36話 いつか見た夢の間
巨大な青いクリスタルが、部屋の中央に浮かんでいる。
いつか見た夢の続きではない。
ここは、賢者の書が保管されている部屋。
マリオンに先導され、塔の管理者から案内された部屋だ。
賢者の書の部屋に入るのは、一人。
ただソレに触れるだけで良いと説明され、部屋に入った。
そして、浮かぶ青いクリスタル。
なんなんだ、これは一体?
ソレに触れてみる。
…アカシックレコードに接続します…
驚いて、周囲を見渡す。
…データリンク…
見渡すが、人の気配はない。
この機械音のような声は、頭に直接響いているようだ。
…ダウンロード完了…
この世界で、聞いた事のない単語。
だが、元の世界では聞き慣れた単語。
…リンク完了…
そして、俺は、
「ステータス オープン」
アリス Lv1
所有者 マリオン・フロレンス
攻撃 30-30
防御 20-20
知力 20-20
魔力 10-10
速さ 20-20
スキル
剣術Lv8 打撃耐性Lv8 身体強化Lv12
魔眼Lv4 魔力操作Lv10 創造魔法Lv20
予想通りのチートな才能値。
そして、自分で決めたわけではないアリスという名前。
所有者と合わせて、これは他者からの認識が、反映されるのだろうか?
創造魔法は、創造という部分が知力才能依存なのかLv20になっている。
それにしても、才能合計値が40で勇者なら、才能合計値が100の俺は…
…
……
………
部屋を出ると、マリオンが待っていた。
「問題なかった?」
「はい、不思議な感覚でした」
「そうね。頭の中に、意味不明な言葉が響くのよね」
意味不明か…
「あれは、どういう意味かわからないのです?」
「…うーん…魔術師なら、研究しているのかも?」
あまり興味はないと、彼女は付け足す。
「それより、少し用事が出来たから、しばらく帰らないわ」
「と言うと、私はどうすれば?」
帰らないという事は、屋敷でお留守番だろうか。
「あとで、奴隷紋の範囲を貴族街の中に変えておくわ」
身の回りの世話は、女騎士をつけるからと言うと、彼女は急ぐように外へと向かって、歩き始めた。
私を物として扱う騎士は苦手なんだよなと思いながら、彼女のあとを追いかける。