35話 100年に1人の逸材
王都アルマ
4つ目の城壁を抜けた先に、王城と塔がある。
賢者の書は、この塔に保管されていた。
そして、塔の中では、
「勇者だ!勇者が現れたぞ!」
「あれほどの才能合計値、100年に1人の逸材だ!」
貴族や魔術師が、一人の少年を囲い騒いでいた。
「どうしたのでしょうか?」
騒ぎの外で眺めている私は、騒ぎの中心から戻ってきたマリオンに聞く。
「才能合計値が、40の化け物が現れたそうよ…」
信じられないものを見た、という表情で彼女は答えた。
そして、イマイチピンときていない私に、
「才能は、攻撃、防御、知力、魔力、速さの5種類で表されるわ。前にも教えたけど、1か2なら平凡、3と4なら才能あり、5は一流の素質」
「そうですね」
そう考えると、凡人は合計5〜10、20〜30なら一流なのか。
合計22のマリオンが、自慢気にしていたのも納得がいく。
「あの騒ぎの彼は?」
「攻撃9 防御9 知力6 魔力7 速さ9らしいわ。男爵家の後継じゃなかったら、私の騎士に欲しかったのに」
マリオンから聞いて、確かに前衛職向きの才能値だなと思う。
そして、この才能値1の差はとても大きいのだ。
レベル上限が1違うから、ステータスは1レベル分違う。
スキルも剣術なら、攻撃8か9で剣術Lv8か9と上限が違う。
同時に、とても心配な事があった。
もし、私の推測どおりなら私の才能値は…
「才能値は、公表されるものなのでしょうか?」
だから、聞く。
「高い数値が出た貴族は、あのように公表して力を示す事もあるわ。騎士は、主人には報告する義務があるけど、それ以外は報告や公表する義務はないわね」
それを聞いて、私は安心する。
「大丈夫よ。アリスちゃんの可愛さに興味はあっても、才能値に興味はないから」
そこに期待はしてないから、見せなくていいと彼女は言った。
ただ、私の才能値はきっと…




