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オモイデレシピ  作者: 澤中雅
レシピ3 カタリベオハギ
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現在編 ソノコロ

アクセスありがとうございます!



「こんちわ~」


 本日休業の張り紙があるにも関わらず日々平穏に来客が。


「あら、綿引琢磨ではありませんか」

「どうしたの? 今日は休みだよ」


 厨房から愛と恋が顔を出す中、琢磨はいつもの爽やかな笑顔を向けた。


「知ってる。リナちゃんから聞いてるよ? 今日は大掃除してるんだよね」

「そうなんです。恋が余計な約束をしてしまったので」

「あんたも了承したじゃない!」

「本当なら今頃ストーキングしているのに……」

「何しようとしてんのよ!」

「ですが優介さまとの約束を破るわけにもいかず、こうして良い子にお留守番です」

「良い子はストーキングしないわよ……で、それがどうしたの?」


 軽快なやり取りを見せる恋愛コンビに笑いを堪え、琢磨は上着を脱いだ。


「女の子二人じゃ大変だろうと思って手伝いに来たんだ」

「ですが……あなた部活はいいのですか?」

「今日は自主参加だから平気。それにいつもリナちゃんがお世話になってるし、彼氏としては少しでもお礼がしたいわけで」

「……さすがリナの彼氏が務まるだけあります。実に出来た彼氏」

「だよね~。じゃあお言葉に甘えようかな」

「その前に何か食べますか? 腹が減っては戦は出来ぬ。わざわざ手伝いに来た方にお持て成しも無くは失礼ですから」

「でも厨房使えないじゃん。せめて何か飲んでから――」


「――理不尽じゃないっすかねっ?」


 手厚い歓迎を受ける琢磨にトイレのドアが開き現れたのは孝太だった。


「白河? お前も手伝いに来てたのか」

「使えないのに突然現れてトイレ掃除がしたいと叫ぶもので」

「コータって昔から変な子だよね」

「やっぱ理不尽っすね!」


「「トイレブラシ振り回さない(でください)」」


「あ……はい」


 恋愛コンビの指摘に素直に従いブラシを片付けゴム手袋を外す孝太に琢磨が歩み寄る。


「白河がトイレ掃除好きとは知らなかったぞ」

「信じるなよ……俺は脅迫屈しただけ」

「脅迫?」


 首を傾げる琢磨に孝太はスマホを取り出しラインを開く。

 そこには朝八時ちょうどに、これまた恋と愛から同時にラインが届いていて――


『愛と二人っきりで掃除なんてありえないから来なさいよ。来なかったら飛び蹴りね』


『恋と二人で掃除など虫唾が走るので今すぐ来るように。拒否すれば鼻山葵の刑です』


 似た内容が書かれているが後半はある意味違うも確かに脅迫。これにはさすがの琢磨も笑えなかった。


「んで、来てみりゃゴム手袋とブラシ渡されてそのままトイレに押し込まれたんだぞ? これ理不尽じゃね?」

「それでも真面目に掃除する白河は凄いな」

「掃除してる間に言い争い聞いて事情を把握したからな……鷲沢がらみで機嫌損ねてる二人は刺激しないほうがいい」

「お前が言うと説得力あるよ……」

「それより料理修行でも彼女が男と二人で遠出してんのに、自主的に掃除手伝うってどんだけお人好し――ぐべらっ!」


 饒舌に語っていた孝太の即頭部に厨房から恋が投げたペットボトルが直撃。


「そんな心配意味ないからよこのバカコータ!」


「いや……冗談だってあひん――!」


 起き上がりつつ言い訳するも、愛に踏まれて沈黙。


「優介さまを愚弄する暇があるならテーブルを動かしてください。綿引琢磨、この使えないゴミのお手伝いを頼みます」


 そのままペットボトルを渡して厨房に戻っていく。


「とまあ宮辺と愛ちゃんの言うように鷲沢だから安心できるんだけど……もしかして白河はバカなのか? さっき自分で刺激するなって言っといて……」

「言うな……自分で認めるともうダメな気がする……」

「もう手遅れだろ……ところで」


 呆れつつ孝太に手を貸し琢磨が改めて口を開く。


「さっき遠出って言ったけど、白河はどこ行ったのか知ってんの? リナちゃんは聞くの忘れてたみたいだけど」

「ん? まあおおよそ」


 立ち上がり服のほこりを払いながら孝太は厨房に目を向ける。

 モップがけの準備で恋と愛の姿はないが苦笑した。


「あの二人は気づいてなかったみたいだけど、リナちゃんの夢を考えりゃ料理修行で連れてくとこなんてあそこしかないだろうし」



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