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25話 インビジブル 改稿

——魔素


大気中に漂う魔力の結晶だ。

その大きさは様々で、霧のように漂う時もあれば、球体のように浮かんでいる事もあるらしい。


…らしいと言うのは、この魔素というものは熟練の魔術師が集中しないと視認できない点が起因すると、エリー様は言っていた。


俺の瞳は、特殊なのだろう。

そして、魔素を利用する事で、俺は魔法を行使することが出来ていた。


その結果が目の前に、崩れ落ちた大木である。


「…成功してたんだ」


少女のような可愛らしい手を見ながら呟く。

そして、視線を空に向けると大きく息を吸い込んだ。


「成功したッ!」


思わず叫んだ声は、青空に吸い込まれるように消えていく。

そして喜びも束の間、現実を思い出して頭を抱えた。


耕作地から離れているとはいえ、こんな大きな音を立てれば誰か気づくかもしれないからだ。


遠くに見える畑に人影はない。

だから安心していいのかは不明だが、ひとまず胸をなで下ろすと再び歩きだす。


「…少し場所を変えよう」


自分に言い聞かすように呟く。


あの魔法は、まだ完成ではないのだ。

斬れ味も…確認が足りない。


少し離れた場所で立ち止まると、再び右手に魔素を集める。

先程よりも早く、剥き身の刀身が形成されていく。


「…見えるってだけで、弱点なんだよな」


魔法とは派手に撃ち合うものか?

…否。


魔法とは避けて下さいと言わんばかりに、見せるものか?

…否。


放てば、確実に当てるべきなのだ。

そして、一撃で仕留めるべきなのだ。


俺は、更に魔素を込めた。

青白く光る刃から、色が抜け落ちる。


——成功だ


重みを感じる右手には、何も存在していないのだ。

それは実体を持たない刃だった。

…自然と口元が緩む。


両目に魔力を込めて、右手を確認する。

そこには確かに魔力の塊が存在していた。


「さて…」


俺は少し先に見える木々に狙いを定める。

背後には、城壁がそびえ立っていた。


ゆっくりと深呼吸すると、抜刀術の構えを取る。

刹那、右足を軸に左足を踏み込むと、大地を踏み砕くように、身体を回転させた。

右手を水平に薙ぎ払う。


刀では届く事のない距離だ。

だか次の瞬間、木々が大きく揺れ動いた。


——ガサガサァ…ズウゥン!!


音を立てて倒れこむ木々を、視界に収める。


「…出来た」


魔法はイメージ通りに発動していた。

斬れ味も問題ないようだ。


「さて、気づかれる前に…」


——ドゴォォォンッ!!


そんな考えを遮るような轟音が響いた。

同時に地震が起きたかのように足元の地面が揺れる。

砂埃が舞い上がる。


「なんだッ!?」


慌てて音がした方向に視線を走らせると、木々の後ろにそびえ立っていた巨大な城壁が一部崩れ落ちているのだ。


「…おいおい」


これはヤバい…。


俺は一目散に逃げ出したのだった。


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