プロローグ リナノサケビ
レシピ3の始まりです!
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季節は春。
撫子学園も入学式を終えて新たな顔ぶれも増えてまた季節を一巡りする。
しかし島の顔ぶれが変わろうと日々平穏は相変わらず。
強いてあげるなら店主の優介と従業員の恋が高等部二年生になり、もう一人の従業員の愛が高等部の校舎に通っているくらい。
四月の半ばを過ぎた土曜日も元気に営業中、お昼のラッシュを終えて一息つく間もなく優介は仕込みのチェック、恋はつり銭の確認、愛は備品チェックと客数関係なく忙しい。
特に月末からは大型連休が始まり、日々平穏でも五本の指に入る稼ぎ時。
その調整も忘れない。
「恋、月末の仕入れはどうなっている?」
ガシャガシャ
「確認済みー」
ガシャガシャ
「愛、連休中の休暇についてだが……」
カチャン、ガシャガシャ
「問題ありません。変わりに連休前に多く休みを取らせていただきますので」
カチャン、フキフキ
「さすがに連休中は俺だけで厨房を回せないから助かる。だが無理はするな」
フキフキフキ
「お心遣い嬉しく思います」
フキフキフキフキ……
「後は使えねぇ白河を――」
「うにゃぁぁぁぁぁぁ――っ!」
シフト調整をしていた優介の声を遮る奇妙な悲鳴。
「……あいつの予定なんぞどうでもいいか」
「無視された!」
それでも平然と続ける優介に驚きの悲鳴。
「そーそー。コータに予定あるわけないし、全部入れちゃえば?」
「恋ちゃん先輩までっ?」
「ですね。普段から使えない孝太さんに優介さまがお心使いなどもったいないです」
「愛ちゃんまでもっ? ていうか、考ちゃん先輩可哀そう!」
「…………うるせぇ」
度重なる悲鳴という名の突っこみにようやく優介が視線を向ける。
「いいからさっさと仕事しろバカ弟子」
「してるもん! ほら見てこのお皿、綺麗になってる!」
洗い終えたお皿を誇らしげに掲げるのは鳥越リナ。
これも料理修行の一環、調理する優介の隣りで真面目に洗い物をする日々。
ずいぶんと手は荒れてしまったが修行の成果もあり戦力になる洗い物マスターとなっていた。
「じゃなくて! どーしてリナお皿ばっかり洗ってるのっ?」
「グラスも洗ってるだろ」
「そーじゃなくて! 洗い物ばっかりじゃなくて他の仕事もしたいの!」
「ならトイレ掃除でもしてろ」
「そーでもなくて!」
「……何なんだ」
面倒げに優介が連休用のシフトから視線を上げるとリナはスポンジをギュッと握り締め
「リナにもいい加減他のお仕事させてよ!」
力いっぱい叫んだ。
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