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165話 逃避と庭園

王宮の中心区と、北側の宮殿の間にある庭園。

その一角に、青で彩られた世界がある。


あれから、たまに訪れるクリスの妹から逃げる為、私はここで過ごす頻度が増えていた。


もっとも、今日は王女殿下が政治の世界に旅立ったからであり、そういう日は、ある人物に出会う事が多い。


「また会ったな」


身分を明かさないハーフエルフの男は、当たり前のように長椅子…私の横へと座る。


「ここは、なぜか落ち着くのですよ」


視覚効果だったかなと、遠い昔の知識を思い出す。


「そうであるな」


……


いつものように、お互い無言で幻想的な景色を見つめる。


「王女に哲学書を、分類化するよう助言したそうだな」


そして、いつものように始まる他愛のない話。


「この景色のように青は青で統一した方が、素晴らしいと思いませんか?」

「ははは、担当者は悲鳴を上げているそうだがな」

「素晴らしい庭園を作る為には、枯れている花を棄てる事も必要ですので」


支離滅裂な哲学書も、珍しくないのだ。

誰も、科学的な検証をしなかった結果なのだろう。


「そなたの考える庭園が出来上がったら、どうするのだ?」

「素晴らしい庭園にも、それを育てる庭師が必要です。書物も、それを先に進める哲学者が必要でしょう」


私の言葉に、男は考えるように沈黙を返してきた。


「見えている世界が違う…か」

「…はい?」

「王女が、そなたを評した言葉だ」


首を傾げる私に、男は珍しく嬉しそうな笑顔を見せた。


「反応に困る評価ですね」

「王女付きとは言わず、宮廷の道化師になるか?」


重い意味の言葉を、なんの事はないように語る男。


「王女殿下から、お聞きでしょう?馬鹿な道化は夢を見るのです。王女殿下の夢を」

「それは残念でもあり、嬉しくもあるな」


男がそう答えた後、私達はまた青で彩られた世界で沈黙に包まれた。


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