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東日本大震災 被災地訪問記  作者: 放浪日和
10/10

2011年9月26日②  南相馬市~会津若松市(福島県)

 とりあえず、どの道を通ろうとも、これ以上の南下は無理そうだということは分かった。

しかし、同じ道(国道6号線)をただ戻って行くだけではちょっと芸がない。来た時とは違うルートから帰りたいと思った私は、適当な道から中通りを目指すことにした。


 南相馬市からまっすぐ西を目指したつもりだったが、実際の道はあまりまっすぐでもなかったらしい。なかなか自分の思う方向に進んで行かない。

 そこそこ大きな道に出た、と思っても、電光掲示板に、

 「この先○kmより警戒区域 進入不可」

 なんて表示されていて、またUターンしたり。

 うねる山あいの田舎道を、ひたすら愛車で走り続けた。

 9月下旬だが、日中はそこそこ気温が上がる。エアコンが苦手な私は窓を全開にして走行していたのだが。

 途中で通った「飯舘村」が他地域(警戒区域をのぞく)と比較して、かなり放射線量が高い、ということは後から知った…。

 しばらく山道を走り続け、ようやく中通り方面に抜けることができた。

 浜通りとは違い、被災地的な雰囲気もだいぶ薄れたように感じられる。

 これで、気兼ねなくただの観光客になれる…。そう思った私は、そのまま会津若松方面へ。


 しかし…震災の影響は、中通りにまで影を落としていた。


 猪苗代湖畔を半周ドライブしてみる。秋の行楽シーズンに入りかけた今頃、ましてや天候も良いこんな日ならば、もう少し人出がありそうなものだったが、見渡した限りではわずかな釣り客らしきものが見えるばかり。ボートを漕ぐ客も、数えるほどしかいない。

 原発からは100kmほども離れているはずのこの街でも、震災による影響は否めないらしい。


 その後は鶴ヶ城(若松城)を見学。城址公園のテニスコートで、清掃作業のようなものを行っているのが見えた。地面に散り積もった落ち葉にエアーのようなものを吹き付け、一か所にまとめている。

 後から知ったのだが、これがいわゆる「除染作業」のようだ。

 しかし、素人目には甚だ疑問に思えることがひとつ。

 エアーを吹き付け、地面から剥がされた(?)放射能は、どうなるのだろうか。まさか、空中を舞うだけで放射性が失われて無害化する訳はないし…。

 地面から離れて舞い上がり…、その後は再び地面に落ちるか、空気中に飛散するかのどちらかではないのか?

 …と、すると、そもそもこの「除染作業」、意味があるのか…??

 貴重な復興費用、もっと有意義な費途があるような気がしてならないのだが。

 この「除染作業」のメカニズムを知っている方がいれば、是非とも教えて欲しいものである…。


 気が付くと、時刻は既に夕方にさしかかろうとしていた。数日間にわたった私の休暇も、本日が最終日。そろそろ帰路につかなければならない。

 会津若松市を後にし、東北自動車道を目指して出発。途中で通りかかった道の駅で、高速に乗る前の小休止。

 道の駅と言えば、地元の農産物の直売をよく行っているが。ここも例外ではなく、店頭での農産物販売が行われていた。

 これまでさんざん風評被害を受けてきたであろう、福島県産の農産物たち。しかし、旬にさしかかった梨などが、瑞々しく魅力的に見えた。被災地復興の願いの意味も込めて、何点かを購入することにした。


 道の駅を後にし、その後は東北自動車道のインターからまっすぐ帰路へ。

 3日間にわたる私の被災地訪問も、これで終了となる。

 もちろん、全ての被災地を訪れたわけではない。大なり小なり、今回の震災の影響を受けた場所はそれこそ無数にあるのだから。

 それでも、この3日間で私が見たもの・得たものは、あまりにも大きかった。

 何度でも述べるが、TV等のメディアで目の当たりにするのとは、受けるインパクトが全く違う。

 考えようによっては、価値観や人生観まで変わるのではないか…と、思うほどに。

 いろいろと思う事はあったが、ただひとつだけ、はっきりと言えること。


 …訪問して、良かった。


 ただの自己満足であることは充分に自覚しているけれど、それでもそう思えた。

 「当たり前の日常」を過ごすことができている幸せを、改めて実感できた3日間であった。


 

(終)

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