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121話 神々の境界線

神々の境界線


要塞都市の遥か東の先に広がる壁に見える何かだ。

長い戦争の果て、数十年前に友好を結んだ北の魔族達はそう呼んでいるらしい。


「近くで見た人はいないんです?」

「ああ、東には霧の森と樹海が広がってて進めねぇんだよ」


ギルドの扉を押し開けた私達は、昼間から酒盛りを始めていた。

カミラは着任手続きがあるからと、嫌そうに奥の部屋に消えていったのだ。


つまみの豆を食べながら話を続ける。


「来た道が西で山脈に塞がれてて、南に行けば海ですか」

「北は魔族の集落がいくつもあって、その先は竜種の縄張りらしいぜ」

「…竜種?…へぇ」


夢喰いの大穴での戦闘を思い出し、嫌な笑みが溢れる。


「…俺は行かねぇからな」


呆れたように呟くとジョッキを傾けた。

死にかけた彼女の姿が脳裏を過る。


「…そんな顔すんなよ」

「……」


言葉に詰まっていると、シャロンは空になったジョッキに視線を落とした。


「悪りぃな、俺の勘が次は死ぬって言ってんだ」

「…でしょうね」


その予感を否定する事ができない。


「足手まといになるのはごめんだ」

「…あの壁を見に行きたいんですよね」


私が小さく笑うと、シャロンも同じ様に笑う。


「…冒険者らしいぜ」

「シャロンは?」

「雑魚狩りでもして稼ぐさ」


新しいエールを注文しながら答えると、彼女は昔を思い出すように口を開いた。


「俺は東の最前線配置だったから、あそこの事はよく知ってるぜ」

「樹海と霧の森ですか?」


私も新しい葡萄酒を注文しながら問いかける。


「ああ、樹海は魔物の大群がやべえくらい湧いてきやがる」

「…霧の森とは?」

「樹海の南に広がってるんだがよ、厄介な霧で進めないのさ」


それは興味深い。

どちらのルートを通っても、あの壁に突き当たるのだろう。


そんな他愛のない会話を続けているとカミラが現れた。

そして、私達の姿を見るなり大きなため息を吐く。


「気楽なものよね」


その言葉に、シャロンは苦笑いを浮かべながら口を開いた。


「こいつがよ、北の竜種か東の境界線かなんて言ってるからよ」

「…貴方も行くの?」

「…さすがに行けねぇよ」


彼女は寂しそう呟いた。


「その方が助かるわ。回収できないからね」

「…おまえがついて来た理由はそういう事かよ」

「付けさせられたって言ってくれる?迷惑なの」


二人の会話を聞きながら葡萄酒を味わう。

どうやら私には理解できない話題らしい。

もう一杯頼んでから疑問を口にする。

 

「なんの話です?」

「…ああ」

「貴方、魔導錬成はまだよね?」


答えようとするシャロンを遮ると、カミラは確認するように問いかけた。


「その筒、貰えるんですか?」

「ええ、その説明と一緒の方が話が早いわ」


そして、期待を胸にギルドの奥の部屋へと連れられる事になったのだ。


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