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オモイデレシピ  作者: 澤中雅
レシピ2 ハジマリレシピ
42/365

フタリノハジマリ2/2

アクセスありがとうございます!



 四月二日。


 日々平穏が再開して一年。

 しかし優介の一存で特にイベントは開催せず、いつも通りの営業を――したのだが。


「師匠、愛ちゃん、恋ちゃん先輩、一周年おめでとうございます!」


 開店してすぐリナが顔を出しお祝いの言葉と共にぺこり。


 それを皮切りに――


「優介くん、恋さん、愛さん。今日で日々平穏再開一周年だって? おめでとう!」


「ゆーすけお兄ちゃん、恋お姉さん、愛お姉さん、おめでとうございます。レオもおめでとうって言ってます」

「わん!」


「先輩方、再開一周年おめでとうございます! それとお兄ちゃんがよろしくと言っていました。自分で言えばいいのに素直じゃないですね」


「恋ちゃん、鷲沢くん、上條さん、一周年おめでとう。学校に行きながらお仕事するのって大変だよね、海ちゃん」

「まあ……俺はまだ働きたいとおもわねぇし、やっぱ凄いよな。とにかくおめでと」


 楓子、千香子とレオ、椿、香織に海里と代わる代わるやってきては祝福の言葉と共に来店し食事を楽しんで。

 もちろん駒村親子を始めとした常連客、十郎太も同じように注文より先に祝福の言葉を送っては食事を楽しみ、中にはお祝いの花なども手にする者もいた。


 ちなみに孝太も来店したが――


「おっす。今日は――」

「白河ぼけっとするな手伝え使えねぇ!」

「遅刻しといてなにへらへらしてんのよ!」

「罰として減給を私は提案します!」


「理不尽!」


 予想外の来客数に開店間もなく店内は戦場となり、祝福の言葉を継げる暇なくバイトに入ていった。


「若者たち楽しく青春してるかね~……て、なんで孝太は泣きながら働いてんの?」


 なので取材旅行の合間に顔を出した好子に疑問を持たれていた。


「……理不尽だからですね、はい」

「良くわかんないけどまあ孝太だし。とにかく優介、恋愛コンビ、再開一周年おめでとさん」


「「恋愛コンビ言わないでください!」」


 しっかり日々平穏名物を引き出し、やはり食事を楽しみ再び仕事へ戻り。

 イベントをせずとも多くの来客と祝福の言葉をもらい、結果として怒濤の忙しさを繰り広げていた。


 そして午後七時半――


「ありがとうございましたー!」


 常連の団体客を最後まで元気よく見送った恋は店内に戻るなり大きく息を吐く。


「あ~……疲れた」


 そのまま近くの椅子に座り込むが問題ない。

 リナの来店から一度も途切れることのなかったお客も先ほどの団体客で最後、店内には昼休憩の一時間を除けば初めてお客の姿がない。

 結果としてこの一年で一日の集客数を大幅に更新、体力に自信のある恋でもかなり堪えた。愛も体調面を考慮して小まめに休憩を取ってはいるも疲労の色は濃い。


「なあ鷲沢……今日はもう店閉めてもいいんじゃね?」

「材料も心許ないか……仕方ねぇ」


 なので従来の三〇分も早いが孝太の提案に優介は了承を。

 ただ孝太は途中参加なのでそれほどでもないが、開店から今まで調理を続けていたにも関わらず優介はわりと元気で。


「さて、不本意ではあるがお前にもまかないを作ってやる。なにが食いたい」

「それは当然の権利だろ」


 洗い物を済ませて休む間もなくまかないを作る気満々。

 まあ店主兼料理人としては一年だが喜三郎の厳しい修行を二年以上続けている上に半年前の体調不良以降は身体作りにも励んでいる。

 なにより生粋の料理バカ、疲労以上に楽しいのだろうと孝太は弄りを苦笑で交わし。


「ただ今回はその権利使わせてもらうとして、少し付き合えよ」

「あん?」

「宮部、愛ちゃん。鷲沢少し借りるぞ」

「どこ行くのよ」

「ちょい外で駄弁るだけだって」

「優介さまもお疲れなのですから、少しだけですよ」

「つーわけで、まかない権利で付き合え」

「……面倒な」


 エプロンを外し帰宅準備を始める孝太に愚痴をこぼしながらも優介も外へ出るため上着を羽織る。

 恋と愛に片付けの指示を出し孝太と共に外へ。


「で、なに駄弁るんだ」

「付き合えとも言ったろ。ちょい歩こうぜ」

「……たく」


 面倒くさそうにため息を吐きつつも、素直に従うのは急なヘルプに対する感謝があるからか。

 そして駄弁ると言いながらも孝太は何も話そうとせず、優介も指摘しない。

 無言のまま歩くほど五分ほど、自販機の前で孝太が立ち止まり小銭を投入。


「宮部と愛ちゃんに、一周年おめでとさんとご褒美な。渡しといてくれ」


 購入したホットのミルクティーとレモンティーをそのまま優介に放って。


「まだまだ未熟な店主にはいらんだろ」


 挑発染みた笑顔と共に孝太だからこその発破をかけた。

 日々平穏を再開させて一年、節目の今日は訪れたお客はみな優介を立派な二代目と褒めていた。

 もちろん優介も祝福の言葉、認めてくれる気持ちには素直に感謝し、期待に応えていると誇らしく思っている。

 だがそれはそれとして自分に厳しく、目指すべき目標の偉大さを知るからこそ今の自分に納得していない。

 なら一人くらいはその心情を察して、節目だからこそ皮肉めいた言葉を贈るべきで。

 こんな祝福を口に出来るのは孝太くらいなもの。


「いらねぇよ。テメェからの褒美なんざ不気味しかねぇ」


 故に優介も素直に受け入れ、皮肉で返す。

 これは男女の違いというよりも優介の人生が大きく変わった瞬間に居たか、当時の優介を知るからこそ。

 優介も知られているからこそ二人は恋とは違う幼なじみであり親友という関係で。


「んじゃ、給料は明日にでも取りに行くわ。今日はごゆっくり~」

「言われるまでもねぇよ」


 わざわざこの拘りだけのために付き合わせても、付き合わされても、二人はあっさりとしたもので互いに背を向けた。


「……ま、俺が祝う必要もないしな」


 なにより一歩引いた立場で楽しむ親友よりも相応しい二人が居ると孝太は家路へと就いた。


 ◇


 孝太と別れた後、褒美を手に優介は来た道を戻り日々平穏に。

 既に暖簾は片付けられ、プレートも本日閉店になっているが関係なく店内へ。


「ユースケ、日々平穏再開一周年おめでとう!」

「優介さま、日々平穏再開一周年おめでとうございます!」


「………………は?」


 同時に二つ分のクラッカー音と恋、愛の祝福の言葉がお出迎え、これには優介も惚け顔になってしまう。

 そんな優介の下へ二人はゆっくりと歩み寄り。


「今日って日々平穏を再開してちょうど一年じゃない?」

「節目でもありますし、この一年働いた優介さまを労いたく、ささやかながらお祝いをしようと考えました」

「……お前たちも祝われる側だろ」


 何とか言葉を返す優介の言う通りここは彼、そして恋と愛の店でもある。

 なのに二人が祝う側に回っているのは不自然だ。


「そう言ってくれるのは嬉しいし、あたしもそう思ってる。だから今日はたくさんのお客さまがお祝いしてくれて本当に嬉しかった」


「私たちの日々平穏も愛してくださっていると、改めて実感した素敵な一周年でした」


「でもね、全ての始まりはユースケだから」


「お爺さまとお婆さまが亡くなり、一度消えてしまった厨房の火を……再び点す決意をしたのは優介さまです」


 しかし恋と愛は交互に思いを綴る。


「この一年、色々大変だったけどそれ以上に楽しかった」


「このお店にたくさんの笑顔を取り戻してくれました」


 再開して一年の思い出と、そしてこれから未来の思い出をとびっきりの笑顔と共に――


「ユースケ、おめでとう! これからも頑張ろうね!」

「優介さま、おめでとうございます。これからも頑張りましょう」


 この世で二人しか口に出来ない最高の言葉を優介へ贈った。

 これがお花見中に思いついた一周年記念に相応しい二人のイベント。

 店主の意向に背かず、記念日だからこそ最も感謝されるべき相手へのサプライズパーティー。

 島の住民も、観光で訪れるお客さまも。

 自分たちも含めて最高に楽しい時間を過ごせているのは鷲沢優介の決断が全ての始まり。

 なので閉店後にサプライズパーティーを開くために恋が買い出しをして、昨日の閉店後は優介が厨房で料理修行をしている間に愛が台所でこっそり下ごしらえを。

 そして今朝、開店準備まで優介が自室で過ごしている間に二人で簡単なオードブルとケーキを作成。

 更に孝太へ事前にお願いして閉店後少しだけ優介を連れ出して欲しいとお願いしていたりするのだが、予想外の忙しさに無理矢理手伝わせたのはご愛敬で。


 とにかく二人の祝福と、笑顔を贈られた優介と言えば。

 いつも通りの苦笑を。

 しかし今日一番の満ち足りた心で。


「……だな。これからも稼ぐか」


 二人の気持ちを受け取った。


「じゃあこれからも頑張ろうってことで、お祝いパーティーしようよ。ケーキもあるんだよ」

「ほとんど私が作りましたが。不器用きわまりない恋は足手まといで大変でした」

「代わりに買い出しや力作業受け持ったから良いでしょ!」

「それしか役に立ちませんからね」

「あんたねぇ……まあ良いわ。今日くらいは」

「ですね。今日くらいは」

「俺としては今後も大人しくしてくれるのは大歓迎だがな」


 日々平穏を再開して一年目の最後は。


「「「乾杯」」」


 三人のパーティーで締めくくられた。



フタリノハジマリ完結。

次回の更新でレシピ2も完結になります。

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また感想もぜひ!

読んでいただき、ありがとうございました!

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