41話 出会いと再会
王都アルマ
四重の城壁に囲まれた王都は、4つの区画に分かれている。
自給自足を担う外周部、国民が暮らす市街地、貴族が暮らす貴族街、そして王城と賢者の書が保管されている塔。
賢者の書に触れた私は、自分の可能性にワクワクしていたのだが、残念な事に屋敷に足止めをくらっていた。
「勇者が来るわ」
帰ってきたマリオンは言った。
賢者の書で騒ぎを起こし、勇者と呼ばれた男爵家の跡取はマリオンの実家、ノース侯爵領の小さな村を領地とする、男爵家の長男であった。
なぜ、勇者が来るのか、その理由を知る者は今、目の前にいる。
場所は、屋敷の食堂。
マリオンが中央に座り、なぜか私はその後ろに立たされ、勇者は向かいに座っている。
年齢は、成人したばかりで15歳らしい。
こちらでは珍しい、黒髪に黒目だ。
「この度はノース侯爵閣下から、多大なるご支援をいただきまして、ありがとうございます」
「ああ、お父様が、あなたの武者修業の支援を表明した件ね。ノース侯爵領として貴重な戦力ですから、当然の事ですわ」
「はい、おかげさまで、魔の森に不足なく挑めそうです」
「あの森へ行くのね…確かに、レベル40まで上げるなら最適だけど」
紅茶を一口飲み、マリオンは考える。
「もちろん、一人ではありません。護衛に騎士団と氷海の異名を持つ王宮魔導師まで、つけていただきました」
「エリー先生なら、魔の森でレベル35まで鍛錬したそうだから、安心ですわね」
完全に蚊帳の外の私は、二人の会話を観察する。
なぜ、私はここにいるのだろうか…
そして、その後もお嬢様口調のマリオンと、好青年な勇者の会話は続き、
「…暇つぶし…」
相変わらず気怠そうな、元ご主人様と再会するのであった。
「エリー様、こんなに早くまたお会いできるとは思いませんでした」
「…勇者を見に来た…」
そう言って、勇者の方を向くと、
「…ステータス…」
ステータスを見せてと言いたいのだろうが、相変わらず言葉が足りない。
勇者は勇者で、高名な魔導師様に師事いただけるとはと、畏まっている。
そんなまどろっこしいやり取りを何度か繰り返し、二人は魔の森へと向かう準備をすると言い、屋敷を出て行った。