54話 快楽の宴 前編 R15
夕食が終わり、マリオンの部屋へと向かう。
メイド達はマリオンの趣味を知っているのか、好奇の目で私を見る。
狭い屋敷、どこから漏れたのか、私が男だという事を声を潜めて、伝えている者もいた。
温泉に入っている時に、視線を感じる事があったが、覗かれていたのだろうか。
マリオンの部屋に通じる廊下には、女騎士が直立不動で立っていた。
「男だったとはな。だが、マリオン様の望まぬ事をすれば、その首が飛ぶ事をよく覚えておけ」
若干の軽蔑が混じった視線が、痛い。
そんな社会的に死ぬような事できませんよと心の中で思い、部屋に入る。
部屋には、二人の女性がいた。
金髪のロングヘアーの少女マリオンと、その目前に裸でひざまづく褐色肌のメイド、リナだ。
扉を開けたまま、考える。
時間帯を間違えたのだろうか。
「閉めて入りなさい」
マリオンが、凄く楽しそうな声色で言った。
そして、こちらに来るように手招きをする。
静寂の中、心拍数が上がるのを感じる。
「私、交わってるところが見たいの。リナ、あなたの初めての相手よ」
リナが、こちらを見る。
彼女の瞳には、諦めの色が浮かんでいる。
「つまらない顔ね。処分するわよ?」
マリオンの言葉に、怯える褐色肌の少女。
「アリスちゃんも、もう少し楽しそうな顔をしなさい。好きにしていいのよ?」
私の後ろに回り、耳元で囁きながら、ゴシック調のメイド服を脱がし始める。
私はリナの目の前で、裸にされた。
後ろから抱きつく、マリオンの右手に遊ばれる。
快楽が、理性を押し流す。
リナの瞳が、恐怖に染められ、やがて諦めの色に塗りつぶされた。
…
……
………
「思ったより、つまらなかったわね」
何度かの交わりが終わり、マリオンは言った。
「リナ、あなたはもう部屋に戻っていいわよ。アリスちゃんは好きな時にこの子で、遊んでいいからね」
褐色肌のメイドは、心ここに在らずとばかりに、服は乱れ、破瓜の血を股から垂らしながら、部屋を出て行った。
快楽に溺れた俺は、自分への言い訳を探していた。
「あの子の反応はつまらなかったけど、アリスちゃんは獣みたいで、良かったわ」
悪魔が囁く。
「私がいない時も、あの子を好きに使っていいんだからね」
悪魔がまた囁いた。
…
……
………
部屋を出る。
女騎士が、相変わらず直立不動で立っていた。
女騎士の前を通ると、
「寝て、起きて、食べて、犯す。まるで獣だな」
彼女の方を見る、こちらには目を合わさない。
「私と剣を交えたあなたは、もっと誇り高い戦士だと思っていた」
こちらを見ず、ただ独り言のように呟く。
何を勝手に期待してたんだとは言い返さず、私は自分の部屋へ向かった。
満たされた生活のはずなのに、心が荒んでいくのを感じる。