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27話 切り札 改稿

交易都市クーヨン 内周城壁外


——ドドオォンッ!


雲一つない晴天の下、空中に光の玉が出現して弾ける。

小さな爆発音と共に、白い煙が舞い上がった。


今日は訓練の最終日。

つまり店の修理が終わるのだ。


時刻は昼時、俺の横には退屈そうに空を眺める、ご主人様がいた。


「…つまらない遊び…」


まだ眠いのか、不機嫌な表情を浮かべて呟く。


「やっと、魔法を使えるようになったんですよぉ」


俺は頬を膨らまして、可愛らしく不満の意を示す。

つい先日まで、キッカケさえ掴めなかったのだ。

…少しは褒めて欲しい。


そんな俺を他所に、エリー様は興味無さげに視線を戻すと、口を開いた。


「そうね…空間の魔素干渉は私には難しい…」


そう言いながら、俺の頭に手を伸ばすと撫で始める。


「…よく見える目…そんな細かい事ができる…」


褒めているのだろうか?

表情の変化はないが、その手つきは優しかった。


「…高度な技術なのです?」

「…高度?」


彼女は少し首を傾げた後、口を開く。

 

「集中力が必要…視野も狭くなる…無駄…集団の大規模魔法にしか使わないわ」

「…なるほど」


つまりジッと見つめた視点の魔素を使うなら、自分の魔力を使う方が実用的という事なのだろう。

その点、俺は自分の魔力が少ない代わりに、魔素を通常視野で認識できる。


ただ、


「魔力量というのは、どうしたら増えるのでしょうか?」


小規模な現象なら、自分の魔力で発動できるようにはなった。

ただ、あの剣のような魔法になると、魔力が足りないのだ。


この世界に、哲学者はいないのだろうか。

魔力消費と発生現象の因果関係の研究論文が欲しい。


このままでは、魔素がない場所では、魔法を使えないに等しいのだ。


「そうね…」


そこで言葉が止まる。

珍しく思考を巡らせている様子だ。

やがて考えが纏まったのか、俺を見つめた。


「戦闘で使う魔法とは、どうあるべきと考えるかしら?」


だが、それは予想外の質問だった。

てっきり答えが貰えるものだと思っていたのだが…。


だが、そんなご主人様には慣れているのだ。

彼女の思考は時に飛躍するが、実に的確なのだ。


ならば…。


…ご主人様は、先程の空間爆発をつまらない遊びと言った。


「一撃必殺でしょうか。無駄な手数はいりません。出せば確実に殺す魔法であるべきです」

「…そうね」

 

楽しそうに微笑んだ。

そして、

 

「…あるのよね?さっきみたいなお遊びじゃない、切り札が」


暗に見せろと言ってくる。

 

…少し考える。

切り札は、無闇に見せるものではないからだ。

周知されれば対策され、切り札は切り札でなくなる。


だが、俺の立場は奴隷であった。

一週間も訓練の時間をくれるご主人様とは、友好的な関係でいたい。

そして、怠惰なご主人様が今、俺に凄く期待しているのだ。


俺は遠くに見える大木に、視線を向ける。

彼女は期待した眼差しで、俺の視線の先を捉えた。


…俺は右手に魔素を集中させると、


——空間を斬った


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