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110話 冒険者達

夢喰いの大穴 第三階層


女冒険者と別れた私達は、さらに下層を目指し進んでいた。


ただ先程のイレギュラーを除けば、まだ上層部。

冒険者の方が、魔物より圧倒的に多いのだ。


「やっぱスライムが、いやがったよなぁ」

 

先程の戦闘を思い出しているのか、シャロンは苦笑いを浮かべる。


「危険な魔物なんです?」

 

核さえ貫けば良いのなら、彼女のように魔法を使えば良いだろう。

私はそう考えて質問したのだが、シャロンは難しい顔をしていた。

 

「一匹なら初心者殺し程度のやつだよ。だけど、あれが複数集まるとな…」

 

昔を思い出しているのか、シャロンは頭を掻くとため息をつく。

 

「あっちで迷宮に潜らされた時は、気づいたら一面スライムだったんだぜ?」

「よく生きてましたね?」

「何人かは死んださ。下手に手を出すと、取り込まれるんだぜ?おまえは、なぜか斬れてたけどな」

 

どうやら、粘液性のある体液のようで、見た目通り打撃と斬撃耐性が高いらしい。


「それなら先に言って下さいよ」

「言ったって聞かねぇだろ」

「まあ、確かに」

 

そんな軽口を叩きながら、歩を進めて行く。

そして、しばらく進んだ時だった。

 

「よお」

 

少し広めの場所に出た私達に、先に陣取っていた冒険者の一人が声をかけてきた。

それも、どうやら私だけに向けて話しかけたようだ。

 

「うん?」

 

私は足を止めると、男の方に振り返る。


——度胸試しなら、やめときな


「…ああ」


——おまえら!新入りを歓迎してやろうぜ!


広場を見渡せば、あの時の酒場にいた冒険者達が座っている。


「狩場を探してるなら、こっちに入るか?」


男は顎で指し示すと、陣取っている広場を示した。

見てくれは強面の男達だが、腹に一物を抱える事もない気持ちの良い連中なのだ。


「いえ、中層に行こうと思ってるんですよ」

「おっと、そいつは邪魔したな」

 

私が答えると、彼は気を悪くするでもなく笑みを浮かべた。

 

「珍しいな、知り合いか?」

「飲み仲間ですよ」

「へえ」

 

興味なさげに相槌をうつシャロンだったが、彼らに視線を向けると、

 

「上の階でスライムが出たぜ…気をつけな」

 

忠告するように告げた。

それを聞いた彼らは、驚いたような表情を見せる。


「…ありがとよ」

 

背後で仲間がざわめく中、男はただ一言、礼を口にした。


「また飲もうぜ」

「ええ、また」

 

私は彼にそう答えた。

またという明日が来るかは、わからない。


——魔大陸で生き抜くコツを教えてやろうか?


——何ですか?


——明日なんて忘れちまえ


シャロンの言っていた意味が、今にして理解できてきた気がする。


私達は、冒険者なのだ。

私は踵を返すと、歩き出した。


「いい面構えになってきたじゃねぇか」


そんな私に、シャロンが楽しそうに声をかける。


私は彼女の言葉に答える事もなく、未知の下層部に向けて、冒険を始めた。

 



 

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