39話 女騎士と奴隷 後編
マリオンがいない日 2日目
女騎士と、昨日より少し距離の縮まったおはようを交わし、朝食を終える。
壁には昨日と変わらぬ、直立不動の女騎士。
ただ、昨日話して彼女の扱い方が、わかった気がした。
だから、知力20の分析を信じて、
「私と、お話しに付き合ってもらえますか?」
「はい」
「騎士の方に、お世話していただくというのは、こういうものなのです?」
同意を得た事で、彼女の事をもう少し知ろうと思う。
「士官学校で、そのように教育されました」
「マリオン様にも、このようにお世話をするのです?」
「同性ですので、室内護衛をしやすいと、私が配属されています」
まるで、面接のような問答。
いや、これが任務中の彼女の姿勢なのだろう。
「騎士様という職業に興味がありまして、どういう経緯でなられたのか、お話しを聞きたいです」
昨日の帰り際のように、もう少しくだけた口調で、と付け加える。
それを聞き、女騎士は少し困った顔をして、
「そうだな…」
彼女は語り始める。
…私は、ノース侯爵領の小さな町の男爵家の三女に生まれた。
小さい男爵家ではあったが、代々ノース侯爵に仕えていてね。
そして、15歳の時、賢者の書で剣の才能を認められたのだ。
代々仕えた家系である事と、女である事からマリオン様の騎士として、抜擢された。
その後は3年間、騎士としての教育を受け、先日マリオン様の元に配属されたのだ。
作法の教育重視だったから、レベル上げはこれからだな。
女騎士の話に、相槌を打ちながら、騎士物語のようですねと感想を述べる。
「まずは、吟遊詩人に歌ってもらわないといけないな」
「吟遊詩人ですか?」
「そこにある光の勇者も、吟遊詩人の歌を元にしているそうだよ」
そう言って本棚を指した。
昨日はお昼寝と運動と、監視されているようなストレスで、ろくに見なかった本棚だ。
「銀貨3枚…」
思わず呟く。
「私は部屋の外にいよう。何かあれば、呼んでくれ」
私の本を読みたいオーラを、感じたらしい。
くだけた口調の方が好むと察した女騎士は、マニュアルから外れた言葉で、部屋を出て行った。