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4-1話 幕間 とある店主

「いらっしゃい」


俺は、今日も愛想良く客を迎え入れる。

今来たのは、土木関係の親方だ。


昼間の疲れを癒すように豪快に飲む上客さ。

飲むって何を?

見てわかんねーのか、酒だよ、酒。


ここは酒場だからな。

先代の店主から引き継いだ、俺の城さ。


そうそう上客の話だったが、親方は仕事もくれるのさ。

あん?俺が昼間働くわけねーだろ?


外の看板見てみろよ。

でっかく冒険者ギルドって書いてあるだろ。


まあ、おまえにはわからねーよな。


今もあそこで壁の張り紙を眺めてるやつに、仕事を斡旋してやるのさ。


少し前は馬鹿馬鹿しい、ここは酒場だぞってやめたんだが、やめて気付く事もあるよな。


あれがあるから、ここには客が集まるのさ。

汚れた垢みたいな連中だが、磨いて綺麗になるやつもいる。


…ああ、磨いても綺麗にならないやつもな。

自警団だったか?

ありゃ、ゴミだ。

そのうち王宮に、やつらの拠点を報告しようと思ってる。


なんで、そんな事知ってるかって?

ここは汚れた垢が集まる場所だからさ。

酒場ってのはな、庶民の社交場よ。

自然と店主は情報通になるさ。


まあ、客にはそんな顔見せないけどな。

一流の店主ってのは、客の前では空気になるもんさ。


こいつは先代からの受け売りだけどな。


そうそう王宮と言えばって…

おいおい、特大の垢が来ちまった。


こいつはいつも唐突に、それも他の客がいない気配を知ってるかのタイミングで来やがる。


こいつはダメだ。

他の客がいないタイミングで、内緒のお願いをするつもりだ。


追い払おうと思ったんだか、長年の垢をほぼ綺麗に流してきやがった。


ゴミだと思ったんだが、磨けば綺麗になるのか?


ああ、そうそう王宮の話だったな。


ある日来たのよ。

特大の上客がよ。

上客なんて言ったら、首が飛びそうだが、王妃様だよ。


依頼書を貼りたいなんて言われたから、驚いたさ。

合格の条件も変わってたが、報酬も変わってたな。


人族の黒髪美少女 金貨3枚

人族の美少女か美女 金貨1枚

種族問わず本物だと断言した者 銀貨10枚


なんの事かさっぱりわからねーが、俺は仲介人さ。


もっとも最初に合格したやつが言いふらしたせいで、随分迷惑したがな。


まあ、合格者はそれぞれ最初の一人だけって話だ。


噂も冷めた頃、金貨3枚のやつなんて来るわけねーと思ってたんだがな。


不正に合格者を出そう?

馬鹿言うなよ、そんな事がバレたら首が飛ぶ。

俺はゴミとは違うんだよ。


なにせ、あの王妃様から、こんな移民街じゃお目に掛かることもない王妃様から、手を握られて言われたんだぜ?


「あなたの本物を見抜く目を信じてます」


ってな。


付き添いの騎士達の気持ちがわかった気がしたよ。

あれは別格だ。


まあ、猫のおまえに言ってもわからねーよな。


ほら、今日の仕事料だ。

食べてけよ。


いつも俺の独り言に付き合わせて、悪いな。


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