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59話 砂の王 前編

血の雨と散乱する死体。


砂漠へと、投げ出された俺。

横には、同じように吹き飛ばされた女騎士。


遠くで、苦い顔をしながら、騎士達に撤退の指示をするマリオン。


そして、目の前には、今も暴れまわる巨大なミミズのようなバケモノ。


ここは地獄だった。


……

………


数刻前


目的地の要塞を見つけた傭兵団が、先陣を切る。

城壁に向けて、魔法を撃ち込む。

着弾を確認すると、城壁の前に陣形を組む敵部隊に向けて、斬り込む傭兵達。


マリオンは御者の席で、魔法を撃ちながら、戦場の中にいた。


傭兵達の隙間を抜けてくる敵兵は、マリオンの騎士達が処理をする。


報告よりも敵兵が少ないのか、要塞前は制圧寸前であった。


砂漠の砂が、血に染まる。

このままいけば、要塞の中に斬り込むのも時間の問題だろう。


誰もが、そう勝ちを確信していた時、それは地響きと共に起こった。


砂漠の地下から現れるナニカ。

巨大なナニカの動きで、吹き飛ぶ傭兵や敵兵士。


そして、私の乗る馬車も、地面の下から現れた巨大なナニカに吹き飛ばされ、馬車の残骸と共に私は空中へと投げ出された。


空中で姿勢を整え、地面に着地する。

女騎士も吹き飛ばされていた。


馬車の外にいたマリオンは、空中に投げ出されると魔法で軌道を変えたのか、第三騎士団の方、後方へと着地した。


「なにこのバケモノは!?」


マリオンの目に映ったのは、巨大なミミズのようなバケモノだ。

ミミズと違い、硬そうな鱗と、人を簡単に飲み込める牙の生えた大きな口。


そして、要塞より長い体躯で、蹂躙される戦場。


「マリオン様!」


騎士達が、マリオンの指示を仰ぐように集まる。


少し後方の、小さな砂丘に着地したマリオンは、戦場を見渡し、俺と目が合った。


俺とマリオンの間には、巨大なバケモノが体をうねらせ暴れまわっている。


地中から前衛の傭兵団と中衛の司令部に不意打ちを受けた混合軍は、後衛の騎士団と分断され、大混乱に陥っていた。


唇を噛み締め、泣きそうにも見える苦い顔をした彼女は、


「…撤退よ」


戦場だった場所に、撤退を指示するラッパの音が響き渡った。


……

………


「マリオン様は、ご無事のようだな」


ラッパの音と、後方に消えるマリオンを見ながら、女騎士は言った。


「そのようですね」


範囲外となったようで、俺の右手の紋様は赤く色が変わっている。


「逃げれると思うか?」


2階建の高さと要塞より長いバケモノの体は、想像以上に素早くうねり、逃げ遅れた傭兵を吹き飛ばし、押し潰し、死体を積み上げている。


そして、素早いのは頭部も同じようで、ご馳走を楽しむように人を飲み込んでいた。


凄惨な場面を見る度に、吐き気が収まっていくのを感じる。

これが、慣れるという事なのだろうか。


「なかなか、厳しいと思いますよ?」


傭兵も魔法を撃ち込み、剣で斬るがまったく傷ついた様子はない。

すぐに潰されるか、飲み込まれていた。


「おまえは気に入らない男だが、死ねばマリオン様が悲しむ。最善を尽くそう」


そう言って、女騎士は俺の前に立った。


次の食事を探すバケモノが、こちらへと顔を向けた。


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