、何で俺が造った<確約されし栄光の剣エクスカリバー>が何の変化も無く俺を斬り伏せられそうになっていたかという事だ。


(あれ? なんでだ?)


 小首を傾げ、その謎に疑問を抱いた俺はレアスキル<断定者>でその原因を解明するべく、<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の情報を読もうとして――


「――ッアアアアアアアア!!」


 気合いの一言と共に、足元の土を散弾のように後方に飛ばしながら突っ込んで来るセツナちゃんの姿に気圧されて、回避行動を選択するしか無かった。






 ■ Σ ■






「――ッアアアアアアアア!!」


 迫るセツナの攻撃を避ける為に、咄嗟にカナメは横に飛んだ。

 狂戦士のように強化された脚力に加え、カナメの“理想”通りに動くようになっている黒い甲冑が跳躍する力を飛躍的に増幅させているので軽く跳んだように見えても、その実跳躍距離は何と十九メートルにも達していた。


 跳んでいる最中にセツナが振った<確約されし栄光の剣エクスカリバー>は目標を見失って地面を切り裂き、深い斬痕を刻み込んだ。まるで巨人がナイフを突き刺したような縦長の穴が出来上がる。


 その様子を見ながら、カナメの足がようやく地面を捉えた――その直後、セツナも逃げたカナメを捕捉して、軽く慣性の法則を無視した動きで一度は開いた空間を喰らい潰す。

 そこには研ぎ澄まされた動きでは無く、ただ本能的に動いているような荒々しさがあった。

 

(これでまだ成長する余裕があるってんだから、おっそろしいなクソッタレッ!)


 今、カナメが黒き甲冑の兜越しに見ている世界には、音速で接近するセツナの攻撃の軌道がまるで幻影のようにうっすらと見えていた。そしてその幻影をなぞるように迫る本物の攻撃に対して、カナメはその攻撃に対処するのに最適な角度に<聖なる湖水の剣アロンダイト>を傾け、一撃をこれ以上ないというほど完璧な受けをもって防ぎきった。


 受け止めた衝撃で全身に衝撃が伝播するが、しかしカナメの“理想”通りにしか動かない黒い甲冑は微かにぶれる事も無く、セツナの一撃をさも当然のように受け流す。


 痛みを噛み殺し、カナメは声を張り上げる。


「そら、どうしたどうしたッ!! 少しは本気で来たらどうだッ!!」


「言われなくとも、行かせてもらうさッ!」


 挑発され、セツナの攻撃は更に激しさを増した。


 セツナが剣を振う度にパンッ! パンパンパンッ!! と連続的に破裂音が周囲に響く。そこかしこに烈風が走り、重なり合った烈風が暴風となって周囲を蹂躙していく。それら諸現象の原因は、振われる<確約されし栄光の剣エクスカリバー>が音の壁を容易く突破しているからに他ならない。 


 だがカナメの動きもそれに負けてはいなかった。思考速度だけを飛躍的に上昇させるレアスキル<超速思考者>と、<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>の効果である疑似未来検出により導き出された、起こる確率の高い未来を兜から見える世界に投影して随時見る事で、セツナの攻撃をいち早く先読みしそれを完璧に受け止めている。


 カナメの意思――“理想”通りに黒い甲冑が動いてくれるからこそ、受け止められている。

 一秒にも満たない時間の中で両者は幾度も剣戟を交え、しかし互いに怪我ひとつ負う事はなかった。

 



 全くの互角の勝負が展開されていく。



 だが徐々に、その均衡が微かに傾きだした。セツナの攻撃が、時を追うごとに加速しているのだ。

 セツナが振っているのは一振りの聖剣だけだというのに、桁外れの速度のせいでその姿が二つにも、三つにも分裂して見えている。

 もっとも、常人には見る事すらできない速度なのだが、しかしその事実にカナメの頬を冷や汗が伝った。


(抑えていた能力が徐々に顔をだして来た……って設定は勘弁したいんですが)


 そう願うカナメの意思など無視して、セツナの攻撃速度はまた少し上昇した。それに対処する為に、カナメは精神を集中させて細く鋭く研ぎ澄まし、自らをまるで一振りの日本刀のように変革させた。そうする事によって無駄な思考を一定時間排除し、加速していくセツナの攻撃を完璧に見極めていく。

 カナメとしては、今ほど疑似未来検出を付けて良かったと思った事は無いだろう。

 もし先読み出来る疑似未来検出が無ければ、幾らカナメの鍛え抜かれた“観察眼”を持ってしてもセツナの攻撃を此処まで完璧に防ぐ事は敵わなかったはずだ。


 そう、先に答えを知っておけるほど、心強いものはない。


 それに今現在、衝突する度に<確約されし栄光の剣エクスカリバー>と<聖なる湖水の剣アロンダイト>の間で膨大な熱エネルギーが発生している。

 例えカナメと言えど、直撃を受ければ細胞が熱エネルギーによって死滅してしまう事は想像に難くない。

 そうなると、流石にどうなるかカナメにも不明であった。


 だからこそ、カナメは感謝した。


 臆病者な少し前の自分に対して、それから、自分の“理想”に応えてくれる黒き甲冑に対して。


(だから――先輩として、後輩には惨めな姿を見せる訳にはいかんでしょうよ!)


 何時まで続くか分からない剣戟の中、カナメは黒い甲冑に包まれながら小さく引きつった笑みを浮かべたのであった。

 そんなカナメの眼前には途方も無い量の魔力で編まれた極薄の刃が、八個ほど群れを成して高速で飛来して来ていた。


 その一つ一つが魔獣の中でも最高ランクの対魔力を持つ竜種の鱗や肉の護りを突破し、鋼以上に強固な身体を容易く切り裂ける威力があるというのだから恐ろしいを通り越して馬鹿げているとしか言えないだろう。

 そしてその圧倒的なまでの破壊を秘めた刃の壁という絶望的な光景は、カナメが五百年以上生きて今まで見て来た絶望的風景ベストテンには間違いなく入っていたのであった。






 ◆ Σ ◆






「ああ、そう言う事か」


 俺の“理想”通りに動く黒き甲冑は、一瞬の間に数十にも及ぶ<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の斬撃を<聖なる湖水の剣アロンダイト>を使って迎撃し、激しい火花を散らしている。


 戦闘が始まってようやく一分が経過し、この一分間で交わした攻防は既に八百以上。


 え、何この出鱈目な数。と自分を見つめ直してそう思った。

 だが直ぐにその考えを放棄して、ようやく出来た隙を逃す事無くレアスキル<断定者>で今尚超超高速で縦横無尽に動く<確約されし栄光の剣エクスカリバー>の情報を読み取った結果、一分前の疑問の解答を見つける事ができた。


「確かに安全装置を付けた覚えはなかったです、はい」


 <確約されし栄光の剣エクスカリバー>を造った当時、俺は今のように様々な経験を積んではいなかったし、何より能力自体持て余していた。

 今はそんな事は無いが、昔の作品が出てくる度に若かったと思う時が在る。

 つまり早い話、欠陥があったのだ。


「先ほどから、一体何を言っている!!」


 俺が造る作品は全て、俺に害を成せない様に安全装置を組み込んで構築されている。

 だが最初の作品である<確約されし栄光の剣エクスカリバー>にはその安全装置が組み込まれておらず、その為俺を斬るという選択が採れたってのが、疑問の答えだったのだ。


「いや、なに、余裕が在り過ぎてついつい独り言を、な」


「――ッ!」


 俺の一言でセツナちゃんから繰り出される攻撃が更に激しさを増した。当初の予定よりも大幅に逸脱した速度ではあるが、まだギリギリ許容範囲内である。

 それに俺の作戦通り怒ってくれたようで、繰り出される攻撃は若干単調なモノに変化したので何とかなる。その分速いのだが、それは仕方ない事だと諦めるしかない。

 セツナちゃんの怒涛の攻撃に俺は追随するが、しかし、攻撃が単調になったとはいえ、流石にこのようなハイペースハイスピードな攻防を続ければ<勇名轟かす湖の騎士サー・ランスロット>のリミットである十分が経過する前に俺の精神が疲れ果てて集中力を失ってしまいそうだ。

 防ぐ度に体に衝撃が走るのもどうにかしたい。


 人が思考する時に使われる糖分といった物質は既に大量に掌の“口”によって確保されているが、それでも精神的な疲れはどうしようもない。

 だから早々に終わらせなければならないのだが、さて、どうやって俺の化物っぷりを効果的に演出するかが問題なのだが……。


「……先ほどから私の攻撃を防ぐだけで、何故攻撃してこない?」


 攻撃の激しさは変わらないが、セツナちゃんはそんな問いを俺にしてきた。

 俺の答えは簡単で、


「そんなに深い意味はないが、なに、泣いている化物染みただけのただの少女の心の奥底に、溜まりに溜まった汚泥のような鬱憤を少しでも解消させてやるのも、本物の化物の仕事だというだけさ」


 ハッタリの中に混入された本音の言葉。

 ――え? と柔らかそうな唇から零れ出た呟きを聞きながら、俺の脳内では此処から無傷で勝利するプランが出来上がった。

 そしてここで俺は初めて攻撃に転じ、しかし当然のようにガードされつつも、セツナちゃんの華奢な体躯を大きく後方に押し飛ばす事に成功した。

 そしてすぐさま合掌を一つ。

 掌の間で取り込んだ物質を用いて構築するのは無論宝具で、一から考えるのが面倒なのと目的に沿った能力なので<流動する大地の巨人イブルウィエ・アレサンドゥーラ>を採用。


 一瞬でこの世界に金属製の杖――<流動する大地の巨人イブルウィエ・アレサンドゥーラ>を造り出し、俺は手に取ると同時に杖の鋭角な先端を地面に浅くもしっかりと突き刺した。

 大地は<流動する大地の巨人イブルウィエ・アレサンドゥーラ>の支配下に置かれ、音を立てながら流動し、変化し始める。


「さてと、楽しい楽しいサービスタイムはここまでだ。ここから先の全ては俺の独壇場、存分に本当の化物って存在を味わってくれやッ!!」


 通常空間から隔離された閉鎖空間の中で、俺の宣言が高らかに響いた。

  

 さてさて、実は活動報告で告知というか募集しているのですが、ここでΦさんとのやり取りを書いておきたいと思います。


 Φさんの質問

『告知についての質問です…?


まず、前提として知っておきたいのが、カナメは「どの程度のものまで」を「どの程度の情報から」創造することが出来るのか、ということです。


おそらく、相当少ない情報にカナメの妄想力を加えて、なんとなく創造しているのではないか、と想像しています。


過去、一般人であったカナメが、銃の詳細なデータ…それこそ図面がひける程に暗記しているとは思えません。

エクスカリバー等の宝具類は、妄想の産物ですし…。


某運命の正義の味方さんの「投影魔術」のように、「解析・構造把握・いろいろ把握…」といった手順と、それを為せる能力・スキルがあるのか。


または、カナメと同じような魔法が登場する、「ラノベを目指してみよう」に連載されている「白衣の英雄」の主人公のように、元天才科学者(?)であり、自らが各種兵器開発に携わり、その詳細を覚えているのか。


そこまで詳しくなくてもよいのですが、作者さまの考えるカナメの創造の力の境界が知りたいです。


上で例に挙げた投影魔術でいうと…、エアは無理だが、カリバーンクラスの聖剣なら可。意志を持つ、インテリジェンスソード(ゼロ魔のボロ剣や地下水のような)は不可。……とか』


 という質問の返答に

 金斬は、

『そうですね、説明不足の指摘痛み入ります。そして告知に付いてという部分で感謝します。


 本編でも今だ詳細な説明が成されていないカナメの能力ですが、今ここで簡単に説明しておきますね。

 

 正確に言えば、カナメは銃の詳細なデータを知っている訳ではありませんし、本文で『脳内で三次元的に基本設計を構築』と言っていますが、別に本物の設計図を空想している訳でもありません。

 これは言うなれば、カナメによるカナメ自身の為の設計図であり、彼以外には全く意味のないものでしかありません。

 エクスカリバーの指摘は大体そんな感じであります。


 それから某運命の正義の味方さんのように「解析・構造把握・色々把握……」という手順は必要としてはいません。カナメの能力は掌の口から取り込んだ物質、というか質量を使って脳内で造り上げた作品の完成図をこの世界に造り出すというモノで、ぶっちゃけ想像できるものならなんでも造れちゃいます。


 しかし、カナメが想像できないモノは何をやっても造れませんので、カナメが想像できないような――例えば私達が生活している三次元ではなく、十二次元的な何かで生活している生物といったモノなど――は基本的に無理です。


 そしてカナメの造る作品は、総じて様々な『概念』が封入されています。

 まあ、そう言うモノだからそうなる作品をカナメは造れるとでも思って下さい。


 結論、カナメが造れる作品は全てカナメの想像力を越える事は無いが、考えつくものはなんでも造る事ができます。』

 というものでした。

 そして再度Φさんの質問で

『告知について…その2


つまり、「カナメの想像できるモノならなんでも創造できる」ということですよね?


「カナメの為の設計図」であり、「他の人には意味がない」と。つまり、カナメが脳内にひいた設計図を紙に書き写したものを、他の人が見てつくろうとしても完成形(カナメ作)には至らない。


逆に言えば、現実に存在するモノが決まった仕組み・法則・原理で動いていて、それをカナメが理解していなくとも、カナメが「Aしたら(原因)Bという現象が起きる(結果)」と定義付ければ、仕組みや原理など無視して、Bという現象(結果)を起こせる、ということでしょうか。

例として、オートマチックでいえば、現実では、スライドを引き、薬室に弾を給弾し、「トリガー」を引き、撃鉄が撃針を打ち、撃針が弾の雷管を打ち、「弾が発射」という流れ・仕組みがあります。


が、カナメが創造した銃の場合、カナメが「トリガーを引く→弾が発射」と定義付ければ、内部の仕組みなどは意味のないものとなり、原因トリガーと結果(発射)だけが残る…これが「概念」という、一種の法則・定義として、カナメ作の作品には付加されるということ…?


エクスカリバーでいえば、「魔力を籠める→真名解放(名前を叫ぶ「エクス、カリバぁあああああ───!!!」)→光がびかー→魔力による斬撃(?)が出現」という法則、つまり、「概念」を、エクスカリバーの形をした剣に付加することが出来る、ということでしうか?(某運命をモデルに)

 という考えを頂きました。

 そして金斬は

『正にその通りで御座います。

 拙い文でそこまで理解してくれるとは感謝するしかないでしょうw』

 と返答した訳です。

 このやりとりは金斬の活動報告を見てああ、そうなのと納得してくださいね。


 長々とすいませんね。

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