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週刊

作者: 羽栗明日

 朝起きると郵便受けに「週刊――(読めない)」と書かれた雑誌が入っていた。開けてみると中には骨のようなものが入っていたので、僕はそれを大事に保管した。翌日にも同じものが入っていた。僕はこれがなにかを知っていた。


 これは鎖骨だ。覚えている。あれは僕が大学二年生の頃の解剖実習だ。ご遺体から一つ一つ骨を剥がしていく時に、手が滑ってかたん、と地面に落ちたもの。長さは15cmほど。白くて固くて、でも軽くて、脆そうで。ギュッと握りしめたら折れてしまいそうな。例えるならそれは、小学生のときに行った沖縄の海の砂浜に流れ着いていた珊瑚の死骸だった。今僕の手の中にあるそれもテラテラ光ってはいないけど、その時の印象と全く同じだった。白くて固くて、でも軽くて、脆そうで。ギュッと握りしめたら粉々に砕けてしまいそうな。僕はよくできているものだな、と思い机の上に二個並べた。




 翌週も、そのまた翌週も。雑誌は毎週僕のもとに雑誌はとどいた。中には見覚えのあるものがたくさん入っていた。僕はそれを毎週大事に取り出すと、組合わさるところは組み合わせていった。そうして4年間近くが経過した。



 ある日のこと、僕はいつもどおり郵便受けにある雑誌を取ろうとすると、表紙に「お早めにお開けください」と書かれていた。そろそろかな、と思っていた。というより次だろうと思っていた。なかなかくっつかなくて苦労をしていたのだ。僕はそのまま部屋に持っていくと、これまでより一層丁寧に雑誌を開いた。そうして12年間が経過した。




 ある日のこと、僕はいつもどおり郵便受けにある雑誌を取ろうとすると、表紙に「より一層お早めにお開けください」と書かれていた。重さもこれまでと比べるとずしりと思い。密度が高そうだ。僕はそれを開けてしばらく眺めた。こんな状態のものはあまり見たことがないけど、それが何かはわかっていた。ぬらぬら光るそれを冷蔵庫に入れると、次にくるのが待ち遠しくなった。


5年後。


「ねえ、聞いた? 401号室のおじいさん。最近若い女の子が出入りしているの」

「見た見た。誰か知ってる? 確か結婚してなかったよね?」

「そうそう。こないだ一回すれ違って顔を見たんだけど、びっくりするくらいきれいだった。肌も真っ白で」

「そうなんだ。なんだか不気味だねえ」

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