76-1話 幕間 名もなき盗賊
今日は、まあまあな収穫だったな。
馬車の周りに転がる死体を見て、思う。
2人の護衛を連れた行商人を襲い、仕事を終えたあとだった。
護衛の腕がよくて、こちらは9人やられちまったが、俺には関係ねぇ。
この辺り、特にここから北に行けば、戦争に溢れ故郷を失った難民が、畑の野菜のように取れやがる。
国を失った騎士も、盗賊に成り下がるんだから、笑えねぇ。
だが、そんなやつらが、明日からは俺達の仲間だ。
今日9人死のうが、また野菜のように増えやがる。
そんな事を考えて、荷物を漁ってたら、ガキが2人歩いてきた。
こんな街道を歩くガキなんて、難民だろうな。
黒いローブを被ったガキと、茶色のローブを深くかぶったガキだ。
茶色い方は、巨大なリュックを背負ってる。
黒いローブの方は、見た事ねぇくれぇ綺麗な顔をしてやがった。
茶色のローブの方は、顔がよく見えねぇ。
そんなガキが、自分は盗賊だと言いやがる。
俺にも、そんな時代があったなと懐かしくなるぜ。
行き場もねぇ、未来もねぇ、でも生き抜くしかねぇ、
そんな風に、さまよってた時代だ。
あと10年生きれたら、仲間にしてやるよと思ってたら、茶色のローブが決闘を申し込んできた。
俺はバカバカしくて、相手にしなかったね。
……
その時の俺を、褒めてやりてぇ…。
俺には、黒いローブが消えたようにしか見えなかった。
茶色のローブが言ったように、こいつはバケモノだ。
10年待つなんて言わねぇ、こいつらを今、仲間にしてぇ。




