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164話 王女と妹

王女殿下の部屋


「お姉様、会いたかったですわぁぁ!」


いつもの日常の中に、いつもと違う少女の声が響き渡る。


クリスと同じ髪色を、ツインテールに結んだ少女。

私と背丈の変わらぬ少女は、いつもの日常に突然現れ、クリスに抱きついた。


ソファーで寝そべる私は、珍しく困惑するクリスを眺めている。


「…ソフィア、そなたは、寮住まないではなかったか?」

「お姉様が帰ってきていると聞いて、抜け出してきましたわ!」


誰が漏らしたのだと、舌打ちするクリス。

私達が王都エルムに着いてから、随分と日数が経っているのだ。


クリスの困惑した表情から、なぜかこの少女には意図的に隠していた事が伺えた。


「クリス、この子は?」


お姉様と呼ぶからには、妹なのだろうかと考えつつも、姉妹とは思えない熱烈なスキンシップに私は問いかけた。


「…私の妹だ」


クリスは困惑した表情で、頭が痛いように額を抑える。


「お姉様、この子はなんです?」

「王女付き宮廷道化師のアリスです」


私は、ソファーから起き上がると、姿勢を正し、深々と礼をする。


「拾ってきた猫ですか」


下げた頭の上から、冷めた声色の暴言が飛んできた気がした。

頭を上げた私は、平静な表情を返す。


「…だから、知らせたくなかったのだ」


クリスが呟く。


「…お姉様?」


クリスの呟きに、ソフィアと呼ばれた少女は泣きそうな程、表情を崩した。


「いや、そなたは学生であろう?学業の邪魔をしたくなかったのだ」

「はい!首席で卒業して、お姉様のお役に立ってみせますわ!」


そして、次の瞬間には、コロっと笑顔に変わる。

私の勘が、関わってはいけないと囁いた。


「王女殿下、姉妹の久々の再開に、水を差すのは無粋です。私は席を外させて頂きます」


何かを訴えるような目のクリスに、道化師らしからぬ物言いで、深々と頭を下げた私は、部屋から逃げ出したのだった。



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