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30話 いざ!王都へ 改稿

王都アルマ


それは、交易都市クーヨンの東に位置付く巨大都市だ。


この国は封建制度で成り立っているようで、重要な土地は王領として管理しつつ、各地方を侯爵以下の貴族に統治させているらしい。


つまり貴族は独立した一国の主人であり、単純な王家の配下でないという事だ。

もっとも南の穀倉地帯を公爵領としたり、その権力に揺らぎはないようであるが…。


交易都市クーヨンの東門を出た俺は、馬車に揺られながら、そんな事をマリオンから聞いていた。

目指す先は、その王都である。


「馬車で半日が、目的地ですか」

「…そうね」


新しいご主人様となったマリオンから、目指す王都が朝から昼すぎまで揺られて着く距離だと教えられる。


ちなみに大抵は、この距離を目安に大きな街があるそうだ。

行商人や貴族の旅に都合の良い場所が、発展しやすかったのだろう。


「アリスちゃん、旅は初めてよね?」

「…そうですね」


…この世界ではと、付け加える必要があるが。


「それにしても…」


俺は嬉しそうに腕に抱きついてくるマリオンを横目に、窓の外を見る。


「旅というのは物騒なのですか?騎士が隊列を組んで護衛していますが」


外を覗くと屈強な騎士が30名ほど、隊列を組み馬を駆っている姿が見える。


砂埃を上げて走る馬達は、力強く地を蹴り上げている。

馬上には、むさ苦しい男ばかりだ。


「…うん?」


そんな中、若い騎士の姿に目が止まる。

金色の髪に端正な顔立ちをしたその騎士は、凛とした眼差しで馬を駆っていた。


短く揃えられた髪に、美形と評判であろう女顔。

…というか女性だろう。

他の騎士達より明らかに軽装だ。


「私の騎士だから、ついてきているだけよ」

「…私の騎士?」


紅一点の女騎士から視線を外し、首を傾げる。

マリオンはノース侯爵家の御令嬢ではあるが、当主ではないのだ。


「アリスちゃんに次の質問。騎士とは?」


楽しそう笑っているマリオンの顔が、悪戯っ子の顔に見えるのは何故だろうか?

どうやら、俺の困った表情を見るのが、楽しいらしい。


「領主に仕えるものでしょうか?」

「…正解よ」


当たってしまったようで、彼女はつまらそうに答える。


「マリオン様はノース侯爵令嬢であって、領主ではないのでは?」


だから、私の騎士の意味がわからなかったのだ。


「お父様から、ノース侯爵領の城塞都市ガレオンを貰っているの。だから、私はノース侯爵家の長女と同時に、ガレオン子爵なのよ」

「…ああ、なるほど」


納得する気持ちと同時に、後出し情報はズルいんじゃないかと思う。

いや、彼女の性格的にワザと教えなかったのかもしれないが…。


俺の頬を指で突く彼女の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。


「それにしても、本当に何もない平野なんですね」


窓から見える景色を見ながら、俺は呟いた。


舗装された街道に、草木が生い茂る平野。

遠くには山と森が見える。


それが風に吹かれて波打っている様子は、実にのどかな光景だ。

俺の知っている世界なら、こんな景色でも家はあるのだ。

だが、この世界には人の気配がない。


「どういう意味かしら?」

「いえ、この平野を開拓できたら、食料が大量に手に入りますから、人口も増えるだろうなと」


この世界は、未開の土地が多いのだろう。


「面白い案だけど、城壁で囲わないといけないからね」

「なぜです?」


俺の素朴な疑問に、彼女は笑う。


「…討伐しているとはいえ、魔物がいるのよ?」

「…ああ、そうでしたね」


まだ見た事はないが、この世界には存在するのだ。

この穏やかな景色からは感じさせないが、夜の帷が下りれば城壁のない世界は、悲劇を生むのだろう。


「ただ、そうね。人口が増えれば、兵士も増える。城壁建築が改善されれば、面白い案だと思うわ」


よく出来ましたとばかりに、私の頭を撫でるのであった。


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