プロローグ ヒトリノハジマリ
レシピ二の開始です! ……プロローグなので短いですが。
アクセスありがとうございます!
契約を結ぶなり今後のこと、遺言について話し合うと白河邸へ向かった好子を見送った優介は裏玄関から室内へ。
そのまま二階へ向かわず居間へ、更に店内に通じる襖に手をかける。
一度深呼吸をして気持ちを引き締め――
「…………」
襖を開ければ窓から差し込む月光により淡く照らされる店内。
上條喜三郎が亡くなり、上條イチ子が床に伏せて以降も敢えて休業扱いをしていた。
師より受け継いだ能力で知った心の大切さを学び、心を改めてこの一ヶ月必死に精進を続けていた。
イチ子が元気になれば、自分が再開させると心に秘めて。
しかしイチ子も亡くなり日々平穏の行く末は分からなくなっていた。
故に喜三郎の亡くなった後以上にこの光景が我慢できなくて。
いつも豪快に笑う喜三郎。
柔らかな笑みを絶やさないイチ子。
二人を中心に、賑やに食事を楽しむお客の姿。
笑いの絶えない温かな光景、優介にとって日々平穏はただの定食屋ではなく我が家だった。
そんな場所が見る影もなくなって。
寂しい光景に変わってしまったのが我慢できなかった。
だが――今は違う。
「たく……どこまでも情けねぇ」
自嘲し、店内の明かりを灯す。
もちろん月光で照らされていたよりも明るくなっても、寂しい光景は変わらない。
ここには自分一人しか居ない。
喜三郎も、イチ子も、お客も居ない。
自分の知る日々平穏とは思えない光景――しかし今は違うのだ。
「テメェがどうかなったわけじゃねぇんだ。なら、どうとでもなる」
好子のお陰で日々平穏の行く末は決まった。
失いたくなければ守ればいい。
終わったなら始めればいい。
「それだけのことだろ」
呟きながら優介は厨房に立ち、店内を見回す。
必ずこの光景を変えてみせる。
笑いの絶えない温かな光景に。
たとえ敬愛する二人が居なくとも。
たとえ望まれていなかったとしても。
たとえ無謀な挑戦でも。
「さて、始めるか」
始めなければなにも変わらないと。
優介はまず店内の清掃を始めた。
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