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オモイデレシピ  作者: 澤中雅
レシピ6 ココロノリョウリ
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マチノゾンダコトバ

アクセスありがとうございます!



 ライズナー学院から徒歩五分にある料理専攻の生徒が暮らす寮には食堂以外にも調理できる場所が用意されている。

 これは共に暮らす生徒同士が日々料理の研究ができるようにと名門相応しい設備だが、思想とは裏腹に個人で利用する者が多い。

 しかしここ一週間、僅かではあるが数人で集まり利用する者が増えていた。

 休日もうら若き乙女が二人、互いの意見を交換し合い、美味しい料理を作ろうと研究していたのだが。


『うるさくて集中できない、静かにしてくれ!』


 一人の生徒が注意したことが始まり。

 今まで静かなキッチンで実習に励んでいたのに雑談が迷惑なのだが、もともと意見交換ありきな場所なので会話をしてはいけないとの規則はない。

 だから雑談ではなく意見を交換していると主張したが聞く耳持たず。

 挙げ句に劣等生が集まって何の意見だとまで言われてしまい口論となり、互いのクラスメイトが騒ぎを聞きつけた結果の大げんか。

 まあ料理人の卵だけあり暴力はなく、主張を言い合うものだったが最初の生徒が口にした言葉。


『定食屋の料理人に何を言われたか知らないが、調子に乗るな!』


 それには相手の生徒も怒りを覚え『彼を侮辱しないでください! 素晴らしい料理人なんです!』と反論。

 そのやり取りが切っ掛けとなり雑談に対する注意から話題が変わり、その料理人についての言い争いが始まった。


 劣等生の中で目立ったところでたいしたことはない。

 彼は違う、あなた達とは比べものにならないほど素晴らしい料理人だ。

 そもそもどうして理事長はあいつを特別扱いするのか?

 それだけの実力があるからよ。


 一歩も引かない口論の中、颯爽と登場する正義の騎士。

 騎士は争うみんなに名案を告げた。


『ならばキミ達の代表と彼とで料理勝負をしたらどうだろう?』


 ◇


「分かってもらえたかね?」

「お前がバカだというのは最初から知っている」

「なら結構」

「どういたしまして」


 呆れながら優介は数枚のレポート用紙を机に置いた。

 昨夜、カルロスから連絡があったものの詳しい理由を聞かされず、消灯時間だからと電話を切られてしまった。

 仕方なく早く登校して理由を聞き出した優介とソフィに、カルロスは説明ではなくレポート用紙を提示。

 それは昨日の出来事を書いたモノで何故口ではなくレポートなのか? などと追求するだけ無駄なので目を通しようやく事情を理解できた。


「つまり、カルロスさんが元凶じゃないですか」


 同じくレポートを読んでいたソフィがジト目で見つめるがカルロスは柔和な笑みを浮かべる。


「正義の騎士でボクと理解してくれるとは嬉しいね」

「こんなバカな提案をする人を他に知らないだけです」

「おっと、褒めないでくれ」

「褒めてません……。ですが昨日このようなことがあったんですか……大変でしたね」


 諦めてソフィはカルロスと共に来ていたテーラとメゾに視線を向ける。

 どうやらレポートの記載されていたうら若き乙女は彼女たちのことらしく、大事になったことを謝罪に来たようだ。

 カルロスと違った誠意ある対応にソフィは嬉しく思う。


「テーラさんがロイさんに反論するなんて。よほど優介さんを侮辱されたことが許せなかったんですね」


 なによりあの内気なテーラが首席のロイに噛みついたことは友人として嬉しい。


「だって……ユウスケさんはわたしの恩人で……なのに酷いこと言うから……」

「同感。確かにロイは将来有望な料理人、腕前も私じゃ足下にも及ばない。けど……ユウスケの料理を食べもしないで否定するなんて間違ってるわ」


 恥ずかしそうに俯くテーラの肩を叩きメゾも同じ気持ちだ。


「ユウスケは素晴らしい料理人よ。料理の腕もだけど、それ以上に人として。私たちに大切なことを……教えてくれたもの」

「メゾさん……」

「でも結果として迷惑をかけたわね。ごめんなさいユウスケ」

「ごめんなさい……」


 二人に頭を下げられるも優介はため息一つ。


「気にするな。それよりも恩人やら大切なことを教えたと言った勘違いを訂正しろ。俺はお前らが思ってるようなたいそうな料理人でもねぇ」

「はいはい。そう言うことにしておくわ」

「わたしも……です」


 相変わらずな優介に二人は安堵する。


「うんうん、美しい友情だね。ボクは感動したよ」

「カルロスさんいい話なんですから邪魔しないで下さい」

「それでだね、キミ達の料理勝負についてだが――」


「聞いてないですね……」


 ソフィの注意も無視でカルロスは両手を広げるオーバーアクション。


「僭越ながらこのボクがプロデュースさせてもらうよ! なに心配無用、もう準備は出来ている」

「「「いつの間に……」」」

「講師殿に頼んで明日の授業を変更しキッチンスタジアムで料理勝負さ! どうだい、二人に相応しい場所だろう?」

「あの、キッチンスタジアムとは?」


 首を傾げるソフィに呆れつつメゾが説明。

 学院に隣接する大きな講堂のことで普段は集会やプロの料理人を呼んで演説をする場所だが、生徒らが腕を競い合えるよう公開料理勝負も出来るという。

 ちなみにカナンも在学中ここで料理勝負を繰り広げ、最後に行ったロイとの料理勝負は名勝負と語り継がれているらしい。


「つまり学院の生徒全てがキミ達の勝負を観覧できるのさ! ふふ、明日また伝説の勝負が誕生するね。さらに――!」

「「「…………」」」


 一人熱弁を続けるカルロスに優介を除く三人が冷ややかな視線を向けていたが。


「名勝負に相応しい判定、つまり試食役には我らが敬愛する理事長、ジュダイン・ライズナー殿にお願いした!」

「「「……………………はい?」」」


 予想外の大物登場に唖然。


「もちろん了承はもらっている。昨日、騒動の後にお願いしたからね。ボクの熱意ある心が伝わって嬉しいよ」

「きっと面倒に思ったのでしょうね……」

「カルロスくん……凄い」

「ええ、凄いバカだわ」

「どうかな、ボクのプロデュースは? 我ながら素晴らしい仕事をしたと自負しているよ」

「……知らん」


 得意げなカルロスに今まで沈黙を守っていた優介がボソリ。


「いやなに、礼には及ばないよ。もともとボクの軽率な言葉が原因、これくらいは当然の――」


「そもそも、俺は勝負なんざする気はない」


「――こと……何だってぇ!」


 続く拒否にカルロスはやはりオーバーリアクションで驚いた。


「どうしてだい? 理事長殿自ら試食をする料理勝負だよ? これほど名誉なことはないんだよっ?」

「知ったことか」

「なにより……もうポスターも張っているんだよっ?」


「「「いつの間に……」」」


 自作の料理勝負告知ポスターを広げるカルロスにソフィらは冷ややかな視線。無駄に上手い絵が苛立ちを誘うが見事な出来。


「とにかく、俺の知らねぇところで勝手なことをするんじゃねぇ。勝負なんざしない、分かったならとっとと剥がしてこい。以上」


 しかし優介には関係ないこと、もう話は終わりだと言わんばかりに読書を始めてしまい、カルロスは肩を落とす。


「残念だ……非常に残念だ……」

「私も。ユウスケなら私たちに教えてくれたように、ロイにも大切な心を教えてくれると期待してたわ」

「ですが優介さんが嫌というなら無理強いは出来ません。私も彼の態度に一泡吹かせて頂きたく思いますが、そもそも料理でなんて間違っていました」

「じゃあポスター剥がさないと……カルロスくん、わたしも手伝います……」


 珍しく元気のないカルロスを慰めつつ三人も教室を出て行く。

 残された優介は四人の期待の言葉を耳障りに流していた。


 ◇


 ポスターを剥がしたところで既に遅く、料理勝負の話は学院中に広まっていた。


 学院トップの成績を収めるロイ、理事長推薦の日本の料理人優介との公開勝負になれば誰もが興味を持ち、どちらが勝つかと持ちきりだ。

 それでも渦中の優介は無視を決め込み、カルロスらもする気がないとの主張を説明して回り続けたが、結果として優介が逃げたと噂が飛び交う始末。


「みなさんバカですか!」


 その為か帰宅しようと駐車場に向かうソフィは不機嫌に眉をひそめていた。


「優介さんは巻き込まれただけ、なのに逃げただなんて!」

「なぜお前が苛立つ」

「あなたが怒ろうとしないから代わりにです!」

「それはご苦労なことだ」

「どういたしまして!」


 自分の陰口でも余裕な優介にもソフィは早足になる。


「ちょっといいかな」


 二人を呼び止める人物。

 聞き覚えのある不快な声にソフィは苛立ちを露わに振り返った。

 予想通り苛立ちの元凶、ロイ・シュタイナーが柔らかな笑みを浮かべて立っている。


「話がある。少し時間をもらえないだろうか」

「少しもありません。お引き取り下さい」

「……彼女は何を怒っているんだい?」

「俺の代わりを勤めているそうだ」

「よく分からないな。まあいいユウスケ・ワシザワ、着いてこい」

「だからあなたに用はないと――」

「いいだろう」

「優介さんっ?」


 勝手に話を進めるロイに叫ぶソフィだが、素直に従う優介に目を丸くしてしまう。


「どうしたんですか? いつもの優介さんなら『俺に用はない』とか『テメェが着いてこい』とか言うのに」

「……本人の前で妙なものまねをするな。まあ話しくらいは聞いてやってもいいだろう。以前と違い一人で来たようだしな」

「つまり私はお留守番ですか」

「理解が早くて助かる。良い子にして待っていろ」

「……分かりました」


 頭をポンと叩かれ渋々とソフィは頷く。


「でも子供扱いは止めてください。言おう言おうと思っていましたが、私は優介さんより二つもお姉さんなんですからね!」


 ◇


「ここでいいか」


 一般校舎と調理校舎に通じる遊歩道でロイは立ち止まった。


「わざわざ呼び出してすまない。どうやらボク達は注目されていて、ゆっくりと話しもできないから」

「気が合うな。静かなのは賛成だ」


 数メートル離れて優介も立ち止まり苦笑する。


「それで、呼びに来てまで何の話だ」

「分かっているだろう。料理対決のことさ」

「俺はする気はない」

「知っている。みんなキミが逃げたと噂しているからね」

「なら話すこともないだろう」

「でも本人の口から理由が聞きたくてね。どうしてボクと勝負をしない?」

「必要のない勝負だ」

「それは理由になってない」

「うぜぇ……」


 ロイの問いに優介は面倒げに息を吐く。


「理由が欲しいなら噂通りだ、これで満足か」


 ロイは唖然となり、嘲笑した。


「なるほど! つまりキミはボクが怖くて逃げたと」

「ああ」

「実に傑作だ! 勝負をする前に敵前逃亡だと……いや、英断だと褒めてあげれば良いかな」

「好きにしろ」

「そうかそうか……一月この学院でフランス料理を学び、いかに自分が場違いな場所にいるかと勉強したんだね。残念だよ、キミにはボクが教えてあげたかった」

「……うぜぇ」


 苛立ちを吐き捨てる優介だが、敗北宣言に機嫌を良くしたロイは聞こえていないようで悦になり続けた。


「勉強ついでに教えてあげよう。キミは理事長の料理を食べたことがあるかい?」

「ねぇよ」

「なら機会があれば食べてみるといい。彼の料理は実に素晴らしい。鮮麗された技術、食を超えた芸術的な演出、そして何より味! まさにフランス料理の素晴らしさを体現したような料理だ!」

「……そのようだな」

「この学院に入学した時、ボクは初めて理事長の料理を食した……あの時の感動を忘れない。それまでボクの父こそ世界一の料理人だと信じていたが次元が違う!」

「…………」

「ボクは実感した、フランス料理こそ世界一の料理だと。そしてジュダイン・ライズナーこそ世界一の料理人、ボクは彼を尊敬し、いつの日か追い越そうと――」


「テメェはバカか」


 不意に演説を遮るように優介が笑い、上機嫌だったロイの口が閉じられた。


「……なんだと?」

「どいつもこいつも世界一と面倒な」


 更に嘲笑されロイは怒りを露わに問いかける。


「ならばキミは和食が世界一だと言うのか?」

「間違ってはいねぇな」

「ふふふ……どうやらまだまだ勉強不足か。いいだろう、そこまで言うなら証明しろ! キミの言う和食が世界一の料理だと!」

「誰もそんなこと言ってねぇだろ」

「なんだ、また逃げるつもりかっ!?」

「テメェこそまた理由が欲しいか」

「キミは……ボクをバカにしているのか!」

「バカとは言ったな」

「ふざけるな……っ!」


 憤慨しギラギラとした目で睨みつけるロイに対し、優介は面倒げな目をしたまま反らさない。

 いつまでも続くと思われたにらみ合いは優介のため息により終わりを迎える。


「用が終わったなら行くぞ。二歳上のお姉さんを待たせているんでな」

「キミはどこまで……ボクを怒らせれば気が済むんだ!」

「あいにくだが、テメェよりソフィの方がよっぽど怖ぇ」


 もう用はないと元来た道を戻り、背後でロイが叫び続けるも無視。


 ――だが


「ソフィか」

 不意に震えた携帯電話を取り出し、催促のメールだと思いつつ目を通す優介の瞳が開かれて。


「ようやく……か」


 文面を読むなり身を翻す。


「いいだろう。テメェの言う世界一の料理とやらを見せてやる」

「なんだと……?」


 突然の意思変更に訝しむロイだが優介は気にした様子もなく上機嫌に笑った。


「俺は今すこぶる機嫌が良い。テメェの望みを叶えてくれたあいつらに感謝しろ」


 ◇


「ホントにロイと勝負するのっ?」


 同日の夕食中、昨日の噂が現実になったと知り、カナンはテーブルを叩きつけ優介に詰め寄った。


「食事中に立つんじゃねぇ。行儀悪い」

「ゴメンなさい……じゃなくて! なんで? アナタ料理勝負はしない主義じゃなかったのっ?」

「誰もそんなこと言ってねぇ」

「じゃあどうしてワタシとはしなかったのよ!」

「さあな」

「ソフィ~」


 端的な返答で会話にならずカナンは助けを求めるが小さく首を振られてしまう。

 ソフィもまた戻ってきた優介に『料理勝負をすることになったらしい』とまるで他人事のように事情を聞いたが、詳しい理由は教えてくれず徒労に終わっている。


「優介さんは意地悪ですからね。聞くだけ無駄です」


 お陰でソフィの機嫌はすこぶる悪い。


「さすが二歳上のお姉さんだ。妹と違い心が広い」

「……やっぱり意地悪です」

「なんのこと……?」


 先ほどのやり取りを知らないカナンは二人の会話について行けず首を傾げるばかり。


「……まあいいわ。ユウスケ、明日は特別に応援に行ってあげる」

「仕事をさぼるな」

「おあいにくさま、明日はオフよ」

「学院にはカルロスがいるぞ」

「な、何とか会わないようにするわ」

「優介さんは意地悪ですが私も応援してあげます」

「応援もなにも明日は理事長のバカげた提案で全校生徒が見るだろ」

「ですから、クラスのみんなで応援します。フレーフレー、優介さんって。テーラさんも精一杯応援してくれるそうですよ。良かったですね」

「……なぜ怒る」


 先ほどより二割増しでトゲのあるソフィに訝しむ優介ばかり。


「そういえばテーラの探している店は見つかったのか」

「いいえ。十年前のことですし、記憶も曖昧みたいで難航しているみたいです」

「……なんの話?」


 またまた置いてけぼりのカナンが尋ねればソフィが説明してくれる。


 クラスと打ち解けたことで余裕の出来たテーラは十年前にフランスへ訪れ、料理の素晴らしさを知った思い出の店を探しているとのこと。

 自分の原点でもある料理を改めて食べてみたいのだが、幼少の記憶のため場所を思い出せないらしい。


「私も協力してあげたいのですが何せお店の名前も町も、料理さえも分からないらしくて」

「……ホントに難しいわね」


 そこまで分からないのであればカートレット家の力を使っても無理な話。

 だがカナンもソフィも念願を叶えてあげたい気持ちだ。

 二人もまた、思い出の料理によって救われ、こうして姉妹として二人でいる。

 故にカナンの知らないところでソフィは以前優介にお願いした。ココロノレシピなら何か分かるかも知れないと。

 だが断られている。

 ココロノレシピは思い出のレシピと料理人の心、後は調理中のビジョンがぼんやり見えるくらいなので、特定の店を調べることは不可能。

 また顔を知らない料理人を見つけることも不可能。

 挙げ句に『俺は探偵じゃねぇ』と怒られてしまった。


「でも何とかして見つけてあげましょう。ワタシも力を貸すわ」

「ありがとうございます、カナン。優介さんも手伝ってくれますよね?」

「気が向いたらな」

「よろしい」

「あのさ……ソフィ。あの態度の何がよろしいの?」

「カナン? 優介さんのああいった台詞は了解の意味があるんですよ。優介さんは意地悪な照れ屋さんですからね」

「誰が照れ屋だ」

「意地悪は否定しないのね……それよりユウスケ。どうして勝負する気になったか知らないけど、ロイを舐めない方が良いわ」


 話題を戻しカナンが真剣な表情で忠告する。


「あいつは嫌味な奴だけど腕は本物よ。確かに対戦成績ではワタシの方が上、でもそれは畑違いな料理だったからに過ぎないの」

「どういうことです?」

「……得意料理の問題。ワタシが師匠に教わった料理は主にスイーツ系、だからデザート勝負で負けたことはない。でもロイは万能、特に短時間で調理を仕上げる技術は……悔しいけどワタシより上」


 その言葉にソフィも息を飲む。

 自信過剰なカナンですら負けを認めるほどのロイの料理と、優介は勝負することになっている。

 果たして勝つことが出来るか?

 いや、問題ないだろう。


「だから気を引き締めて――」

「ごちそうさま」

「てぇ! 聞きなさいよ!」


 緊迫した空気でも優介は相変わらずなマイペースで食器を流しに運んでいた。


「ワタシがせっかく心配してあげてるのに――」

「いらぬ心配だ」

「アナタねぇ……っ!」


 端的な返答にカナンが拳をワナワナ震わせるも


「なら心配せずにいましょう」

「えぇっ?」


 ソフィの同意に唖然となってしまう。

 カナンの頭を優しく撫でながらソフィは優介に微笑みを向けた。


「明日は安心して応援しますね」

「デカイ声を出すんじゃねぇぞ」


 返答する優介も微かな笑みを浮かべていて。

 その微笑にソフィは無条件で確信できた。


 優介が負けるはずないと――恋と愛が信頼しているように。



 そして翌日、優介とロイの公開料理勝負が幕を開けた。




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