表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/402

199話 Guardian Knight Story

——クリスティーナ女王の冒険——


お忍びで、城下町に出かける事の多い女王だったようで、数々の逸話を残している。

それをまとめて、脚色した本が最近、発売されたのだ。


その中の登場人物、宮廷道化師に私の目は止まる。

保管庫の資料には、この少女が実在した人物である証拠が残っていた。


しかも、どうやら、当時では珍しい人族であったらしい。


機密文書から、1枚の紙を取り出す。

傭兵の街で雇った人物の中に、奴隷紋が刻まれた少女という表記がある。


この奴隷紋が、守護騎士と一致するような気がするのだ。

守護騎士物語では、我が力を封じし呪印とカッコよく描かれていた。


そして、呪印を解放した時、真の力を…

私は物語を思い出しながら、恍惚の表情を浮かべる。


「…あら、推察が脱線してしまいましたわね」


最近、出版された本を手に取る。


女王に振り回される黒髪の少女。

奴隷紋のような記述はない。


「……」


重なるようで、重ならない姿が、私の頭を悩ませる。


少女が、騎士?

少女が、ノース侯爵軍を撃破?


そんな風に頭を抱えていた私の耳に、石畳が警告音を知らせた。

私は慌てて、机の上を整える。


ガチャ


保管庫の扉が開かれる音が、私の耳へと届く。

コツコツという足音と共に現れた侍従長は、緑茶の注がれたティーカップを置いた。


「殿下、勉強の捗りはいかがですか?」

「さすが保管庫ですわ。歴史の勉強には最適ですの」


私の言葉に侍従長は、


「殿下の歴史書は、随分偏りがあるようですね」


見透かしたかのように、積み上げた機密文書を見つめる侍従長。

私は、苦笑いで返すしかなかった。


「ところで殿下、明日は殿下が好きな書物の発売日ではありませんか?早く寝た方が、宜しいのでは?」


侍従長は全てお見通しのようだった。


……

………


翌日


2つの鐘を合図に、私は衛兵を連れ、国民街へと駆け出した。


本は、自分で買いに出るから楽しいのだ。


予約してあった書店の扉を開ける。

中には、先客が1名。


黒髪の少女だ。

私は、先客の後ろを、通り抜けようとしたのだが、


「銀貨5枚か…高いな」


不意な呟きに、少女の方を見た。

少女はこちらを見る事なく、飾られた売り物を眺めて、何やら呟いている。


——クリスティーナ女王の冒険——


少女の視線の先が、私の目に止まった。

そして、黒髪の少女の横顔が目に映る。


エルフと見間違うような美少女であった。

耳は、人族である事を示している。


…人族にも、こんな綺麗な顔立ちの人がいるのですね。


そんな事を思いながら、予約した本を店主から受け取る。

早く読みたい衝動に駆られ、店の出口へと駆け出した私は、もう一度、少女の方へと振り返る。


…クリスティーナ女王の冒険に、頭を抱えてついて行くのは、こんな美少女だったのかもしれませんわね。


私は、店を後にした。

外で待機していた衛兵を連れて、王宮への道を早足で歩く。


道の脇では、吟遊詩人が詩を歌っている。


都市の妖精さんの歌だ。

街の酒場や飲食店で、語り継がれていたらしい。


——その幼い妖精さんが人族の耳でも、追い出してはいけない——


…今は、人族も溢れていますから、随分古い時代の詩ですわね。


——その妖精さんが、いつまでも外見の変わらない美少女でも、聞いてはいけません——


その詩は、まるで自分が姿を重ねては消える、あの…


私は思わず、


「まるで、守護騎士様のようですね」


と言い、銀貨を1枚、吟遊詩人へと渡した。


吟遊詩人は、銀貨に驚きながらも、


「守護騎士物語の主人公は、黒い甲冑に身を包んだ大柄の騎士ですよ」

「ええ、そうですわね」


私の言葉に、何か考えた吟遊詩人は、


「では、お嬢様の為に、守護騎士物語を一曲奏でましょう」


吟遊詩人の透き通るような声は、リュートの音色と共に詩を運ぶ。


最初は、誰も知らなかった物語。

一人の吟遊詩人が、広めた物語。


その物語は、行き交う人々の足を止める。


吟遊詩人の前に置かれた帽子へ、銅貨を投げ入れる人々。

期待に応えて奏でる、吟遊詩人。


その詩は、今も続いている。


——奴隷転生 〜異世界に転生♂したら、美少女♀と間違えられ男の娘として生きています〜——


——FIN


最終話から繋がる あとがき はカクヨムへ_φ(・_・


※カクヨム様でも連載中 改稿あり

(先行配信、第二部開始しました)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917336750


お楽しみいただけたら、

ページ下部の【★★★★★】をタップして

評価やブクマ、感想などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃくちゃ面白かったです! 最後少し壊れたアリスが怖かった
2021/07/24 15:29 退会済み
管理
[一言] 面白かったです! これで完結ですか?とりあえずカクヨムにいってみます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ