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東日本大震災 被災地訪問記  作者: 放浪日和
8/10

2011年9年25日④  石巻市(宮城県)~相馬市(福島県)

 国道をさらに南下し、石巻市の中心街を目指した。しかし、途中から道路(国道45号線)が津波による冠水で通行止めになっていた。

 やむを得ず、案内板に示された迂回路へ。細い県道に入ったことで、道が全く分からなくなってしまった。ところどころに出る迂回車向けの看板を頼りにしばらく走り、ようやくもとの国道に戻ったが、既に石巻市の市街地は過ぎていた。わざわざ他の道から戻る必要もないと考え、今回は石巻市街は通過することに。


 その後は特に休止することもなく国道を南下し続け、道はやがて仙台市へと入っていった。陸前高田市からずっと辿ってきた国道45号は、どうやらここで終点らしい。

 この仙台市で小休止。震災直後の報道では、大小さまざまな被害が報告されていた仙台市だったが、中心街では特筆するような震災の影響は残っておらず、今回の日記の趣旨とは異なるので、報告は割愛とする。


 問題は、この後のルートをどうするか…だった。このまま南下すれば、ほどなく福島県に入る。

 浜通りの道である国道6号線を走り続ければ、例の原発事故による放射線警戒区域に近付くことになる。現在、福島原発から20km圏内が立入禁止となっているので、その後は大きく迂回して中通りへ回らなければならない。

 ならば、はじめから中通りへ向かう道(国道4号線)を走り、会津あたりを観光してから東北自動車道で帰路についた方が良いのではないか…?


…否!それでは「被災地訪問」にならないではないか。


 そう考えた私は、決心して国道6号を南下することに決めた。

 しばらく走り続けていると、道路はやがて相馬市へと入っていった。

 辺りも暗くなり、ほどよい時間なので、今夜はこの街で寝場所を探すことにした。仮にも相馬「市」なので、少しは大きな街とみた。


 …と、思いきや。

 相馬市、思ったよりもだいぶ閑静な街であった…。


 小さな繁華街が駅前にある程度の、かなり小規模な地方都市。その繁華街さえも、ある程度の時間帯になればほぼ完全なシャッター街。震災の影響を考えたとしても、あまりにも閑静過ぎる街並みだった。

 実は、職場の先輩にこの街出身の人がいるのだが、

 「俺の地元、田舎だよ~。何にもないよ!」

 という言葉を、それまでずっと謙遜だと思っていた。

 せめて、食事くらいはまともに摂りたいのだが。そして出来れば、今夜は一杯ひっかけたい気分だった。

 しかし、これ以上に国道を南下しても、この相馬市より大きな街はないと思われた。本来ならば南相馬市があるのだが、原発事故の影響であまり期待はできそうにない。


 駅前のパーキングに車を駐め、市街地を歩いて飲食できそうな店を探すことに。

前述の通り、大半が夜間はシャッター街となっていたが、しばらく歩くうちに一件の大衆居酒屋らしき店を発見。

 店に入ると、カウンターに常連らしき数人の客、座敷に団体客が1グループいる状況だった。一人客の私はカウンターへ。

 一人客としてカウンターに座ると、よく店員や他の客に話しかけられる。今回も例外ではなく、話をするうちに私がよそ者の旅行者であることはすぐに知られた。

 「まあ、(震災)ボランティアの方ですか?」

 女将に尋ねられ、私は気まり悪げに否定する。ただの野次馬旅行者だと聞いたら、地元の方々は気を悪くするだろうか。

 しかし、単なる旅行者と聞いても、女将や他の常連客の表情が曇ることはなかった。

 「確かに、震災の直後に野次馬気分で来られたら、正直不愉快ではある。しかし、さすがに半年も経てばいくらか落ち着いてくる」

 「被災地のこの雰囲気は、TVやなんかでは絶対に伝わらない。足を運んでもらって、それを実感してもらえるならば、むしろ嬉しい」

 建前もあるかも知れないが、このような優しいフォローの言葉を頂き、旅行前からあった良心の呵責が、少しだけ楽になった。

 海沿いの街だけあって、旬の魚はなかなか美味なものばかりだった。ここしばらくはコンビニ飯ばかりだったので、だいぶ箸がすすむ。そして、ついつい地酒(日本酒。銘柄は忘れた)もすすんでしまう。

 完全に復興したあかつきには、ぜひともまた訪問したい街となった。


 すっかりいい気分で店を後にした時には、だいぶ遅くなっていた。

 呑んでしまったので、今夜はもう車は動かせない。それを見越して、最大料金が設定されているパーキングに車を駐めたのだった。


 …明日は、いよいよ南相馬市に行くのか…


 シートを倒し、翌日の行動計画を考えながら、私は寝袋にもぐり込んだ。


(続く)

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