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169話 王女と恋物語

王女殿下の一室


気を失ったアイリスが、私の愛用のソファーで寝ている。

王女殿下が、呼びつけた女騎士に運ばせたのだ。


そして、机に座るクリスと、その前に立つ居場所を奪われた私。


「全部、知っていたのですか?」

「そなたが、星落としを使うのを見てな。フレイラの探し人ではないのかと、思ったのだ」

「星落とし?」


聞き慣れない言葉に、私は疑問を浮かべる。


「あぁ、そなたは気を失っていたか」


クリスの説明によると、あの気持ち悪い景色の中で、私が放った魔法…メテオの事らしい。


「…全部、知っていたのですか?」


最初の質問を、疑いの目と共に投げかける。


「そのような目で見るでない。私はそなたの過去を知らぬし…フレイラが間違いないと言うから…機会を与えただけだぞ…」


いつもなら、確信を持って断言するクリスの瞳が揺らいでいるのを、私は見逃さなかった。


「…ほぅ。それで、殿下の本音は?」

「そ、その…恋物語のようで、面白そうだなと」


親に叱られる子供のような姿。

初めて見るその姿を、私は可愛いと思ってしまった。


そんな私の沈黙を勘違いしたのか、


「それと最近は政治の世界から、外されてな…暇であったのだ」

「それが、本音ですね」


おおかた、暇になったから、フレイラの事を思い出したのだろう。


そして、恋物語のような展開を期待して、あのような方法を取ったと。

なにせ、私とフレイラに、言葉で確認すれば済む事なのだ。


「…怒っているわけでは、なかろうな?」


頬を膨らませながら、貴重な上目遣いで、問いかける殿下。

うん、可愛い。


そんな貴重な姿に、私は演技がかった溜息をついて、


「私は殿下の道化ですよ?退屈を埋めれたようで、光栄でございます」


そう告げ、深々と礼をした。


「そなたは意地が悪いな。私が悪かった」


クリスも溜息をつき、もう二度としないと誓った。


「意趣返しに、殿下で遊ぶのも、ここまでにしますかね」

「…本当に、そなたは意地が悪い」


クリスの溜息に、呆れが混じる。


「ところで、クリスが政治から外されるとは、何かあったのです?」


王女が、どの程度政治に関わるかは知らないが、外されるという表現は、異常なのだろう。


そんな私の疑問にクリスは、


「…戦争が、近いのであろうな」


窓の外に顔を向けると、物憂げな表情で意味深な言葉を呟いた。


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