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178話 お兄様と妹

中心区3階 会議室前


国王の騎士団を見送った後、私達は会議室の前へと来ていた。


「お兄ちゃん、お仕事頑張ってね」


専属メイドのフィーナに、見送りの言葉をかけられる。

なぜか、今日も私は場違いな所へ、付き添わなければいけないようだった。


私がついて来る事が当たり前のように、クリスは扉に手をかけた。


円卓の間には、昨日と違い2人の人影しかいない。


一人は、高位の貴族と一目でわかる服に身を包んだ筆頭宮中伯。

もう一人は、エメラルドグリーンの髪の青年だ。


クリスの後ろに付き従い席へと向かう私は、その青年に目を奪われる。


…エルフ?

いや、耳の長さが違いますね。


ただその青年は本物を見慣れていないと、判別しにくい程、エルフの特色を色濃く受け継いでいた。


クリスが、青年の横へと座る。

私は、今日もカカシの仕事だ。


「お兄様、来てくれたのだな」


クリスが、普段見せないような穏やかな笑顔で青年へと話しかけた。


「さすがに僕も、この状況だとね」


お兄様と呼ばれた青年…第二王子は困ったような顔をした。

ただ、その表情は、どこか芝居がかっている。


「では、会議を始めますぞ」


二人の対面に座る筆頭宮中伯は、口を開いた。

その言葉に、私は疑問を頭に浮かべる。


それに気づいたのか、筆頭宮中伯は私とクリスの方に目を走らせた。

クリスも、私と同じ顔をしていたのだろうか?


「現在、王都エルムの指揮権は、お二人にございます。事前会議は宮中伯と、こちらで済ませております故…」

「ああ、わかってるさ」

「…うむ」


第二王子は、当たり前のように反応した。

反応が遅れたクリスは、わかっていなかったのだろう。


「では、緊急事態宣言中の治安維持と、前線への補給路及び各種装備の生産調整でございますが…」


筆頭宮中伯が、政治の話を続ける中、私はカカシの仕事をしていた。

なぜ、この場に私はいるのだろうと思い、心を無にするのだ。


今日の夕飯は何にしようかと、戦時中の国民街に想いを馳せる。

慣れ親しんだ飲食店が、臨時休業だったら、ルルにたかるか…。


「…聞いておりますか?」


そんな事を考えていた時、筆頭宮中伯の一言が私を現実に戻した。


「ああ、聞こえておるぞ」


もっとも、その言葉は私ではなく、王女殿下に向けられたものだった。


「では…」

「お兄様に任せる」

「クリスティーナは、こういうの向いてないからね」


筆頭宮中伯の言葉を、王女殿下は遮り、第二王子がそれをフォローする。


「僕の方でやっておくから、クリスティーナは王都の兵士達の陣中見舞いを頼むよ」

「継承権から言えば、それはお兄様の仕事であろう」


穏やかな口調の第二王子の提案を、クリスはいつもの調子で断った。

その反応を予想していたのか、第二王子は優しい笑みを浮かべる。


「人には向き不向きがあるのさ、頼むよ」

「…わかった」


その一言で、会議は幕を閉じた。


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