57話 スカイブルーの少女
「お久しぶりですね。よくわかりましたね?」
「クロくん、身長は少し伸びたのかな?でも、顔は変わってないもん」
「身長は、だいぶ伸びたはずです」
俺より、少し背の高いスカイブルーの少女に言い返す。
昔は、同じくらいの背丈だっはずなのに…
別に彼女が、高身長というわけではない。
俺が、可愛らしい少女の背丈という現実があるだけだった。
「っていうか、何その口調と服装。女の子みたいで気持ち悪いよ」
「うるさいですね」
2年近くもアリスちゃんとして、過ごしたんだから、仕方ないだろう。
そんな俺達を少し離れた場所で、眺めているマリオン。
場所は、奴隷市場の中。
時は少し遡る。
…
……
………
「…クロくん?」
少し大人びたスカイブルーの彼女は、言った。
「あぁ」
懐かしい呼び名に、思わず反応する。
俺の反応に確信を得た彼女は、やっぱり!という顔で、こちらに駆け寄る。
「何かしら?」
そして、反応したのはマリオンもだった。
少し不機嫌そうな声色で、呟く。
こちらへ不用意に駆け寄る少女に対して、女騎士が主人の前に立つ。
不穏な空気が一瞬流れ、
「失礼」
青髪の少女の肩をつかんで、制止させたのは主人と思われる女傭兵であった。
縮地を使ったのかと思う程、一瞬で青髪の少女の後ろに立って右手をかけている。
青髪の少女は、急に制止され、うわっと声をあげた。
「ガレオン子爵と、お見受けいたします。うちの弟子が、失礼を致しました」
女傭兵はそう言うと、マリオンに向かって、頭を下げた。
マリオンは、女傭兵の顔に見覚えがあったようで、
「あら、紅蓮のフレイラでは?あなたが、ここにいるという事は…参戦、感謝致しますわ」
名の知れた傭兵のようで、護衛の騎士達はあれが紅蓮なのかと囁いている。
そして、不穏な空気が消えると、俺達が同じ奴隷商人の屋敷にいたという事がわかり、二人で昔話でもしてきていいわよと、マリオンの許可が降りたのだった。
…
……
………
「クロくんは、貴族様に仕えているんだね。その格好は、護衛の変装なのかな?」
私の口調と服装を、好意的に解釈したのか、勘違いしだす。
「でも、貴族様の護衛剣士か。さすが、ボクより強かっただけはあるよね」
「いや…」
「ボクも、お師匠様から、かなり凄いって言われてるんだよ?」
昔より言葉遣いが荒く、男っぽい口調になった彼女だが、人の話を聞かない癖は変わっていないようだった。
「護衛でもないし、剣士でもない」
「えぇー?」
信じられないという彼女の声が響いたところで、マリオンに手招きされた。
あちらはあちらで、女傭兵との談笑が終わったようだ。
「マリオン様から、呼ばれた」
戻らないと、と彼女に告げると、
「…クロくん、またボクの名前呼ばなかった」
スカイブルーの少女は、悲しげに呟く。
俺は彼女に手を振り、
「またな、アイリス」
スカイブルーの少女は、満面の笑みで手を振り返した。




